TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

2017年からの違和感。フリーランス協会の成り立ちについて調べてみた

関係性明示:私は2023/12/14現在、フリーランス協会の一般会員(有料会員)です。→退会申請中です。→2023年12月に退会しました。

フリーランス協会って怪しい?2017年からの違和感

私は2017年から、日経新聞のこちらの記事に違和感を抱いていました。

www.nikkei.com

しかし、2021年に思うところがあり、弁護士費用保険に入ってみようかなと思い、フリーランス協会に入りました。

しかしながら、入会後、いろいろと問題が多いことがわかったので、来月中に退会する予定です。フリーランス協会に関する問題まとめや、実際に入ってみての感想と類似サービス比較は、下記記事にあります。

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com

日経への質問

退会前に、謎を解いておきたいと思い、日経新聞に、下記のように質問を送りました。

■私からの質問■
こちらの記事について質問です。

www.nikkei.com

"政府は特定企業に属さずに働くフリーランスを支援するため、失業や出産の際に所得補償を受け取れる団体保険の創設を提言する。損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売してもらう。"

"そこで政府はフリーで働く人への支援を手厚くする。柱の一つが所得補償保険の創設。損保大手と専用の商品を開発し、契約がなくなった場合にも所得を得られるようにする。今年発足した業界団体「フリーランス協会」に加入すれば、保険料が最大5割軽減される団体割引の仕組みとする。"

とありますが、この記事を読む限りでは、

・政府主体でフリーランス専用の所得補償保険(団体保険)を設計
注*記者は誤解しているようだが「所得補償保険=失業保険」ではない。

・政府が開発した保険は、フリーランス協会を専売保険代理店として販売する

というように読めますが、この理解で正しいでしょうか?

また、「損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売してもらう。」から「今年発足した業界団体『フリーランス協会』に加入すれば、保険料が最大5割軽減される団体割引の仕組みとする。」

という点からは、「政府がフリーランス向け保険を開発して、それを販売する代理店としてフリーランス協会を発足させた」と読めなくもないのですが、こういった事実はないのでしょうか。

なぜ政府が開発した保険商品を、単なる一個人が立ち上げた一般社団法人が専属代理店として販売しているのか、疑問に感じました。
教えていただけますでしょうか。

日経新聞に確認したところ、下記のような回答でした。

■日経からの回答■
ご愛読ありがとうございます。
申し訳ありませんが、記事以上の情報を個別に解説・説明することは読者公平性の観点から差し控えております。
約6年前の記事であり、担当者への確認も困難です。
ご理解のほどよろしくお願いします。

損保ジャパンへの質問

日経新聞から回答が得られなかったため、フリーランス協会の保険の問い合わせ先である、損保ジャパンに10/3に日経宛と同じ質問を送りました。
しかし、回答がなかったため、2023/10/5にフリーランス協会に問い合わせましたが、やはり回答がありませんでした。そこで再度、10/13に損保ジャパンに問い合わせた上、損保ジャパン本社に電話をかけたところ、ようやく反応がありました(回答はその後にありました。)損保ジャパン本社に電話しなければ、おそらく、無視されていたのではないかと思います。
返信にはかなりの時間がかかり、しかも極めてわかりにくい回答でしたので、情報確認に時間がかかりました。
そのため、複数回のやり取りを、読みやすくなるよう編集しております。

■私からの質問■

⼀般社団法⼈プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の賠償責任保険に加入している者です。

2017年4月26日
【国内初】フリーランス向け福利厚生制度 『ベネフィットプラン』の提供開始

https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2017/20170426_1.pdf
私が加入している保険は、こちらの『ベネフィットプラン』に含まれるものと思われます。
それを踏まえまして、下記の記事について質問です。
フリーランスに失業保険政府・損保が創設:日本経済新聞

www.nikkei.comこちらの記事には、『政府は特定企業に属さずに働くフリーランスを支援するため、失業や出産の際に所得補償を受け取れる団体保険の創設を提言する。損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売してもらう。』
『そこで政府はフリーで働く人への支援を手厚くする。柱の一つが所得補償保険の創設。損保大手と専用の商品を開発し、契約がなくなった場合にも所得を得られるようにする。今年発足した業界団体「フリーランス協会」に加入すれば、保険料が最大5割軽減される団体割引の仕組みとする。』とあります。
この記事を読む限りでは、
・政府主体でフリーランス専用の所得補償保険(団体保険)を設計
 注*記者は誤解しているようだが「所得補償保険=失業保険」ではない。
・政府が開発した保険は、フリーランス協会を専売保険代理店として販売する
 →「フリーランス向け福利厚生制度『ベネフィットプラン』」は、政府主体で開発した商品である。
というように読めますが、この理解で正しいでしょうか?

■損保ジャパンからの回答■

政府からの提言を受け、弊社が商品開発した保険をフリーランス協会の会員向けに提供しております。

■私からの質問■
また、「損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売してもらう。」
から「今年発足した業界団体『フリーランス協会』に加入すれば、
保険料が最大5割軽減される団体割引の仕組みとする。」という点からは、
「政府がフリーランス向け保険を開発して、それを販売する代理店として
フリーランス協会を発足させた」と読めなくもないのですが、こういった事実はないのでしょうか。

■損保ジャパンからの回答■ そのような事実はありません。

■私からの質問■なぜ政府が開発した保険商品を、単なる一個人が立ち上げた一般社団法人が専属代理店として販売しているのか、一加入者として、疑問に感じました。教えていただけますでしょうか。

■損保ジャパンからの回答■(極めてわかりにくく、不明瞭な内容であったため、追加で質問し、下記の回答を得た。)

■私からの質問■
> 政府からの提言を受け、弊社が商品開発した
ここまでは理解ができるのですが、このリリースが出た、2017年4月26日時点で、
フリーランス協会は、2017年1月26日に設立(同年4月20日に一般社団法人化)されたばかりです。
なぜ、設立されたばかりの、何の実績もない団体と、大企業である御社が「連携」することになったのでしょうか?
フリーランスの職業団体や業界団体は、他にもたくさんありますし、実績も歴史もある団体が、他にもたくさんあるはずです。
その中でなぜ御社は、「設立されたばかり」のフリーランス協会と「連携」し、「政府からの提言を受け、御社が商品開発した保険」を「フリーランス協会の一般会員向けに提供」することになったのでしょうか。
一加入者として、素朴に疑問に感じました。
この点について、詳しくご説明いただけないでしょうか。

■損保ジャパンからの回答■
当社が協会と取引を始めた経緯は、以下の通りです。
・2017年2月に、企画開が経産省・産業人材政策局と「働き方改革」の観点で意見交換をする中で、当該協会を紹介される。
・その際に、個人会員の年会費は1万円を予定しており、その会費の一部から保険料を捻出の上、会員への補償・サービスに充てたい意向で、大手4社に対して提案を求めているという情報提供あり。
・2017年2月13日に初訪し、4社BIDへ。総合提案が評価され、2017年4月に当社幹事の受注が決定。(2017/4/26にニュースリリース
・本協会が、2017年7月1日より正会員の募集を開始し、それにあわせて2017年8月15日始期で「ベネフィットプラン」の提供を開始。

注:「企画開」=損保ジャパンの部署名。
「BID」=損保業界用語で、いわゆる「入札」のようなもの。(BIDの意味は、そんぽADRセンターに確認)

■私からの質問■
> ⇒当社が協会と取引を始めた経緯は、以下の通りです。
> ・  2017年2月に、企画開が経産省・産業人材政策局と「働き方改革」の観点で意見交換をする中で、当該協会を紹介される。
→【質問1】*「企画開」とは?という質問のため、略

→【質問2】

「意見交換をする中で、当該協会を紹介される。」とありますが、この「紹介」というのは、この意見交換の場にフリーランス協会のメンバーが出席していて、

 経産省・産業人材政策局から、御社に対し直接フリーランス協会のメンバーの紹介があった
 ということでしょうか?

> ・  その際に、個人会員の年会費は1万円を予定しており、その会費の一部から保険料を捻出の上、
>    会員への補償・サービスに充てたい意向で、大手4社に対して提案を求めているという情報提供あり。
→【質問3】こちらは、フリーランス協会から御社に対して情報提供があった ということでしょうか?

→【質問4】この「大手4社」というのは、具体的にどの社を指しますか?

> ・  2017年2月13日に初訪し、4社BIDへ。総合提案が評価され、2017年4月に当社幹事の受注が決定。(2017/4/26にニュースリリース
→【質問5】BIDというのは「入札」のことだと推測しますが、
こちらの「初訪」「BID」は、誰がどこに「初訪」し、提案したのでしょうか?

【質問6】
> 2017年2月に、企画開が経産省・産業人材政策局と「働き方改革」の観点で意見交換
ということと、

> 政府からの提言を受け、弊社が商品開発した
というコメントから、おそらくその「政府からの提言」というのは、
「雇用関係によらない働き方」に関する研究会

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#employment

「雇⽤関係によらない働き⽅」に関する研究会報告書(概要)のP6、

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170330001.html
*オオスキ注*現在は削除されていますが、インターネットアーカイブで見れます。下記同様

https://web.archive.org/web/20220714003430/https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170330001.html

web.archive.org

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20170330001-1.pdf

https://web.archive.org/web/20211024104950/https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20170330001-1.pdf

「新たな⺠間保険の創設の検討・周知・活⽤による、休業時の補償制度の充実」
を指すのかなと推測しましたが、このような認識で正しいでしょうか?

経済産業省「雇⽤関係によらない働き⽅」に関する研究会報告書(概要)P6

経済産業省「雇⽤関係によらない働き⽅」に関する研究会報告書(概要)P6

■上記【質問2】〜【質問6】の質問に対する、損保ジャパンからの回答■
詳しい経緯につきましては、当時の担当者部署と異なるため、分かりかねてしまい、お答えできません。申し訳ありません。

■私からの質問■
【質問7】御社とフリーランス協会の接点のはじまりは、経産省・産業人材政策局から紹介されたから
というのはわかりました。
しかし、一般的に考えて、「紹介されたから」だけで、「政府からの提言を受け、御社が商品開発した保険」を提案したり、「フリーランス協会の一般会員向けに提供」したりするものでしょうか?

■損保ジャパンからの回答■
弊社といたしましては、損害保険を通じて社会貢献性が広く発揮できるものについては、団体さまの実績や知名度の観点とは別に商品設計をさせていただく場合がございます。

【2024/1/11 追記】損保ジャパンの別部署の方から連絡が

先日、損保ジャパンの、上記問い合わせを行ったところとは別部署の方から、メールでご連絡をいただきました。今回頂いたメールを、そのまま転載させていただきます。(転載については了解済)

昨年10月にオオスキ様より弊社カスタマーセンターにお問合せをいただき、
弊社社員より回答させて頂いた件について、一部の内容に不適切な点があり、ご連絡させていただきました。

本件、当時の経緯を知る弊社社員が、オオスキ様の弊社担当社員とのやり取りを記載されているブログ記事を閲覧して、同社員より内容に相違点があるという指摘があったことで、ご回答の誤りが発覚したものです。
事実と異なるご案内でご迷惑をおかけいたしましたこと、心からお詫び申し上げます。
 
つきましては、以下の二点、
回答内容の誤りならびに正当な内容について、ご連絡させて頂きます。


一点目
<オオスキ様のご質問>
フリーランス向け福利厚生制度『ベネフィットプラン』」は、政府主体で開発した商品である。
というように読めますが、この理解で正しいでしょうか?
 
<誤った回答内容>
政府からの提言を受け、弊社が商品開発した保険をフリーランス協会の会員向けに提供しております。

 

<正当な回答内容>
『ベネフィットプラン』は、フリーランス協会が設立記者発表の時点で独自に構想していたものです。

 

協会設立の報せを受け、当社からフリーランス協会へ直接コンタクトをとって提案しましたが、
フリーランス協会は当社ほか保険会社3社からも提案を受けていたことから、コンペ形式となりました。
協会内部での検討の結果、保険プランが採用された損保ジャパンが幹事として取りまとめ、他3社も共同運営するという座組が採用されております。

不正確な回答を行ってしまった経緯といたしましては、オオスキ様のご質問への回答に際して、担当者が過去の社内記録を参照した際に、
この一連のフリーランス向け保険開発に当社が取り組む狙いとして、政府がフリーランスに関する政策を進めるという報道があった旨が市況情報として記載されていたことを受けて、
「提言を受けて開発した」と誤ってお伝えしてしまったものでございます。
結論から申し上げますと、この報道(オオスキ様がお示しくださった記事と同じもの)自体が一部正確性に欠けるものであり、
フリーランス協会の保険については、企画、開発、提案、選考のどのプロセスにおいても政府が承知するものではございません。

 

二点目
<誤った回答内容>
当社が協会と取引を始めた経緯は、以下の通りです。
・2017年2月に、企画開が経産省・産業人材政策局と「働き方改革」の観点で意見交換をする中で、当該協会を紹介される。
・その際に、個人会員の年会費は1万円を予定しており、その会費の一部から保険料を捻出の上、会員への補償・サービスに充てたい意向で、大手4社に対して提案を求めているという情報提供あり。
・2017年2月13日に初訪し、4社BIDへ。総合提案が評価され、2017年4月に当社幹事の受注が決定。(2017/4/26にニュースリリース
・本協会が、2017年7月1日より正会員の募集を開始し、それにあわせて2017年8月15日始期で「ベネフィットプラン」の提供を開始。

<正当な回答内容>
当社が協会と取引を始めた経緯は、以下の通りです。
・2017年2月に、企画開が経産省・産業人材政策局と「働き方改革」の観点で意見交換をする中で、当該協会が設立した旨を聞き及ぶ。
・その際に、個人会員の年会費は1万円を予定しており、その会費の一部から保険料を捻出の上、会員への補償・サービスに充てたい意向で、大手保険会社からの提案を求めているらしいという情報提供あり。
経産省から当該協会の連絡先を聞いて直接コンタクトを取り、2017年2月13日に初訪し、4社BIDへ。総合提案が評価され、2017年4月に当社幹事の受注が決定。(2017/4/26にニュースリリース
・本協会が、2017年7月1日より正会員の募集を開始し、それにあわせて2017年8月15日始期で「ベネフィットプラン」の提供を開始。

 

政府の意向で当社と協会が引き合わされたような誤解を招きかねない回答であった旨、補足・訂正しお詫び申し上げます。
 
この度は、弊社の誤った回答のせいでオオスキ様に誤った発信をさせてしまい、ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
今後については、お客さまに正確な内容をお伝えできるよう、組織内での情報共有及び内容の確認を徹底してまいります。

フリーランス協会へも質問

私は2023年10月に、フリーランス協会にも下記のような質問をしました。
上記の保険についての質問については無視されましたが、こちらの質問には回答がありました。

■私からの質問■フリーランス協会自体についての質問です。 
本日改めて「団体概要」の「ごあいさつ」 https://www.freelance-jp.org/about を読んで気がついたのですが、「そんな想いに共感してくれたフリーランス仲間と一緒に、企業や政府の皆様のご協力を得て、2017年1月、フリーランス協会は誕生しました。」という一文がありました。 
フリーランス協会の設立には、政府が関わっているのですか?また、設立だけでなく、現在の協会運営にも関わっているのでしょうか。 
具体的には、フリーランス協会の設立には、政府のどのような協力があったのでしょうか。会員として、知っておきたいと思いました。 
教えていただけますでしょうか。 

フリーランス協会公式HP「ごあいさつ」 https://www.freelance-jp.org/about#message

フリーランス協会公式HP「ごあいさつ」より  https://www.freelance-jp.org/about#message

フリーランス協会からの回答■
2017年1月に行なった設立記者発表会の際、当時の経済産業省フリーランス政策を担当していた産業人材政策室の伊藤室長をゲストにお招きし、国内フリーランスや雇用変動のマクロ状況に関する解説をお願いしました。
ご参考までに、当時の報道はこちらです。

internet.watch.impress.co.jp(なお、当協会理事の田中の肩書が誤植で「協会の代表理事」となっておりますが
正確には設立当初の3ヶ月間は共同代表制を取っており、
現・代表理事の平田と田中いずれも「共同代表理事」でした)
HPでのご指摘の記述は、あくまでその設立記者発表会への登壇協力を指しており、当協会の設立や運営そのものに政府が携わっているという事実は一切ございません。
当協会は、多様な会員がいることを踏まえて行動指針に「公平中立」を掲げるフリーランスの当事者団体であり、特定の政党や政治家の回し物にはならないということを明言しております。
引き続き、「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というビジョンに向けて地道に活動してまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

自分で調査

損保ジャパンの担当者から得られた情報を元に調べてみると、
フリーランス協会の理事メンバーは、フリーランス協会設立以前の2016年11月から、経済産業省の「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」に出席していたことがわかりました。

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#employment

web.archive.org

https://web.archive.org/web/20230607225722/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#employment

https://web.archive.org/web/20200808114903/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#employment

https://web.archive.org/web/20200808114903/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/economy.html#employment

この「2016年11月」という時期は、上記の平田代表による「ごあいさつ」にある

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の起点は、2016年11月フリーランスとして活動する仲間たちとのランチでした。

とも一致します。

フリーランス協会の設立は、2017年1月です。

internet.watch.impress.co.jp

「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」の出席者を見ると、現状、フリーランス協会の理事やアドバイザリーボードの任にある人の名前を見つけることができます。*この研究会には、現在の代表理事である、平田麻莉氏は呼ばれていません。

■「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」第一回出席者

https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/001_02_00.pdf

https://web.archive.org/web/20181223030922/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/001_02_00.pdf

・株式会社Waris 代表取締役共同創業者 田中 美和(たなか みわ)(現・フリーランス協会理事)

*田中氏はフリーランス協会設立時の代表理事の1人です。

internet.watch.impress.co.jp
フリーランス協会の説明によれば、
(なお、当協会理事の田中の肩書が誤植で「協会の代表理事」となっておりますが
正確には設立当初の3ヶ月間は共同代表制を取っており、
現・代表理事の平田と田中いずれも「共同代表理事」でした)
ということでした。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋 俊介(現・フリーランス協会アドバイザリーボード)

*高橋氏は「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」委員

「雇用関係によらない働き方」実態調査 概要(P1) https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/170804zinzai02.pdf 

「雇用関係によらない働き方」実態調査 概要(P1) https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/170804zinzai02.pdf 

■「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」第二回出席者

神戸大学大学院 法学研究科 大内伸哉 教授(現・フリーランス協会アドバイザリーボード)

https://web.archive.org/web/20201101073903/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/002_haifu.html

https://web.archive.org/web/20201101073903/https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/002_haifu.html

「雇用関係によらない働き方」に関する研究会(第2回)議事概要(P3) https://web.archive.org/web/20181223030633/http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/002_00_01.pdf

「雇用関係によらない働き方」に関する研究会(第2回)議事概要(P3) https://web.archive.org/web/20181223030633/http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/002_00_01.pdf

「雇用関係によらない働き方」に関する研究会(第2回)は2016年12月19日に行われており、参加者(誰かは不明)から、既にフリーランス協会設立の意志が示されています。

・フリランサー(事業者)の職業団体等の組成は求められるところであるが、それを持ってサービスや価格交渉を行うことは独禁法との関係で慎重に検討すべき問題である。直近で取り組むべきは、自営的就労においても情報開示、契約内容の明示化をしっかり行えるようにルール作りを行うことではないか。

・フリランサーの意識や価値観、課題意識は多様で広範囲に渡っている。プラットフォームを利用されていない方も含めて、課題解決の一助となるようなネットワークをフリーランス協会という形で立ち上げたい。また業務委託契約に関する順守事項についても、積極的に協会を活用して周知・徹底していきたい。

*オオスキ注*この発言は誰の発言?(田中美和氏?)

■「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」第三回出席者
・守屋 実(現・フリーランス協会理事)

https://web.archive.org/web/20181223031054/http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/003_01_00.pdf

さらに、損保ジャパンの担当者の回答から、損保ジャパンにフリーランス協会設立の情報を提供したのは、
経産省・産業人材政策局」であることがわかりました。
「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」の主催は、「経済産業政策局 産業人材政策室」です。

また、協会設立の発表会には、経済産業省大臣官房参事官(経済産業政策局担当)兼産業人材政策室長の伊藤禎則氏
が出席しています。

internet.watch.impress.co.jp

所感(2024/1/11 更新)

たしかに、フリーランス協会の「設立や運営そのものに政府が携わって」はいないと思うのですが、私が得た情報からは、”フリーランス協会の設立には、政府による「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」の人間関係が、極めて強く影響している」”ような気がしてなりません。

しかし、「経済産業省主催の研究会の影響を受けて立ち上がったと思われる民間組織」の情報を、経産省の官僚が、保険会社にわざわざ情報提供する というのは、よくある話なのでしょうか?
また、既存のフリーランサーの職業団体が多数あるにも関わらず、そういった経緯がある団体を、「当事者団体」としてはフリーランス協会の代表理事「だけ」を委員に選び経済産業省公取委)や厚生労働省フリーランス新法についての検討会に呼んでいるわけです。

詳しくは下記記事の【8】「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会 委員名簿」に平田氏の名が(2023/8/5追記)を参照ください。

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.comこういったことは、果たして法律の検討手法として、適切なのでしょうか?
私個人としては、極めて不自然で、不適切であるように感じるのですが…

このような状況の中で、フリーランス新法が検討され、施行されようとしていることに、いちフリーランスとして強い不安を感じています。

平田代表の謎

上記のことを調べて、正直なところ、前述の「ごあいさつ」や、平田代表がよくメディア等で説明している内容の立ち上げ理由は、「後付け」のような気がしてきています。
後になって「あの時こうだったかも」と認識が新たになることもあるので、この点については、おそらく「嘘」とは言えないでしょう。

しかし、その一方で、下記のような記事もあるため、ますます協会内での平田氏の位置づけや、平田氏個人の目的が、よくわからなくなりました。

広報の仕事は共感者の創造であると考える平田さんは、広報責任者をつとめる「タスカジ」の共感者を得るために手段を限定せず、フリーランスの認知向上やキャリア支援などを行う、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の立ち上げなども行ってきました。

www.bil.jp

2017年10月27日 メディア露出だけが広報じゃない。次世代広報のあり方とは?(ビルコムPRブログより) https://www.bil.jp/blog/details/31

2017年10月27日 メディア露出だけが広報じゃない。次世代広報のあり方とは?(ビルコムPRブログより) https://www.bil.jp/blog/details/31

要するに、フリーランス協会の「ベネフィット」は、平田代表が広報を担当するサービスに顧客を誘導するためにも利用されているらしきことが語られています。
「共感者を得るため」という表現をしていますが…
この発言からは、平田代表の仕事のツールとして、フリーランス協会のWEBサイトが「平田氏が広報を担当する企業への集客目的」や、アフィリエイトサイトのように使われているのでは?と感じます。
フリーランス協会って「非営利団体」なのではなかったでしたっけ…?

しかし、これはあくまで私個人の推測ですが、もし平田代表本人がフリーランス協会サイトを「平田氏自身のビジネスのためトラフィックを稼ぐことが目的」と捉えていた場合、エコーチェンバー事件の弁明ブログで、質問の回答をしなかった理由として、下記の説明をしたことの理由が、かなりハッキリするように思います。

フリーランス協会は問合せを無視している?

アフィリエイトや有料ブログ等への誘導、フォロワー増加など、ご自身のビジネスのためトラフィックを稼ぐことが目的の可能性が見受けられるお問合せ、または情報を切り貼りして不正確な言説を広める意図があると見受けられるお問合せへの情報提供は、1回までという方針に致しております。

blog.freelance-jp.org

平田氏当人が「自身のビジネスのためトラフィックを稼ぐことが目的」でフリーランス協会WEBサイトの運営を行っているため、他の人も同様だと思ってしまった という推測ができるためです。
私はそういう目的ではアフィリエイトをやっていないため、平田氏のこの回答にはかなり驚き、残念に感じていました。
私のアフィリエイトリンクや、投げ銭ボタンに関する考え方は、下記の記事に書きました。

petitmatch.hatenablog.com
もし「情報を切り貼りして不正確な言説を広める意図」だと思われて、私の質問への回答がなかったのだとしたら、それもまた残念に思います。
このブログを読んでくださっている方には十分ご理解頂いていると思いますが、私は、平田代表及びフリーランス協会に対し、有料会員として疑問点を質問しましたが、質問への回答がされないため、やむを得ずこのような情報発信をせざるを得ない状態です。
「情報を切り貼りして不正確な言説を広める意図」は、一切ございません。むしろ正確なことが知りたいですが、適切な回答がない状態です。

   ◇


私には、これ以上は調べることができませんでした。
やる気になれば、いろいろできるのかもしれませんが、こういったことは本業ではないですし、今後これ以上調べる意欲もないため、どなたかのお役にたてばと思い、ここに情報を置いておきます。

関連記事

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com

【フリーランス新法】公取委「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」と、当事者団体ヒアリングまとめ

そもそもフリーランス新法とは?

フリーランス新法とは、正確には「「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」という法律です。
要するにフリーランスに関する取引を適正化し、就業環境を整えようという法律です。
↓このリーフレットがわかりやすいかも

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf

今年5月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。
法は、「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行すること」とされているので、つまり来年秋には施行されます。

個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際に、

・取引条件の明示
・給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払
・ハラスメント対策のための体制整備

等が義務付けられることとなります。
↓詳しくは

www.mhlw.go.jp

現在、公正取引委員会で、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」というのが行われています。これはいわゆる「フリーランス新法」についての検討会です。
今後、月1程度のペースで開催されるようです。

www.jftc.go.jp

www.jftc.go.jp

また、2023/9/11から、厚生労働省で「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」が行われているようです。

www.mhlw.go.jp
同時に、フリーランス当事者団体に対してはヒアリングが行われているようです。

この記事では、公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」と、厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」、及び当事者団体ヒアリングについて、情報が入り次第、記載していきます。

第1回(令和5年8月3日)

第一回はあんまり深い検討はされてないみたいですが、個人的に気になった部分は以下です。

www.jftc.go.jp

議事要旨

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi1.pdf

報酬自体ではないものの、一定の場合に違約金や罰金を請求するという事項については、受け取る金銭に関係するため、明示しなければならない事項に入れるべきではないかと考えている。
本法第5条の報酬未払いに関して、違約金や罰金の定め自体は無効であるわけではないため、民法上有効な相殺の場合にそれを報酬未払いであるという扱いができるのかについては、検討の必要があると考えている。

→(オオスキの感想)どういう議論があったのか、どういう文脈でこういった話が出てきたのか資料を読んだ限りでは不明ですが、なんか不穏というか殺伐としてんなと思いました…
私は約20年フリーで仕事していますが、一度も報酬未払いの経験がないので、わからないところがあるのかもしれません…

○ 本法第3条及び第5条は下請法に類似する部分も多いが、下請法のように資本金要件等がないことから、本法は下請法よりもその適用範囲がかなり広いという特徴もある。下請法と本法のいずれも適用可能である場面が少なからず想定できるが、例えば下請法よりも本法が適用された方が発注事業者にとって有利な内容・条件で取引がしやすいなど、本法が選択されてしまうような規律の内容になることは発注事業者及びフリーランス双方にとって決して望ましいことではない。政令や規則に定める内容次第では発注事業者やフリーランスにとって選択的に有利・不利になるようなことも生じ得るため、その大きな枠組みを一度見据えた上で、発注事業者と受注者それぞれにとってフェアであり、また取引の適正化に資するものを考えていきたい。

→(オオスキの感想)確かに「下請法と本法のいずれも適用可能である場面」ではどちらが適用されるのか?というのは気になります。そもそも下請法が適用されなくても、現状「すべての取引」で独占禁止法は適用されるので、独占禁止法との関係も気になるところです。

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要

https://www.jftc.go.jp/file/2_fl_law_gaiyou.pdf

P18
違反行為を受けた特定受託事業者は、フリーランス・トラブル110番を経由するなどして、公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に今後設置する窓口に申告できる。

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要 P18

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要 P18

→(オオスキの感想)これは公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に、新たにフリーランス用の申告窓口ができるということなのでしょうか?

【2023/9/5追記】「経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室(仮称)」が新設される?

ソース:(令和5年8月31日)公正取引委員会の令和6年度概算要求について

www.jftc.go.jp

<機構・定員>

 ○機構:官房審議官(取引適正化担当)の新設、経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室(仮称)の新設、官房総務課広報・広聴室(仮称)の新設、官房人事課企画官(人材戦略担当)の新設
 ○定員:増員20名 

これが「公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に今後設置する窓口」の中の1つなのでしょうか?今後、チェックしていきたいと思います。

公取委による当事者団体・当事者に対するヒアリング

JILLA(8/2)

8月2日(水)、「フリーランス新法」に関するヒアリングのため公正取引委員会へ伺いました。(出席者:日本イラストレーション協会 代表理事 誉田、副理事長 竹本・横山、事務局次長 鈴木)
ヒアリングでは、公正取引委員会のほか、内閣官房文化庁の担当官の方も臨席され、2時間半にわたり、業界の実情を率直にお伝えして参りました。
(中略)
また、フリーランス新法には直接は関与しませんが、クリエイターが不安に思っていることの1つとして、【結果報告】インボイス導入についてのアンケートにて公開しております調査資料を提出し、現場の懸念もお伝えして参りました。

jilla.or.jp

jilla.or.jp↑「【結果報告】インボイス導入についてのアンケート」というのはこれですね
JILLA、なんていい人たちなのか。
しかも「公正取引委員会のほか、内閣官房文化庁の担当官の方も臨席」というのは、もしかして、「文化芸術分野の契約等に関する相談窓口」も関係してくるのだろうか。

petitmatch.hatenablog.com
フリーランス関係の施策って、今まで、内閣官房を中心に、公正取引委員会経済産業省中小企業庁厚生労働省が担当だったんですよね。

www.mhlw.go.jpなので「文化庁担当者が臨席」というのは、気になります。

日本音楽家ユニオン(8/22・9/7)

日本音楽家ユニオンも8/22にヒアリングを受けたようです。(文化庁はいない?)

日本音楽家ユニオンは9/7に、さらに文化庁担当者も含めてヒアリングを受けたようです。(2回目のヒアリングは公正取引委員会厚労省文化庁?)

出版ネッツ(8/31)

union-nets.orgフリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査結果」できました! 

8月31日には出版ネッツも、厚生労働省公正取引委員会等からヒヤリングを受けました。私たちはこのアンケート調査結果をもとに、出版・WEB関連で働くフリーランスの実態と声を省庁に伝えました。

フリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査結果」はこちら
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2023/10/5a05639e6b3ccc19c036893cd73e98a0.pdf

私はこのアンケートに回答したところ、出版ネッツから追加で質問が来たため、
さらに回答しました。出版ネッツさんからヒアリングを受け、それが公取委厚生労働省に伝わった形だと認識しています。
私は常日頃から公取委にも厚生労働省にも、思いついたら意見を送るようにしていますが…まとまった形にして提出してくれた出版ネッツさんには、とても感謝しています。

第2回(令和5年9月8日)*2023/10/27追記

www.jftc.go.jp

第2回     令和5年9月8日     

各団体からのヒアリング
(1) 一般社団法人日本アニメーター・演出協会
(2) 協同組合日本イラストレーション協会
(3) 全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会

この日は、各団体からのヒアリングが行われたようです。
個人的に気になったのは、議事要旨の中の
(3)協同組合日本イラストレーション協会からのヒアリング の部分です。

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi2.pdf
「一方的ではなく双方協議により成立させる意識の徹底をお願いしたい。」(資料2の①)というのが最もお伝えしたい部分である。というのも、トラブルになっているケースというのは、契約内容をよく分かっていないクリエーターであるとか、あるいは、発注側が過剰にクリエーターの権利を縛り過ぎて起こっているケースが非常に多い。例えば、著作者人格権の行使について放棄を求める契約書は非常に多い。著作者人格権を行使されると後々企業側にビジネス上の不利益があるケースもあるため、縛りをかけたい気持ちは分かるが、守秘義務契約等を交わした上で行っている案件も多いにもかかわらずプラスアルファで著作者人格権の放棄を求めているケースが非常に多い。確かにそれ自体はトラブルにはならないが、例えば自分が作ったということを作者が発表することが許されないケースなどトラブルの温床になっているケースが散見される。

とありますが、この文章には2点の疑問があります。

著作者人格権は、著作者に帰属するものであり、「放棄」はできません。(著作権法第59条)できるとすれば「著作者人格権の不行使」です。

sendai-c3.jp

また、実績公開と著作者人格権不行使は、本来的には別の話です。
守秘義務と実績公開は関係がありますが…
公取委の人の理解が間違っているのか、協同組合日本イラストレーション協会の方がそもそも勘違いしているのか、わかりませんが…
しかし、イラストレーターで「著作者人格権不行使特約を結ぶと実績公開ができなくなる」という勘違いをしている人はTwitter等ではちらほら見かけるので、この点について、著作権法上での解説記事を後日書こうかなと思いました。
公取委にも近日中に、意見を送ってみようと思います。

(2023/12/1追記)JILLAに上記の疑問点について質問したところ、回答がありました。

協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)に、上記の疑問点について質問してみました。かなり丁寧に解説いただき、よく理解できました。ありがとうございました。

jilla.or.jp

第3回(令和5年9月26日)*2023/11/9追記

11/8に第4回・第5回の資料まで更新されており、第3回の議事要旨まで確認しました。

一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク、日本脚本家連盟の資料を見て、やはりクリエイティブ系は問題となる点が似ているし、やはり同じところで引っかかるんだなあと思いました。ヒアリングの対象団体がちょっと少ないんじゃないかと思ったりはしましたが…

www.jftc.go.jp

令和5年9月26日
各団体からのヒアリング
(1)全国建設労働組合総連合
(2)一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会
(3)一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク

この日も、各団体からのヒアリングが行われたようです。

イラストレーターに近しい働き方のフリーランスの団体としては、
一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf
かなと思い、こちらの資料を興味深く読みました。

舞台芸術産業の特質:
・クリエイティブ業務を中心に、人選は極めて属人的(例:相見積もりで作家やデザイナーが変わるなどは想定しがたい)。

・公演の最終成果物は多数者の共同創作の過程で不断に変化を続け、その評価が関係者の将来に直結するため、ゴールが変わるのは日常茶飯事であり、事前に業務内容を固定することは受発注双方ともに困難であるケースも多い。

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これはイラストも割とこういう性質があると思います。

聴き取りに基づくフリーランス契約の傾向:
・大・中規模事業者では(そもそも下請法の経験もあり)基本契約書+個別発注の形も少なくないと思われるが、大多数を占める小規模事業者では業務進行と並行して相互にメールで条件を出し合い、請求書と領収書で終了というケースが多数であろうと推測する。

・委託期間は数日程度から2年まで、多岐にわたる。
https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これもイラストも割とこういう性質があると思います。
私は取引先は大手がほとんどということもあり、特に近年は下請法に従う形で仕事をすることが多かったですが、そうでない会社も多いと思います。

ヒアリング事項への回答・要望など:
業務委託の際の明示義務の範囲(給付の内容、報酬の額「等」の規則委任):
・前述の通り、多くのフリーランス・個人会社が保護対象になると共に、発注側として義務を負うことにもなる。非法人の小規模団体も多い。
・制度の認知は全く進んでおらず、契約書の習慣・習熟度も総じて低く、混乱が危惧される。
・また、クリエイティブ作業はゴールを共に作り上げて行く非定型業務が多く、「約款」での一律規制も望ましいとは限らない/容易ではない。
・実態に基づいて無理がなく、かつわかりやすいシンプルな記載事項のルール化が望まれる。
・また、明示方法としては実態を反映して幅広いツールを認めて頂くことが望ましい。

その他の要望:
前述した理由により、下記のような行政のサポートが必須となると考える。
・制度のわかりやすい周知、特にクリエイティブ業務において当初において決めがたい部分の現実的な運用
・知りたいと思った時に行政の信頼できる、デザイン的にもわかりやすい情報にアクセスできること
・気軽に相談できる相談窓口(電話・チャット)の整備 など

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これも、イラストレーションの仕事も同様と思いました。気軽に相談できる相談窓口、電話・チャットがあると、かなり良いなと思いました。というか、そういうのがないと、このままフリーランス新法が施行されても、確実に混乱すると思います。

相談窓口としては「フリーランス・トラブル110番」が既にあると考える方もいるかもしれません。しかし、私が実際に契約についての問題について相談したところ、あくまでここは「トラブル」の相談窓口で、契約の「交渉術」については対象外と言われたことがあります。私は契約の過程でハラスメントを受けたという認識で、「トラブル」という認識だったので、相談したのですが…
そもそもフリーランストラブル110番は、企業側有利にものを考える弁護士が多く、受注者側に親身になってくれる感じが全くないという評判をよく聞きます。
実際、私も複数回相談していますが、かなりゲンナリする対応を受ける場合が9割です。


本来的には、トラブル予防のために契約書の作成をするのですから、「契約前」の段階で「気軽に」相談できるようにすべきと考えます。

(3)一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワークからのヒアリング

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi3.pdf

(小規模事業者のために事業者団体等がひな形を提示すれば、より明確な契約が進むと思うかとの委員からの質問に対し、)ひな形があれば参考として役に立つ場合もあると思うが、ひな形を示したとしても無数にある契約タイプの一部を示したに過ぎず、どのような場合でも通用するようなひな形を示すことは不可能である。そのため、小規模事業者からの個別の相談に応じてサポートできる体制も重要であると思う。

→この指摘はもっともで、個別の契約をサポートできるような体制が必要であると考えます。現状、文化庁の契約相談窓口は常設でもなく、相談しても「10日以内に回答」と、「実務」ではとても使えないものです。

petitmatch.hatenablog.com
著作権情報センターの電話窓口のように、少なくとも平日数時間は電話相談、即時の相談ができるような「常設窓口」がない限り、受注者側が圧倒的に不利になってしまうように思います。

第4回(令和5年10月2日)*2023/11/9追記

www.jftc.go.jp

令和5年10月2日     

各団体からのヒアリング
(1)一般社団法人ITフリーランス支援機構
(2)特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会
(3)協同組合日本脚本家連盟

この日も、各団体からのヒアリングが行われたようです。

私としては、協同組合日本脚本家連盟の資料が興味深かったです。
脚本家の仕事は、私のようなイラストレーターの仕事と仕事の構造や流れが近いのかなと感じました。

https://www.jftc.go.jp/file/3_writersguild_siryou.pdf

Ⅲ. 政令・規則で定めるべき事項についてⅢ. 政令・規則で定めるべき事項について

・「業務委託の期間(政令で定める期間以上の期間)」については、作品によっては単発・短期間で業務が完了する場合があるので下請法同様、不要だと考える

→これは私もそう思います。下記の「適用法の明確性」にも関連しますが、下請法に準ずる形(下請法にあわせる形)が良いのではないかと考えます。

Ⅳ. その他

・下請法とフリーランス新法について、発注者が有利になるような選択ができないように適用法の明確性が必要

著作権法には、著作者人格権として同一性保持権(無断で著作物を改変されない権利)が規定されているが、無断で脚本を改変されたり、著作者人格権を行使しないことを約束させられたりするケースがある
・動画配信サービス事業者等が、脚本家に脚本執筆を委嘱する際、安価な脚本料と引き換えに著作権の買い取り(バイアウト)を迫る事例が頻発している

→これはイラストレーターでも起きている事例だと思います。

・事業者が日脚連入会希望者に対して圧力をかけて加入を阻止することが後を絶たない
・日脚連会員への脚本執筆の委嘱を避けることや、今後は日脚連会員に発注しないとの事業者の言動は日常茶飯である

→これはイラストの業界では聞いたことないので、逆に日脚連が業界において広く認知されているということの現れだと感じました。

議事要旨はまだUPされていないので、読み次第、また更新します。

議事要旨まで確認(2023/11/16)

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi4.pdf

こちらも(3)協同組合日本脚本家連盟からのヒアリングが、イラストレーターの仕事実態と近しいものがあるかなと感じました。
つまり、そこまで最初はガチガチに書面で決めないし、下請法適用企業でも下請法に準ずるような契約の運用はされていないが、何か問題があった場合には話し合いが行われているため、意外と問題にならない(なんとなくの業界ルールが決まっている)ということです。
脚本家連盟でも問題になっているのは外資系企業からの買いたたきのようですが、イラストレーションの仕事でも、問題が起きるのは既存のメディア企業ではなく、近年になってイラストの発注をはじめた企業が主であるように、私個人としては感じています。

第5回(令和5年10月30日)*2023/12/27追記

www.jftc.go.jp

第5回の議事要旨まで確認しました。今回は

1・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間(法第5条第1項柱書)について
2・「契約の更新」(法第5条第1項柱書)について
3・業務委託した際に明示しなければならない事項(法第3条第1項)等について

を主に議論したようです。

私としては下記の部分が気になるポイントでした。

1・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間を1ヶ月にするのか、それ以上にするのか?
2・契約の「空白期間」と「契約の同一性」をどう考えるか
3・業務委託した際に明示しなければならない事項(法第3条第1項)等について、氏名や住所は必須にするのか否か?知的財産権の扱いは必須にするのか否か?

現在公開されている第6回の資料
特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会報告書(たたき台)

https://www.jftc.go.jp/file/01_fl_report_draft.pdf
を読む限りでは、

・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間は1ヶ月となる方向
・イラストレーションの仕事のような著作物制作の業務の場合、知的財産権の扱いの明示は必須事項となる方向。氏名は「何らかの名称そのもの」は必須となる方向

なのかなと思いました。

第6回(令和5年11月14日)*2024/1/25追記

www.jftc.go.jp

第6回の議事要旨まで確認しました。まさに↑で気になっていた、

(1)「2 業務委託事業者及び特定受託事業者の名称」について
(2)「3 知的財産権の帰属」について

が議論されていました。

あとは
(3)「5 交通費、宿泊費、材料費等の諸経費」について
(4)「6 違約金・罰金」について

が個人的に気になるところでした。

第7回(令和5年12月12日)*2024/2/5追記

www.jftc.go.jp

第7回の議事要旨まで確認しました。
今回の議題は、検討会報告書(案)についてです。これで、この検討会は終了です。
全体に問題はないのではないかと思いました。
フリーランス新法の施行日は、2024年11月1日になりそうな感じでしょうか?

「第5 おわりに」には、何かあれば見直しすべき旨も記載すべきではないか。

というのも心強い。
電子帳簿保存法のように、実態に合わせて、アップデートされるべきでしょう。

「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」報告書が公表(令和6年1月19日)*2024/1/25追記

なんと第7回の議事要旨より前に、報告書が公表されていました。

www.jftc.go.jp

【気になった点】フリーランス協会の平田代表、フリーランスの個人情報への配慮」を謳いながら、請求時に本名が開示される「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」の問題点についてはなぜかスルー

この検討会の議事要旨は、発言者が特定されない形で公表される形となっています。
フリーランス協会のWEBサイトで、代表理事の平田氏が、この報告書と、検討会での自身の言及部分について説明していましたので、不審な点がないかチェックしてみました。やはり1点、気になることがありました。

blog.freelance-jp.org

各論点においてどんな話があったのか、フリーランス的に気になるポイントに絞って簡単にシェアします。

・「取引条件明示」でどんな事項を明示義務とするか?

法律の条文に明記されていたのは、「給付の内容(委託する業務の内容)、報酬の額、支払期日等」です。この「等」に何を含めるのか、を決める必要がありました。

特に議論が分かれたポイントは、①お互いの名称(本名)や住所、②諸経費の取扱い、③知的財産権の帰属、④違約金・罰金を明示義務の対象とするかどうか、でした。

私は、①は屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ、②は諸経費の扱いを取引に先立って決めておかないとトラブルの温床になるから明示義務とすべき、③も発注時に予め心づもりしておかないと揉めるから明示義務とすべき、④は違約金・罰金を課すこと自体がそもそも褒められた行為ではないのに明示義務とするのは微妙、という立場でした。

日頃から紛争解決に携わっている弁護士さんたちからすると、本名や住所というのは内容証明を送ったり訴訟提起するために必須であり、私たちを守るためにも明示義務とすべきというお考えの方も多いのは重々理解しているのですが、やはりそこは個人のリスク許容度に委ねて、匿名のハンドルネームで活動している人が取引しづらくならないように配慮する必要があるだろうと思います。

平田氏は、「屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ」と発言していますが、しかしこの点を問題とするのであれば、インボイス制度において、国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで「個人事業主の個人情報(本名)が公開される」こと(いわゆる「本名バレ問題」も問題視しなければならないのではないかと思います。

「本名バレ問題」が話題になっていた2022年9月には、フリーランス協会からは、私が知る限りでは、この問題については、何も言及も行動もなかったように思います。
この点については、私は昨年「法人登記の代表取締役の個人情報保護に関する提言書」がフリーランス協会他5団体と連名で出されたときに、下記記事で指摘しています。

petitmatch.hatenablog.com
現在も、この点についての言及はされていないように思います。(もしあれば教えてください)

インボイス制度に反対する人たちの中には、「個人事業主の個人情報が公開される」ことを理由としている人もいました。それにも関わらず、平田氏はその点には触れず、インボイス制度に反対するフリーランス当事者に対し、誹謗中傷や攻撃的な態度を、現在も繰り返しています。

petitmatch.hatenablog.com

これまで、大半のフリーランス個人事業主の個人情報の問題には何も言及せず、むしろ協会としてインボイス登録を積極的に推進し、反対派に対しては異常なまでに攻撃的な態度を取っていたにも関わらず、こちらの検討会では「明示はやり過ぎ」と発言しています。考えに変化があったのでしょうか?

フリーランス新法において、契約が匿名・ペンネームでできても、適格請求書発行事業者公表サイトが現状のままでは、請求書にある適格請求書発行事業者登録番号を検索した際には、本名しか出てこないということになります。
つまり、匿名で契約しても、本名がわからないと、請求時に本人であるかどうかの確認ができません。しかも、結局のところ適格請求書を出せば、本名は取引先に伝わるということになります。少なくとも経理担当者には確実に本名が伝わります

ですので、「屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ」とまで言うのであれば、適格請求書発行事業者公表サイトも合わせて「本名が公開されるのはやり過ぎ」として、批判なり要望なりを出すというのが、論理的に考えれば自然かなあと思います。

フリーランス当事者」の立場で検討会に参加しているのに、この問題だけ放置、一切の言及がないというのは、どうにも不自然であるように思いました。
ちなみに他のフリーランス団体、JILLAは公取委ヒアリングの際に、インボイス制度についても言及し、要望を出しています。

jilla.or.jp

JILLAのアンケートには、この適格請求書発行事業者公表サイトで本名が公開される問題、適格請求書発行事業者公表サイトの掲載情報が商用利用される問題についての項目があります。JILLAの活動や組織としての発言は、極めて筋が通っているように思います。頼もしいです。

【2023/9/27追記】厚生労働省でも「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」が開催

厚生労働省でも「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」という検討会が行われているようです。

www.mhlw.go.jp

検討会のメンツは2名かぶっている

この検討会と、公取委の「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」のメンバーは、2名かぶっています。以下の二名です。


鹿野 菜穂子 慶應義塾大学大学院法務研究科 教授
平田 麻莉 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・
フリーランス協会 代表理事

フリーランス協会の代表理事、平田氏が入っているだけで、大丈夫かなあ…?という印象を受けますね…こちらも注視が必要でしょう。
フリーランス協会の過去の問題行為や、現状の問題点については、下記記事にまとめてあります。

petitmatch.hatenablog.com

こちらは主な議論は、10月上旬以降に、ヒアリングが終わったあとに行われるようです。

厚生労働省によるヒアリングが行われている団体一覧

この検討会は、「どの団体にヒアリングを行っているのか」が公開されています。
今までにヒアリングを受けた団体は以下です。

2023年9月29日 第2回 特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

www.mhlw.go.jp

(一社)日本フードデリバリーサービス協会
(一社)IT フリーランス支援機構
(一社)スポーツユニオン
全国建設労働組合総連合

2023年10月3日 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

www.mhlw.go.jp(一社)日本リラクゼーション業協会
(一社)緊急事態舞台芸術ネットワーク
全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会
(一社)日本アニメーター・演出協会

【嘘?情報流出?】フリーランス協会の平田代表、存在しないはずの「契約トラブル相談窓口」の相談内容を厚労省の検討会で発言(2023/11/21追記)

第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kintou_449523_00002.html

の議事録のp6に

https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

◯平田構成員 フリーランス協会の平田です。御説明ありがとうございました。  
私どもも、実は契約トラブルの相談窓口の中で圧倒的に一番多いのがリラクゼーション業界さんなのですね。その相談内容を見ていて、普段からちょっと分からないなと思っているところがあったのでお伺いさせてください。

2023-10-3 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会 議事録 https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

2023-10-3 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会 議事録 https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

とありました。  

私はフリーランス協会の有料会員ですが、フリーランス協会には、「『契約トラブルの相談窓口』は存在しない」という認識でした。それは協会サイトにも書いてあります。

Q 法律相談に乗ってもらえますか?
A 法務的な相談については、大変恐れ入りますが、専門外となるため対応致しかねます。第二東京弁護士会が運営している「フリーランス・トラブル110番」をご利用ください。

https://www.freelance-jp.org/faq/detail/185

また、フリーランス協会が提供している弁護士費用保険「フリーガル」(損保ジャパン)には電話相談窓口があり、そこで一般的な法律相談はできるという認識で、私も実際に利用したことがあります。

www.freelance-jp.org

「コクリエ士業オンライン」というサービスも有料会員だと使えますが、これは相談窓口というより弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」のような、「会員制質問掲示板」に近い感じのものです。

www.bengo4.com

しかし、この平田代表の発言を読む限りでは、「フリーランス協会に」「契約トラブルの相談窓口が存在する」ように読めます。  
さらに、平田代表は、実際に相談された内容を把握することができているようです。


そこで、フリーランス協会に、2023/11/1に下記のように問い合わせてみましたが、今のところ回答はありません。

1・フリーランス協会には、契約トラブルの相談窓口があるのでしょうか?  

仮にある場合、相談内容は、平田代表に全て把握される状態となるということなのでしょうか?

2・この平田代表の発言の中の、「契約トラブルの相談窓口」がもし「フリーガル」を指す場合ですが、フリーガルの弁護士に相談した内容でも、平田代表に全て内容を把握されるということなのでしょうか?

念のため、損保ジャパンの加入者専用弁護士相談コンシェル(相談窓口)に確認したところ、

・個別の相談内容は共有されない。

・個人情報(会員の誰が相談をしたのか)も共有されない

・つまり、誰がどのような相談をしたのかというのは、フリーランス協会には共有されていない

ということでした。

ということは、平田代表の発言の中にある「契約トラブルの相談窓口」は、「フリーガル」ではないということになります。

また、フリーランス協会内には、「契約トラブルの相談窓口」は、私が知る限り存在しません。

平田氏が見ているという「契約トラブルの相談窓口の中で圧倒的に一番多いリラクゼーション業界さんの相談内容」とは、具体的には何なのか?という疑問を持ちました。

おそらく平田氏が嘘をついているか、本来的には平田氏に公開されるべきではない、何らかの相談窓口の情報が流出しているか


のどちらかであるように思われました。
いずれにしても、法律の運用を決めるための検討会において、問題であるように思います。

ちなみに、2023/11/9に、厚生労働省に、この点について質問したところ、

「大変恐れ入りますが、個別の団体様の内部の事情につきましては、弊省として承知していないところであり、 お答えすることはできません。」


という回答でした。

フリーランス・トラブル110番にも問い合わせたところ、下記の回答でした。

フリーランス・トラブル110番の相談内容が漏れることはない。
東京第二弁護士会と、厚生労働省には個人情報がわからない形で共有される。(2023/11/20)

平田氏は「相談窓口がないのに、あるかのように発言する」タイプの虚言を繰り返している

ちなみに平田代表は「相談窓口がないのに、あるかのように発言する」という行為を、繰り返し行っており、私が知る限りではこれで2回めです。
こちらの記事の【5】と類似の事例となります。

事例2:相談対応はしていないのに、活動内容に相談対応を含めた誇張報道を訂正せずに拡散

juninukai.theletter.jp


対策

おそらく、本件において今後、フリーランス協会も、損保ジャパンも、誰も本当の事は言わないだろうと思います。
フリーランス当事者としてできることは、何らかの相談窓口や、弁護士に相談する前には「相談内容がフリーランス協会(他、他の事業者や官庁など)に共有されるのかどうか」を確認する という対策をとるしかないように思いました。

意見の送り先

こちらの検討会への意見は、厚生労働省「国民の皆様の声」募集 送信フォームまで。

www.mhlw.go.jp

第4回議事録を確認(2023/12/18追記)

第4回の議事録を確認しましたが、今回は特に平田氏の発言に不審な点は見られず、問題はないようでした。

https://www.mhlw.go.jp/content/001173402.pdf

第5回議事録を確認(2023/12/18追記)

今回も、平田氏の不審な発言は見られませんでした。

https://www.mhlw.go.jp/content/001173403.pdf

大谷構成員(大谷武士 全国中小企業団体中央会 労働政策部長)いい質問しますね!
鎌田構成員(鎌田 耕一 東洋大学 名誉教授)の平田氏に対するツッコミも素晴らしい。

https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001144645.pdf

今後、注目していきたいと思います。

第6回議事録を確認(2024/3/25追記)

第6回の議事録を確認しました。今回も特に平田氏の発言に不審な点は見られず、問題はないようでした。今後も油断なく注視していきたいと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/001230253.pdf

フリーランス新法に対する問い合わせ先

フリーランス新法に関しては、下記に問い合わせ電話番号があります。

www.jftc.go.jp
下記フォームから意見を送ることもできます。

www.jftc.go.jp

厚生労働省フリーランス関係の問い合わせ担当部署は、下記のように分かれています。

●法律の内容について
雇用環境・均等局 総務課雇用環境政策室(内線7876)
ガイドラインフリーランス・トラブル110番について
雇用環境・均等局 在宅労働課フリーランス就業環境整備室 (内線4509、7850 )
●自営型テレワークについて
雇用環境・均等局 在宅労働課(内線7873)
職業安定法について
職業安定局 需給調整事業課(内線5312)

www.mhlw.go.jp

参考:フリーランスも労災に入れるようになる予定。しかし…(2023/11/22)

www.jiji.com

現行制度で労災保険に加入できるのは、食事宅配サービスの配達員など一部業種に限られるが、新制度では、企業に業務を委託されるフリーランスは業種を問わず対象とする方針。5月に公布されたフリーランス保護法の付帯決議で、幅広く加入できる制度とするよう求められ、部会で議論していた。

www.sankei.com

この部会というのは、厚生労働省労働政策審議会(労働条件分科会労災保険部会)のことで、「フリーランスに係る関係団体からのヒアリング」に呼ばれたのは、連合とフリーランス協会です。

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36470.html

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36470.html

www.mhlw.go.jpなんで連合とフリーランス協会なんだ?と思って資料を読んでみたところ、
現状、フリーランスが労災に入るには、「特別加入団体」の構成員であることが必要なのですが、今後「特別加入団体」になるための条件として、下記を検討しているようです。

1.特別加入団体の要件については、既存の特別加入団体の要件(※)に加えて、以下の要件を追加する。
① 特別加入団体になろうとする者(その母体となる団体を含む。)が、特定の業種に関わらないフリーランス全般の支援のための活動の実績を有していること。
② 全国を単位として特別加入事業を実施すること。その際には、都道府県ごとに加入希望者が訪問可能な事務所を設けること。
③ 加入者等に対し、加入、脱退、災害発生時の労災給付請求等の各種支援を行うこと。
④ 加入者に、適切に災害防止のための教育を行い、その結果を厚生労働省に報告すること。

www.mhlw.go.jp

 

第109回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料 資料2-2 御意見を踏まえた対応案 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001168990.pdf

第109回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料 資料2-2 御意見を踏まえた対応案 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001168990.pdf

この①は確かに連合とフリーランス協会、フリーナンス(一般社団法人フリーランスAWS協会)くらいしか現状ない気がします。私が知らないだけかな…
②は、連合とフリーランス協会を持ってしても、果たして可能なのだろうか…という懸念があります。今後ヒアリングが行われるようなので、こちらも注目していきたいと思います。

【2023/11/29追記】

よくよく考えたら、商工会議所・商工会なら全然余裕で特別加入団体になれるのではと気づきました。あまりに巨大組織すぎて忘れてました…

関連記事:私個人が懸念していること

petitmatch.hatenablog.com

『ビジネス著作権検定公式テキスト』第3版第3刷で、著作者人格権に関する記載が変更。著作者人格権尊重ムーブメントの予感!

先日、『ビジネス著作権検定公式テキスト[初級・上級]第3版』(インプレス)の改訂版、第3刷が発売となりました。

◆ ビジネス著作権検定 公式テキスト[初級・上級]第3版
【第3刷】7月6日(木)重版出来

book.impress.co.jp

『ビジネス著作権検定公式テキスト[初級・上級]第3版』第3刷(インプレス)

『ビジネス著作権検定公式テキスト[初級・上級]第3版』第3刷(インプレス)奥付

インプレスの書籍紹介ページでは、一切の説明がされていませんが、この第3版第3刷では、著作者人格権の説明について、記載の変更がなされています。

book.impress.co.jp
↓ビジネス著作権検定「著作権検定委員会」検定委員の一橋大学法学部教授 長塚真琴先生のツイート

www.sikaku.gr.jp
変更点は著作者人格権の部分の記載(P59、P66)です。
著作者人格権不行使特約について、
P59では

(前略)「将来の創作行為に及ぶ、あらゆる著作物の包括的な著作者人格権の不行使を定める事前の契約は、近年クリエーターから強く批判されており、その有効性を否定する見解も少なくない。この点、氏名表示の扱いや将来あり得る改変について、契約当事者双方が対等かつ率直に話し合い、具体的で公平な取り決めをすれば、無効のリスクを減らすことができる。」

 

P66では

(プログラムの著作物とは異なり)
「イラストや文章などの著作物においては、こうした契約の法的能力に疑問も呈されている」

という記載がされました。
著作者&著作権者として、とても嬉しいです。

安易な著作者人格権不行使特約が蔓延する昨今ですが、下記の友利さんのご本でも
「イラストやコラム記事など、著作者の個性やこだわりが現れやすいタイプの著作物は、不行使同意は避けた方が良い」(P155)と明言されていました。

petitmatch.hatenablog.com
著作者人格権を尊重する流れが来ているのを感じます。

私のような仕事(イラスト・コラム)をされている方で、もし特に説明なく著作者人格権不行使特約を提示されて困ったら、上記2冊の記載を根拠として説明するとよいかと思います。
法務担当者など企業側で著作権契約に関わる方も、知識をアップデートしていただきたいです。

『ビジネス著作権検定公式テキスト[初級・上級]第3版』は、ネット書店では「3版3刷」の指定ができないので、書店で注文したほうが良いと思います。

関連記事

petitmatch.hatenablog.com

フリーランス新法に対する私の懸念点

先日、フリーランス新法に対する懸念点を、Twitterで何気なくつぶやいたところ…

結構いいねがつき、直接DMで「これはどういうことなのか?」という質問も来ました。ですので、気になっている方もいるのかなと思い、せっかくなので、ブログに詳しく書くことにしました。

1・そもそもフリーランス新法とは?

フリーランス新法とは、正確には「「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」という法律です。
要するにフリーランスに関する取引を適正化し、就業環境を整えようという法律です。
↓このリーフレットがわかりやすいかも

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf

今年5月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。
法は、「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行すること」とされているので、つまり来年秋には施行されます。

個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際に、

・取引条件の明示
・給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払
・ハラスメント対策のための体制整備

等が義務付けられることとなります。
↓詳しくは

www.mhlw.go.jp

フリーランス新法は、細かいところはまだ決まっていません。
今月から、公正取引委員会で「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」が行われており、今後月1程度のペースで開催されるようです。

www.jftc.go.jp

www.jftc.go.jp

また、同時に、フリーランス当事者団体に対してはヒアリングが行われているようです。

jilla.or.jp

petitmatch.hatenablog.com

出版・Web・印刷・広告・新聞関連で働くフリーランス(兼業・副業を含む)に対しては、現在、出版ネッツがアンケートを行っています。(8/24まで)

docs.google.com

2・私としては「取引条件の明示」が諸刃の剣であると感じている

フリーランス新法には、取引条件の明示義務(3条)があります。

elaws.e-gov.go.jp

この「取引条件の明確化」が私は、諸刃の剣だと思っています。

例えばですが、クライアント側がガチガチでメチャクチャ細かい契約書を作ってきて、その内容がクライアント側に圧倒的有利な内容だったりする場合もあると想定されます。

しかし、一般的なフリーランスの人(特にクリエイティブ系とか、私のような絵描きは特に…)は、契約書(というか、文字)を読むこと自体に抵抗があったり、字が読めても契約書の内容が理解できず、「よくわからないから、いいや、悪いことにはならないだろう、サインしちゃえ」と思って、サインしてしまう場合もあると思うのです。

特に著作権については、取り返しが付かないトラブルになる可能性があるように思います。

契約書がなければ、法に沿う形になりますから、著作権は譲渡されず自分のままです。

しかし、契約書に著作権譲渡&著作者人格権不行使の条項があり、深く考えずにサインしてしまうと、当然ですが著作権譲渡&著作者人格権不行使に合意したことになってしまいます。

そうなると、著作権譲渡したことによって著作者は著作権を失いますし、何より自分自身でその後その著作物が使えなくなります。
場合によっては、その後の仕事に支障をきたすこともあるでしょう。
特に広告で競合制限がある場合、深く考えずに何でもかんでもサインしてしまったら、大変なことになります。

これは、今でもそういう問題は既にあると思います。
しかし契約書がなかったことによって、「深く考えないタイプの人」の著作権や他の権利が守られてきた場合というのが、確実にあると思うのです。

しかし今後は小さい仕事でも取引条件の明示が義務になる→あまり深く物事を考えないタイプのクライアントが、定型の契約書を色んな仕事に使い回す→あまり深く物事を考えないタイプの受注者が、深く考えずにサインしてしまう
ということが起きると思うのです。

今でもこの問題はありますが、それがますます増えるのではないかと危惧しております。

契約書を作成したり確認するという点だけでも、委託者とフリーランス側には圧倒的な非対称性があります。仮に双方の意識が低かった場合、フリーランスは基本一人で仕事しているわけなので、圧倒的に不利になります。

これが、私がTwitterで呟いたときに考えていた懸念点の詳細です。

3・政府は「フリーランス・トラブル110番を中核として対応する」としているが…文化庁の対応も不安でならない

上記のような懸念点への対策としては、フリーランスに対する弁護士費用の補助や、無償での契約教育・研修を行う必要があるように思います。

政府側は、相談対応については「フリーランス・トラブル110番が相談対応の中核を担う」としているようです。

山田:
この「特定受託事業者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずる」、じつはこれがフリーランス・トラブル110番のことなんですよ。

ぽな:
ええええ! そうなんですか!?

山田:
ついに立法上の根拠ができてしまいました。フリーランス新法をめぐる国会の答弁でも、「相談対応についてはフリーランス・トラブル110番を中核にして対応するべし」と、はっきり言われています。

goworkship.com

しかし、私としては、これも不安です…
フリーランス・トラブル110番に過去に相談したときの印象を、下記記事に書いています。

フリーランス・トラブル110番には、私も相談したことがあり、こちらでも契約の相談には乗ってもらえます。
ですが、正直なところ、著作物使用許諾契約(イラストの仕事で一般的な契約)には、全く詳しくないという印象を受けました。
というか、まず、それ以前の問題で、物の考え方が完全に「企業寄り」で、「味方になってくれる感」が非常に薄いです。この「味方になってくれる感のなさ」は、私だけの印象ではなく、他の複数の相談者から聞いたことがあります。
Twitterで検索すると割と「助かった」みたいな良い感想も書いてあるので、その時の担当者によるのかもしれませんが…

petitmatch.hatenablog.com

同じ内容の相談に対し、フリーランス・トラブル110番だけ回答の方向性が全く違っていたり、(私もおかしいと感じました)他の窓口で「フリーランス・トラブル110番でこういう回答だったが本当か」と確認すると「それはおかしい、考え方が企業寄りすぎ、オオスキさんをあまりに馬鹿にしすぎている」という回答がされた という経験があります。

petitmatch.hatenablog.com


ちなみにフリーランス・トラブル110番に関する苦情申し出先は厚生労働省 雇用環境・均等局 在宅労働課フリーランス就業環境整備室 (内線4509、7850 )だそうです。下記のフォームからも意見を送信することができます。

www.mhlw.go.jp
ちなみに私のような文化芸術分野のフリーランスへの対応は、文化庁も行っていますが、今年3月17日まで開設されていた、文化庁の契約相談窓口にも、現場の実務をまったく知らない、「大嘘」と言っても過言ではない内容を、さも「これが常識」みたいな説明をしてくる弁護士がおり、かなり困惑しました。
詳しくは下記2本の記事に書いてあります。

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com弁護士にも、「実際の現場を知る」「個人事業主の立場で考える」研修が必要であるように思います。

4・そもそも、既存の法律である下請法も守られていないし、公契約も公的法人のやりたい放題になっている

今でさえ、上場企業でも堂々と証拠に残る形で下請法違反や、ハラスメントをしてくる会社があります。(これも経験があり、公取委に申告して指導してもらいました)
↓ここから申告・情報提供ができます

www.jftc.go.jp

www.jftc.go.jp大企業、しかも上場企業が下請法すら守れていない現状で、一般的な企業がフリーランス新法を守れるはずがないという印象を持っています。

また、公取委に問い合わせた際、フリーランス新法の対象となる発注事業者については、「独占禁止法と同様の運用」となり、地方自治体などの公的法人は「事業活動」を行う場合に限るという話を聞きました。
現在、世田谷区史編纂問題など、地方自治体との契約で、契約条件が独占禁止法・下請法基準では極めて違法性が高いのに、公的法人は適用外であるために、フリーランス側が圧倒的不利となり、地方自治体側がやりたい放題になっているという問題があるようです。

petitmatch.hatenablog.com地方自治体とフリーランス間の公契約における取引適正化についても、検討していただきたいと思っています。

5・私自身は、フリーランス新法があってもなくても何も変わらないが、企業側と交渉しにくくなる懸念もある

懸念事項をつらつら書きましたが、私自身は20年近くフリーで仕事しており、現状、フリーランス新法がなくても、特に問題なく仕事できています。
上にはいろいろ書きましたが、ほとんどの取引先は、素晴らしい方ばかりです。
取引先として下請法適用企業がほとんどであったため、契約書を結んで仕事する機会が多かったです。それ以外の仕事でも「下請法に準ずる形」として、現状ほぼ全ての案件において、確認書を作成してきました。

petitmatch.hatenablog.comなので、私個人としては、既存のやり方でフリーランス新法にも対応できる状態になっています。

しかし、今までは私の確認書だけで問題なく仕事できてきたのに、相手先企業が「ガチガチの定型の契約書を色んな仕事に使い回し、契約書の修正を認めない」という可能性が、フリーランス新法施行後にはあり得ると想定しています。
実際にそういったクライアントは過去に実在し、送付されてきた契約書に対して質問をしただけで、仕事自体をキャンセルされたことがあります。(これも公取委に情報提供済)
そういった事が増えるのではないかと、本当に不安です…

同じ懸念を、弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部リーガルデザインチームの方も下記の様に書かれていました。

さて、このフリーランス保護新法が制定された場合、企業としてはどのような対応を取るでしょうか。

個人との業務委託契約に規制をかけることで、業務委託契約が忌避され、労働者としての雇用が増えるとの期待の声もあります。しかし現実にはそうはならず、(よほどの特殊能力を有する個人との契約でない限り)企業は個人との業務委託契約を定型約款化し、画一的な条件でフリーランサーと契約しようとするのではと予想します。

いかに厳しい書面化義務を設けようと、契約交渉力については発注者が強い立場であることには変わりがありません。そして発注者としては、書面化(電磁的記録化)義務を果たしつつ、実務負担を極限まで削減するための工夫として、契約条件を約款化して交渉を受け付けないようにするのが常套手段です。企業が労働者に就業規則を閲覧させる義務を負っていても、実態としてその内容の変更希望にいちいち応じる訳ではないのと同じです。

www.cloudsign.jp

6・損害賠償条項についても不安だ【2023/9/3追記】

先日、出版ネッツの、フリーランス新法についてのアンケートに回答しましたが…
忘れていたことが…
それは、損害賠償条項についてです。

keiyaku-watch.jp5に書いたように、フリーランス新法がはじまったら、おそらく企業側が契約書を作って、実質的に「契約条件を約款化して交渉を受け付けないようにする」ことが考えられます。
企業側作成の契約書には、損害賠償条項が入ってくる場合が多いと思います。

一般的に考えれば、あまりに一方的にフリーランス側に責任を押し付けたり、損害賠償額が異常なまでに高い場合、下請法・独占禁止法においては優越的地位の濫用、または民法における公序良俗違反として契約が無効となるように思います。

itbengoshi.com

-独占禁止法、下請法-

やや抽象的な話となるのですが、損害賠償責任を著しく制限する条項、又は損害賠償の予定額・違約金を不当に高額に定めた条項については、優越的地位の濫用に該当するものとして無効と判断される場合があります。

www.ys-law.jp

-民法公序良俗違反)-

これも抽象的な話となるのですが、民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定めています。

例えば、一商品当たりの取引額が数千円程度であるにもかかわらず、当該商品に欠陥が見つかった場合は違約金として1000万円支払うことを定めた条項は、無効となる可能性が高いと考えられます。

www.ys-law.jp

なので、あまり心配しなくて良いと言えばそうなのですが、契約が無効になる可能性があるということを知らず、支払ってしまう人もいるかもと思うのですよね…
そういった前例ができてしまうと、悪徳企業や悪意のある弁護士・法務担当者があえて不当な契約書を作って、不当な請求をするということが発生するように思います。
(悪意なく、やばい契約書を作る人もいますけど…)

既に今の段階でそういった契約書の提示はあり、対策に苦慮しているという話も聞きます。(修正しようにも、法務担当者がいなかったり、いても総務と兼務とかで法律知識が全くない人だったり、窓口担当者が無知すぎて、文字通り話にならないとか…)そういった相手への対応コストも今後かかってくるように思います。

め、めんどくせ〜〜

この「トンデモ契約書&話が通じない法務担当者が増えてる問題」は、そもそも企業法務人材の不足という問題が根本原因としてあるようです。

note.comそんな中、フリーランス新法なんてはじめて、大丈夫なのだろうか?

なんか書いてて暗くなってきましたが、フリーランス新法に対する私の懸念点は、現状では上記のようなものになります。何かのご参考になれば幸いです。

【拡散希望・アンケート】フリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査にご協力を

出版ネッツ(出版系フリーランス労働組合)から、協力依頼が来ましたので
おしらせします。*私は出版ネッツの組合員ではありませんが、知り合いがいます

フリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査にご協力を

2023年4月28日フリーランス新法(正式名:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立しました。公布(5月12日)から1年半以内に施行されますが、施行日までに、指針・政省令を策定することになっています。この法律がより使いやすいものになるように、厚生労働省公正取引委員会に対して要望を出したいと思います。そのためのアンケート調査です。答えられるところだけでかまいません。ご協力をお願いいたします。
****************************************
◆調査対象:出版・Web・印刷・広告・新聞関連で働くフリーランス(兼業・副業を含む)
      出版ネッツ組合員に限らない
◆調査期間:2023年8月10日~8月24日
◆調査方法:インターネット調査
アンケートの回答はこちらから↓

docs.google.com

◆調査主体:ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ

union-nets.org
※注1:フリーランス新法の条文は、以下をご覧ください。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505AC0000000025_20241111_000000000000000


※注2:回答内容は、個人が特定されない形で要望書・資料として厚労省公正取引委員会に提出します。それぞれの省庁の検討会・研究会で共有されたり、HPで公表される可能性がありますので、そのことを念頭においてお答えください。
 
【問い合わせ先】
出版ネッツ総合窓口(トラブル相談):

union-nets.org※メッセージの頭に【フリーランス新法アンケートの件】とお書きください。

フリーランス新法は施行日未定ですが、来年末(2024年末)までには施行される予定となっています。概要は下記記事がわかりやすいかなと思います。

keiyaku-watch.jp

どんどん意見を送って、使いやすい法律にしましょう!



【クリエイターと法律】私は普段どんな方法で知財の学習・情報収集をしているのか

0:知的財産管理技能士会がこんなツイートを

先日、Twitterで、知的財産管理技能士会のアカウントがこんなつぶやきをしていました。

著作権知財)って、どうやって勉強すればいいのか」は、結構、実際にも聞かれるので、せっかくなので、これを機に私の情報収集の方法・学習法をまとめることにしました。
ちなみに私は三級知的財産管理技能士ですが、イラストレーターなので、仕事で関係するのがほぼ著作権領域で、特許・意匠・商標の領域は実務経験が全くありません。
知財の勉強をする上での主な関心領域は著作権・商標・種苗法不正競争防止法と、独占禁止法などの関連法です。
↓こういう仕事をしてます

www.tomokooosuki.com
その点をご留意の上でご参考ください。

1:情報収集編

(1-1)SNS・ブログでフォローすべきアカウントはこれだ!

【総合】パテサロ

twitter.com結局パテサロが、知財系ニュース紹介アカウントとしては一番いいような気がします。

知財実務】友利昴さん(企業の知財法務部勤務)

twitter.com連載もおもしろい。

businessandlaw.jpブログも読者になってます(はてなブログにおけるフォロー)

subarutomori.hatenablog.com友利さんは割と文体にクセが強いので、好き嫌いが分かれるような気もいたしますが
私は好き!!めちゃツボです。

【AIと著作権】柿沼太一先生(弁護士)

この分野は、何と言っても柿沼先生でしょう。

twitter.com

ブログもすごい。

storialaw.jp

著作権全般】福井健策先生(弁護士)

twitter.comこの分野では知らぬ者はいない、福井先生です。
骨董通り法律事務所のコラム・メルマガも勉強になります。

www.kottolaw.com

s.bmb.jp

著作権全般】赤松健先生(漫画家/参議院議員

赤松先生は漫画家ですが、今は政治家でもあるので、政治の話がかなり多くなっていますが、しかし私とは関心領域が近いですので、何かと勉強になります。
著作権以外にもクリエイター関連の問題(「表現の自由」とか、インボイス問題とか)
もキャッチできます。

twitter.com

【商標】岡村太一さん(弁理士

twitter.comツイート全部をしっかり読んでいるわけではないですが
RTが勉強になる場合が多い。
事務所サイトの読み物も勉強になります。

bran-design.jp

【ファッション】海老澤美幸先生(弁護士)

twitter.com

海老澤先生はファッション分野を専門とする弁護士です。
海老澤先生はなんと旧自治省のキャリア官僚から宝島社のファッション誌編集者に転職し、その後イギリスに留学しファッションスタイリストとして働いたあと弁護士になった というキャリアの方です。
ですので、実務に即した説明が大変わかりやすいです。
ファッション分野は意匠・商標・著作権などかなり広範囲の知財が関係しますし、海老澤先生はかなりツイッター上の話題に敏感なので、かなり勉強になります。

mktlaw.jpWEBメディアも運営されており、こちらも勉強になります。

magbyfashionlaw.tokyo

【知的財産法全般】長塚真琴先生&一橋大学法学部:長塚ゼミ

世田谷区史編纂問題で知り合った、一橋大学法学部の長塚真琴先生のアカウントと、
長塚ゼミのアカウントをフォローしています。

twitter.com

twitter.com

著作権著作権ニュース

twitter.comこれは著作権限定ですが、Twitter炎上など話題ネタはカバーしている感。

(1-2)Yuroocle(ゆるーくる)

「Yuroocle」(ゆるーくる)は知的財産権に関する情報を発信するグループです。
これには私も参加しています。

yuroocle.notion.site
こちらに、加盟者が発信している情報のデータベースもあります。

yuroocle.notion.siteが、データベースの更新は最近されていないので、分類前のRSSリーダを読んだりしています。

pug-refusal.com

(1-3)月刊著作権専門情報誌『コピライト』

東京にいたときは『コピライト』(著作権情報センター)をたまに国会図書館で読んでいました。

www.cric.or.jp

今は神戸に住んでおり、『コピライト』は神戸大の図書館にあるみたいなので、そのうち行ってみようと思っております。

op.lib.kobe-u.ac.jp

今は目次だけネットで読んで、国会図書館の遠隔複写で気になる記事だけ取り寄せています。

www.ndl.go.jp

(1-4)知的財産管理技能士会メルマガもチェック!

知財技能士資格を得ると、自動的に送られてきます。
入会してなくても、知財技能士なら、未入会者向けのメルマガは読めます。
ザックリしたトレンド(?)を把握するために、一応毎週読んでいます。
ちなみに、私はこのメルマガに2回掲載してもらったことがあります。

https://www.ip-ginoushikai.org/newsletter

2:学習編

(2-1)とりあえず知的財産管理技能士検定を受験!

なんだかんだ言って、資格試験の勉強するのが、基礎用語や「前提」を覚えるには、一番いい気がします。
ビジネス著作権検定より知財検定のほうが広く浅いので、最初に「知財」の領域をザックリ学ぶなら、知財検定のほうが良いんじゃないかと私は思います。
著作権と商標権をごっちゃにしてる人が、最近多いように感じるのですよね。

petitmatch.hatenablog.com将来的には二級まで取りたいところですが、今のところ勉強はお休みしています…

(2-2)余力があればビジネス著作権検定も受験!

私はビジネス著作権検定の上級に今まで2回落ちてます…そして今は受験勉強はしていません。

petitmatch.hatenablog.comが、しかしビジネス著作権検定の勉強をしなければ、上記の長塚先生とお話する機会はなかったと思うので、勉強はしてよかったと思っています。

長塚先生がビジネス著作権検定の検定委員であることを知らず、思いがけず思いっきりdisってしまいましたが、無事に著作者人格権の扱いについての記載は改訂されました。やったね

(2-3)本を読む!

おすすめ本は『イラストレーション』の記事に書きましたので、そちらをご参照ください。

petitmatch.hatenablog.com上記の号の発売後、読んで良かった本は以下です。

 

読む本は、「1:情報収集編」で紹介した情報源から情報を収集して決めています。

(2-4)セミナーやイベントに参加することも

ここ1年で参加したのは、下記のセミナーです。

jilla.or.jp

www.jagda.or.jp

prtimes.jp

anchorkobe.com
ここ1年で、自分が話す側になったイベントも2件あり、次項に書きました。

(2-5)情報は発信するところに集まる!仲間内での相談・噂話の収集も侮れない!

知的財産管理技能士の資格を取ってから、イラストレーター仲間や知人から、著作権や契約について質問を受ける事が増えました。他の人の質問に回答する際には、必ず本などで調べ直すので、それが復習の機会になっています。
あと知人からの相談&噂話で、やはりザックリしたトレンドというか、流れみたいなのがわかる気がします。

また、昨年『イラストレーション』で「著作権と契約」の記事を作らせてもらったことは、とても勉強になりました。

petitmatch.hatenablog.com

これで勉強会・シンポジウムへの登壇の話が来るようになりました。

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com知らない人向けに話すために、他の方のセミナーを見て勉強するようになりました。知識を得るためだけでなく、「どういう説明をしたら相手に伝わりやすいのか」をしっかり聞くようになったので、話を聞くときの『感度』が上がった気がします。

上記の『イラストレーション』の記事は自分で企画・編集協力を行いましたが、そこまで深く企画に関わらなくても、弁護士さんの監修が入る法律関連記事は、取材に回答するだけでも、かなり勉強になります。取材を受けて、記事作成の中で弁護士さんとやり取りさせてもらったのは『アサヒカメラ』で経験があります。

petitmatch.hatenablog.com

3:実務編

(3-1)結局、著作権に関しては「著作権テレホンガイド」が最強な気がする

仕事をしていて、ふとした疑問が浮かんだら、著作権テレホンガイドにすぐに電話して聞くようにしています。

www.cric.or.jp

文化庁に、下記のリストもありました。

www.bunka.go.jp

(3-2)実際の契約に関しては民法・下請法・独占禁止法などの勉強も欠かせない!

実際に、知的財産権に関する契約をする際には、知的財産に関する法律だけでなく、他の法律も関わってきます。ですので、フリーランスの契約に関する法律もチェックしています。

www.mhlw.go.jpフリーランス新法もチェックしています。

www.jftc.go.jp具体的に言うと、上記パンフレットの「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要版)」「コンテンツ取引と下請法」あたりを読んでいます。


色々勉強していたら、結局民法がすべての基礎なような気がしてきて、ビジネス法務検定を取ったほうがいいんじゃないかな?という気もしてきました。まだ何もしてませんが…

kentei.tokyo-cci.or.jp

(3-3)INPIT、弁護士相談も

先日、急ぐわけではないが、弁護士に聞いたほうがいいなと思うようなことがあったので、初めてINPIT(知財総合支援窓口)に相談して、弁護士無料相談を予約しました。
急がない質問であれば、INPIT経由で予約すると無料なので…
あと、INPITだと、INPITの相談員さんの意見も聞けるので、複数の人の意見を聞いてみたいときには、INPITは良いなと思いました。

chizai-portal.inpit.go.jp
直接、自分が知っている弁護士さんに相談することもあります。

alcien.jp

sprout4.com
こんな感じかな?
つらつら書いてみると、結構たくさん情報収集&学習していました。
何かのご参考になれば幸いです。

【ありがとうございました】シンポジウム「歴史研究と著作権法―世田谷区史編纂問題から考える―」まとめ

緊急シンポジウム「歴史研究と著作権法」

緊急シンポジウム「歴史研究と著作権法

先日、シンポジウム「歴史研究と著作権法―世田谷区史編纂問題から考える―」が行われました。
主催は青山学院大学文学部准教授の、谷口雄太先生(世田谷区史編纂問題の当事者・被害者)です。谷口先生はかつて世田谷区を治めていた吉良氏という武家を専門に研究している、日本で唯一の方です。研究内容については下記記事がわかりやすいです。
実は世田谷にも世田谷城というお城があったらしい。へえ〜!

dailyportalz.jp

dailyportalz.jp
私はこちらの第二部で、イラストレーター(フリーランス)としての経験から、私が知るところの、イラストレーションの仕事における著作権著作者人格権の扱いの現状や、私が感じていること、僭越ながら歴史業界へのご提案などについて、お話させていただきました。

petitmatch.hatenablog.com

具体的には、このブログで過去に書いてる著作権の基礎的なことを、世田谷区史編纂問題と絡めて話しました。

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com

そもそも世田谷区史編纂問題とは?

かなりザックリ言うと、世田谷区が、世田谷区の歴史を書籍としてまとめるにあたり、研究者や専門家に対して、著作権譲渡&著作者人格権不行使特約を強要しているという問題です。今までの流れは下記記事にまとめています。

petitmatch.hatenablog.com

私は、事前資料として世田谷区と歴史学研究会に取材し、下記の記事を作りました。

petitmatch.hatenablog.com

登壇者のツイートまとめ

第一部登壇者・長塚真琴さん(一橋大学教授)

【オオスキの感想】第一部・長塚真琴さん(一橋大学教授)のお話

長塚先生のお話の内容は、想像以上にアカデミックなもので、非常に知的刺激を受けました。
私は自分なりに著作権法などの知的財産法、フリーランス契約関連法を勉強する中で、なんとなくですが著作権法の前に、民法を勉強したほうが良いんでは…と思っていたのですが、ますますその気持ちが高まりました。ビジネス著作権検定の前に、ビジネス実務法務検定試験を受けた方が良いかもしれないと思いました。

著作者人格権大陸法、特にフランス法に由来しており、フランスでは1957年に法で条文化されたということです。
しかしその当時21世紀になってから、著作者人格権はロマンティシズム(ロマン主義、かなりザックリ言うと個人の感性を尊重するという考え方)の現れであると攻撃されたそうです。(2023/7/24 一部修正しました)

ちなみに「レ・ミゼラブル」で有名な文豪、ヴィクトル・ユゴーが、国際著作権法学会の創設者であったという小ネタを教えていただき、ロマン主義とここでつながるんかと、驚きました。

www.alai.jp
また「不行使契約」の意味は人によって違い、問題となるのは「包括的」不行使特約であるというお話があり、たしかに「著作権譲渡」でも同様の問題があるなと思いました。
私の経験では、著作権譲渡を言ってくるクライアントは、セットで著作者人格権不行使も言ってきますが、大抵の場合は、そもそも根本的に「著作権」自体の言葉の定義や、理解が曖昧なようでした。
下記記事の有料部分でも少し書いていますが、私の場合、説明すると100%著作権譲渡・著作者人格権不行使の条件はなくなり、現状、使用許諾&著作者人格権も行使できる状態で仕事ができています。

petitmatch.hatenablog.com

今後は、そういった相手に対しては、「著作権」だけでなく、「著作者人格権」についても、丁寧な説明を心がけたいと思いました。
「相手の仕事を尊重して、慎重に丁寧なコミュニケーションを積み重ねて交渉することが大切」という長塚先生の言葉を心に刻んで仕事をしたいと思いました。

【オオスキの感想】第一部・石原俊さん(明治学院大学教授)のお話

石原先生による、大学の研究環境の実情は、私にとっては結構衝撃的なものでした。
歴史業界(歴史研究者業界?)というのは、「暗黙の了解」によって成立していた部分がかなり大きいということです。
谷口先生からお話を聞いた限りでは、著作権法を知らなくても、今まで特に何も問題が起きなかったのは、「学術倫理」は著作権法とは微妙にズレがあるが、「法律」よりも厳しいから ということでした。
しかし石原先生のお話によれば、その「研究倫理(学術倫理)」はここ10年くらいでできたもので、しかも大学ごとにルールを決めているということなのです。

私の印象では、歴史研究者の世界というのは、相当ローカルルールが支配する世界な上に、かつ「暗黙の了解」という明文化されないルールというか、「雰囲気」で仕事するような世界のようで、かなりショックを受けました。
しかし同時に、「学問の自由」や大学自治が、そういったローカルルール、法の介入がないことによって担保されていた部分もあるのだろうと感じました。それは、私が東大駒場寮の取材をしている中で感じていたことです。

danro.bar

石原先生の「氏名表示のもとに責任をとらせてくれ!」という言葉は重く、また著作者人格権は大学研究者のみならず、私も含め「自分の名前で仕事を取る人・仕事をする人」に共通する大切な権利なのだなと、改めて認識を深めました。

しかし、今の時代は、歴史研究者も、基礎的な著作権法や、フリーランスとして働く場合に関係する法律は知っておいたほうが良いのでは…と思いました。

第二部登壇者・石川昌義さん(日本マスコミ文化情報労組会議〈MIC〉議長)

【オオスキの感想】第二部・宮瀧交二さん(大東文化大学教授)のお話

自治体史の編纂に関わる歴史研究者が、どういった事を考えて執筆・編纂を行っているのか」というお話で、全然知らなかったので、とてもためになりました。
平易な記述で、特定の学説のみに立脚した記述にとどまらず、市民の地域史学習が広がるように配慮しているということです。
一般の方に、こういう話をもっとしていったほうが、世田谷区史編纂問題の問題点がわかりやすく伝わるのではないかなと思いました。

【オオスキの感想】第二部・木下光生さん(奈良歴史研究会事務局長)のお話

自治体史は出版費用は自治体が出すけれども、個人責任があるという特殊な媒体である。項単位で名前が出るし、個人の研究成果として扱われる。
自治体史は研究者の食い扶持になっている。
→本来的には研究者一丸となって行政の理不尽に対抗すべきところ、大学院生やポスドクなどの弱い立場にある研究者は経済的理由や人間関係等から、抵抗できない。
このような分断を生み出すことの深刻さを、世田谷区はよく考えるべきである!

というような、自治体史とは歴史研究者にとってどういうものかという背景事情がよくわかるアツいお話でした。

【オオスキの感想】第二部・中脇聖さん(流山市史編纂問題当事者)のお話

中脇さんは、「流山市史編纂問題」の当事者(被害者)です。
流山市史編纂問題」とは、2005年に起きた事件で、2017年に谷口先生が世田谷区から受けた被害と同様、執筆者に断りなく原稿の改ざんが行われたという問題です。
執筆者が抗議し、修正・再販を求めて裁判に発展し、流山市は敗訴しています。

そういう問題があったことは知っていたのですが、2001年にも同様の問題があり、しかもそのときには原稿料の未払いもあったという話は、全く知りませんでした。
他、歴史業界の「人間関係で仕事が決まってしまう」という事情が、こういった事件の原因となってしまうのかなと思いました。

*以下は参考資料です。

https://7net.omni7.jp/detail/1102573720
本書のサブタイトル「『流山市史通史編』原著全五章」とは本来、市の教育委員会が出した『流山市史通史編』の中にそっくり納められるべきものだったことを意味している。それが執筆者に何の断りもせず「2328ヵ所」(朝日新聞)もの改ざんを施して、『市史』として発行されてしまったのである。その後著者は『流山市史通史編』から、執筆者としての名前の削除を求めた。本書は歴史家としての良心から、著者が自費を投じて出版した著である。

平成30年度 第1回 四街道市史編さん委員会会議録(P9)
林委員:流山市でしょうか、市史の原稿を改ざんしたという。あのようなことにならないように検討いただけたらと思います。書いた人が自費で出しているそうですが。

https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/shisei/shingikai/kaigi_kekka/h30nendokaigikekka/ysomu20180608.files/kaigiroku.pdf

第二部・オオスキトモコ(イラストレーター)の話

私です。下記のスライドを読みました。

 

↓スライドのダウンロードはこちらから

www.slideshare.net↓その後、「ビジネス著作権検定公式テキスト」の著作者人格権についての記載変更などの情報はこちら

petitmatch.hatenablog.com

【オオスキの感想】第二部・石川昌義さん(日本マスコミ文化情報労組会議〈MIC〉議長)のお話

石川さんは中国新聞の記者です。「新聞記者が自治体史を結構仕事で使っている」というのは、初めて知りました。
あと、どなたの発言か忘れましたが、そもそも今、自治体史を作れる予算がある自治体は少ないそうです。
東京は実はニュース砂漠と言われており、区政については地方紙よりもきちんとした取材ができていないと言われています。

webronza.asahi.comこの状態でさらに、自治体史が信頼できないものになってしまったら、東京の歴史はどうやって残すのかと、不安になりました。

【オオスキの感想】第二部・杉村和美さん(出版ネッツトラブル対策チーム責任者)のお話

「世田谷区史編纂問題についての出版ネッツの取り組み」についての説明がありました。
「問題の社会化を」というのは、本当そうしたほうがいいなと思いました。
これは、谷口先生だけの問題ではないと思うからです。
また、これから取り組みたいこととして、「『著作者人格権の不行使』ではなく『著作者人格権の尊重』を入れた契約書ひな型を作成し、それを普及させる」というのは、素晴らしいと思いました。

まとめ

最後の挨拶、

石原先生:「美術館・博物館自治は弱っている。表現の自由自治のために、業界を超えて連帯!」

長塚先生:「相手のメンツを潰さないようにうまくやる!着地点をみつける。谷口先生の書いたものを読みたいという点で、まとまれるのでは。」

という言葉が心に残りました。

参加者の感想

ameblo.jp

ありがとうございました!
今後良い方向に進むように、私もできることはやっていきたいと思います。
今後も、御所巻ブログでこの件についてチェックしましょう!

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com

出版ネッツによるまとめ(2023/7/28追記)

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com