TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【読書記録】友利昴『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)

友利昴『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)

友利昴『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター

友利昴『職場の著作権対応100の法則』読んだ。

友利さんは一級知的財産管理技能士(コンテンツ/ブランド)で、企業の法務・知財部門で働きながら、いろいろ本を書いている方です。
この本はタイトル通りで、職場における著作権対応について書かれた本です。Q&Aが100個載っています。
この本、非常に良い本です。

何がいいかというと、「厳密に言うと著作権ではないが、世間一般の人が『著作権』だと思っていることへの対応」についても書いてある点です。

私は三級知的財産管理技能士の資格を持っており、知的財産権著作権 ではないことを知っています。
しかしTwitterとかを見ていると、どうも世の中の人は「それ商標権の話でしょ?」「それはパブリシティ権・肖像権の話では?」みたいなこともごっちゃにして「著作権」と言っているのである。
この本は、「著作権対応」と謳いつつ、そういった「世間的に『著作権』と言われがち」な商標権や他の知的財産権周りのことにも言及している点が素晴らしいと思う。
圧倒的実用性である。さすが友利さんである。

友利さんの本を私が初めて読んだのは『エセ著作権事件簿』でした。

これは良いなと思って、昨年『イラストレーション』で「著作権と契約」の記事を作った際に、記事内で紹介させていただきました。

しかし『エセ著作権事件簿』は面白いんだけど、友利さんの個性的な文体(ネット煽り文体ぽい)がちょっと出すぎている。私はめちゃツボなのでページをめくるごとに爆笑しながら読んだのだが、そういうのが苦手なビジネスパーソンも多いと思う。

この本は版元が日本能率協会マネジメントセンターであることもあってか、文体も落ち着いていて、多くの方に読みやすい本になっていると思います。法律書としては価格もお手頃なので(税込1815円)、ビジネスパーソンが手元に1冊置いておく本としては、かなり良いんじゃないでしょうか。

あとイラストレーターとしてはP154-155「067 成果物がクライアントに改変されたら?」の項で、著作者人格権不行使特約について、「イラストやコラム記事など、著作者の個性やこだわりが現れやすいタイプの著作物は、不行使同意は避けた方が良い」と明言されているところがありがたい。あと、応じても問題が起こりにくい場合、応じる場合の交換条件の提示もされてて素晴らしい。

安易な著作者人格権不行使特約が蔓延する昨今ですが、友利さんの本は法務・知財担当者も読むと思うので、企業側担当者が読むような本でこういった記載をしていただけるというのは、本当ありがたいと思いました。