TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【フリーランス新法】公取委「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」と、当事者団体ヒアリングまとめ

そもそもフリーランス新法とは?

フリーランス新法とは、正確には「「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」という法律です。
要するにフリーランスに関する取引を適正化し、就業環境を整えようという法律です。
↓このリーフレットがわかりやすいかも

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf リーフレット

https://www.jftc.go.jp/file/flreaflet.pdf

今年5月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。
法は、「公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行すること」とされているので、つまり来年秋には施行されます。

個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際に、

・取引条件の明示
・給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払
・ハラスメント対策のための体制整備

等が義務付けられることとなります。
↓詳しくは

www.mhlw.go.jp

現在、公正取引委員会で、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」というのが行われています。これはいわゆる「フリーランス新法」についての検討会です。
今後、月1程度のペースで開催されるようです。

www.jftc.go.jp

www.jftc.go.jp

また、2023/9/11から、厚生労働省で「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」が行われているようです。

www.mhlw.go.jp
同時に、フリーランス当事者団体に対してはヒアリングが行われているようです。

この記事では、公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」と、厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」、及び当事者団体ヒアリングについて、情報が入り次第、記載していきます。

第1回(令和5年8月3日)

第一回はあんまり深い検討はされてないみたいですが、個人的に気になった部分は以下です。

www.jftc.go.jp

議事要旨

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi1.pdf

報酬自体ではないものの、一定の場合に違約金や罰金を請求するという事項については、受け取る金銭に関係するため、明示しなければならない事項に入れるべきではないかと考えている。
本法第5条の報酬未払いに関して、違約金や罰金の定め自体は無効であるわけではないため、民法上有効な相殺の場合にそれを報酬未払いであるという扱いができるのかについては、検討の必要があると考えている。

→(オオスキの感想)どういう議論があったのか、どういう文脈でこういった話が出てきたのか資料を読んだ限りでは不明ですが、なんか不穏というか殺伐としてんなと思いました…
私は約20年フリーで仕事していますが、一度も報酬未払いの経験がないので、わからないところがあるのかもしれません…

○ 本法第3条及び第5条は下請法に類似する部分も多いが、下請法のように資本金要件等がないことから、本法は下請法よりもその適用範囲がかなり広いという特徴もある。下請法と本法のいずれも適用可能である場面が少なからず想定できるが、例えば下請法よりも本法が適用された方が発注事業者にとって有利な内容・条件で取引がしやすいなど、本法が選択されてしまうような規律の内容になることは発注事業者及びフリーランス双方にとって決して望ましいことではない。政令や規則に定める内容次第では発注事業者やフリーランスにとって選択的に有利・不利になるようなことも生じ得るため、その大きな枠組みを一度見据えた上で、発注事業者と受注者それぞれにとってフェアであり、また取引の適正化に資するものを考えていきたい。

→(オオスキの感想)確かに「下請法と本法のいずれも適用可能である場面」ではどちらが適用されるのか?というのは気になります。そもそも下請法が適用されなくても、現状「すべての取引」で独占禁止法は適用されるので、独占禁止法との関係も気になるところです。

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要

https://www.jftc.go.jp/file/2_fl_law_gaiyou.pdf

P18
違反行為を受けた特定受託事業者は、フリーランス・トラブル110番を経由するなどして、公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に今後設置する窓口に申告できる。

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要 P18

【資料2】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要 P18

→(オオスキの感想)これは公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に、新たにフリーランス用の申告窓口ができるということなのでしょうか?

【2023/9/5追記】「経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室(仮称)」が新設される?

ソース:(令和5年8月31日)公正取引委員会の令和6年度概算要求について

www.jftc.go.jp

<機構・定員>

 ○機構:官房審議官(取引適正化担当)の新設、経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室(仮称)の新設、官房総務課広報・広聴室(仮称)の新設、官房人事課企画官(人材戦略担当)の新設
 ○定員:増員20名 

これが「公正取引委員会中小企業庁厚生労働省に今後設置する窓口」の中の1つなのでしょうか?今後、チェックしていきたいと思います。

公取委による当事者団体・当事者に対するヒアリング

JILLA(8/2)

8月2日(水)、「フリーランス新法」に関するヒアリングのため公正取引委員会へ伺いました。(出席者:日本イラストレーション協会 代表理事 誉田、副理事長 竹本・横山、事務局次長 鈴木)
ヒアリングでは、公正取引委員会のほか、内閣官房文化庁の担当官の方も臨席され、2時間半にわたり、業界の実情を率直にお伝えして参りました。
(中略)
また、フリーランス新法には直接は関与しませんが、クリエイターが不安に思っていることの1つとして、【結果報告】インボイス導入についてのアンケートにて公開しております調査資料を提出し、現場の懸念もお伝えして参りました。

jilla.or.jp

jilla.or.jp↑「【結果報告】インボイス導入についてのアンケート」というのはこれですね
JILLA、なんていい人たちなのか。
しかも「公正取引委員会のほか、内閣官房文化庁の担当官の方も臨席」というのは、もしかして、「文化芸術分野の契約等に関する相談窓口」も関係してくるのだろうか。

petitmatch.hatenablog.com
フリーランス関係の施策って、今まで、内閣官房を中心に、公正取引委員会経済産業省中小企業庁厚生労働省が担当だったんですよね。

www.mhlw.go.jpなので「文化庁担当者が臨席」というのは、気になります。

日本音楽家ユニオン(8/22・9/7)

日本音楽家ユニオンも8/22にヒアリングを受けたようです。(文化庁はいない?)

日本音楽家ユニオンは9/7に、さらに文化庁担当者も含めてヒアリングを受けたようです。(2回目のヒアリングは公正取引委員会厚労省文化庁?)

出版ネッツ(8/31)

union-nets.orgフリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査結果」できました! 

8月31日には出版ネッツも、厚生労働省公正取引委員会等からヒヤリングを受けました。私たちはこのアンケート調査結果をもとに、出版・WEB関連で働くフリーランスの実態と声を省庁に伝えました。

フリーランス新法・指針等の策定に向けたアンケート調査結果」はこちら
https://union-nets.org/wp-content/uploads/2023/10/5a05639e6b3ccc19c036893cd73e98a0.pdf

私はこのアンケートに回答したところ、出版ネッツから追加で質問が来たため、
さらに回答しました。出版ネッツさんからヒアリングを受け、それが公取委厚生労働省に伝わった形だと認識しています。
私は常日頃から公取委にも厚生労働省にも、思いついたら意見を送るようにしていますが…まとまった形にして提出してくれた出版ネッツさんには、とても感謝しています。

第2回(令和5年9月8日)*2023/10/27追記

www.jftc.go.jp

第2回     令和5年9月8日     

各団体からのヒアリング
(1) 一般社団法人日本アニメーター・演出協会
(2) 協同組合日本イラストレーション協会
(3) 全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会

この日は、各団体からのヒアリングが行われたようです。
個人的に気になったのは、議事要旨の中の
(3)協同組合日本イラストレーション協会からのヒアリング の部分です。

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi2.pdf
「一方的ではなく双方協議により成立させる意識の徹底をお願いしたい。」(資料2の①)というのが最もお伝えしたい部分である。というのも、トラブルになっているケースというのは、契約内容をよく分かっていないクリエーターであるとか、あるいは、発注側が過剰にクリエーターの権利を縛り過ぎて起こっているケースが非常に多い。例えば、著作者人格権の行使について放棄を求める契約書は非常に多い。著作者人格権を行使されると後々企業側にビジネス上の不利益があるケースもあるため、縛りをかけたい気持ちは分かるが、守秘義務契約等を交わした上で行っている案件も多いにもかかわらずプラスアルファで著作者人格権の放棄を求めているケースが非常に多い。確かにそれ自体はトラブルにはならないが、例えば自分が作ったということを作者が発表することが許されないケースなどトラブルの温床になっているケースが散見される。

とありますが、この文章には2点の疑問があります。

著作者人格権は、著作者に帰属するものであり、「放棄」はできません。(著作権法第59条)できるとすれば「著作者人格権の不行使」です。

sendai-c3.jp

また、実績公開と著作者人格権不行使は、本来的には別の話です。
守秘義務と実績公開は関係がありますが…
公取委の人の理解が間違っているのか、協同組合日本イラストレーション協会の方がそもそも勘違いしているのか、わかりませんが…
しかし、イラストレーターで「著作者人格権不行使特約を結ぶと実績公開ができなくなる」という勘違いをしている人はTwitter等ではちらほら見かけるので、この点について、著作権法上での解説記事を後日書こうかなと思いました。
公取委にも近日中に、意見を送ってみようと思います。

(2023/12/1追記)JILLAに上記の疑問点について質問したところ、回答がありました。

協同組合日本イラストレーション協会(JILLA)に、上記の疑問点について質問してみました。かなり丁寧に解説いただき、よく理解できました。ありがとうございました。

jilla.or.jp

第3回(令和5年9月26日)*2023/11/9追記

11/8に第4回・第5回の資料まで更新されており、第3回の議事要旨まで確認しました。

一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク、日本脚本家連盟の資料を見て、やはりクリエイティブ系は問題となる点が似ているし、やはり同じところで引っかかるんだなあと思いました。ヒアリングの対象団体がちょっと少ないんじゃないかと思ったりはしましたが…

www.jftc.go.jp

令和5年9月26日
各団体からのヒアリング
(1)全国建設労働組合総連合
(2)一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会
(3)一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク

この日も、各団体からのヒアリングが行われたようです。

イラストレーターに近しい働き方のフリーランスの団体としては、
一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf
かなと思い、こちらの資料を興味深く読みました。

舞台芸術産業の特質:
・クリエイティブ業務を中心に、人選は極めて属人的(例:相見積もりで作家やデザイナーが変わるなどは想定しがたい)。

・公演の最終成果物は多数者の共同創作の過程で不断に変化を続け、その評価が関係者の将来に直結するため、ゴールが変わるのは日常茶飯事であり、事前に業務内容を固定することは受発注双方ともに困難であるケースも多い。

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これはイラストも割とこういう性質があると思います。

聴き取りに基づくフリーランス契約の傾向:
・大・中規模事業者では(そもそも下請法の経験もあり)基本契約書+個別発注の形も少なくないと思われるが、大多数を占める小規模事業者では業務進行と並行して相互にメールで条件を出し合い、請求書と領収書で終了というケースが多数であろうと推測する。

・委託期間は数日程度から2年まで、多岐にわたる。
https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これもイラストも割とこういう性質があると思います。
私は取引先は大手がほとんどということもあり、特に近年は下請法に従う形で仕事をすることが多かったですが、そうでない会社も多いと思います。

ヒアリング事項への回答・要望など:
業務委託の際の明示義務の範囲(給付の内容、報酬の額「等」の規則委任):
・前述の通り、多くのフリーランス・個人会社が保護対象になると共に、発注側として義務を負うことにもなる。非法人の小規模団体も多い。
・制度の認知は全く進んでおらず、契約書の習慣・習熟度も総じて低く、混乱が危惧される。
・また、クリエイティブ作業はゴールを共に作り上げて行く非定型業務が多く、「約款」での一律規制も望ましいとは限らない/容易ではない。
・実態に基づいて無理がなく、かつわかりやすいシンプルな記載事項のルール化が望まれる。
・また、明示方法としては実態を反映して幅広いツールを認めて頂くことが望ましい。

その他の要望:
前述した理由により、下記のような行政のサポートが必須となると考える。
・制度のわかりやすい周知、特にクリエイティブ業務において当初において決めがたい部分の現実的な運用
・知りたいと思った時に行政の信頼できる、デザイン的にもわかりやすい情報にアクセスできること
・気軽に相談できる相談窓口(電話・チャット)の整備 など

https://www.jftc.go.jp/file/3_jpasn_siryou_.pdf

→これも、イラストレーションの仕事も同様と思いました。気軽に相談できる相談窓口、電話・チャットがあると、かなり良いなと思いました。というか、そういうのがないと、このままフリーランス新法が施行されても、確実に混乱すると思います。

相談窓口としては「フリーランス・トラブル110番」が既にあると考える方もいるかもしれません。しかし、私が実際に契約についての問題について相談したところ、あくまでここは「トラブル」の相談窓口で、契約の「交渉術」については対象外と言われたことがあります。私は契約の過程でハラスメントを受けたという認識で、「トラブル」という認識だったので、相談したのですが…
そもそもフリーランストラブル110番は、企業側有利にものを考える弁護士が多く、受注者側に親身になってくれる感じが全くないという評判をよく聞きます。
実際、私も複数回相談していますが、かなりゲンナリする対応を受ける場合が9割です。


本来的には、トラブル予防のために契約書の作成をするのですから、「契約前」の段階で「気軽に」相談できるようにすべきと考えます。

(3)一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワークからのヒアリング

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi3.pdf

(小規模事業者のために事業者団体等がひな形を提示すれば、より明確な契約が進むと思うかとの委員からの質問に対し、)ひな形があれば参考として役に立つ場合もあると思うが、ひな形を示したとしても無数にある契約タイプの一部を示したに過ぎず、どのような場合でも通用するようなひな形を示すことは不可能である。そのため、小規模事業者からの個別の相談に応じてサポートできる体制も重要であると思う。

→この指摘はもっともで、個別の契約をサポートできるような体制が必要であると考えます。現状、文化庁の契約相談窓口は常設でもなく、相談しても「10日以内に回答」と、「実務」ではとても使えないものです。

petitmatch.hatenablog.com
著作権情報センターの電話窓口のように、少なくとも平日数時間は電話相談、即時の相談ができるような「常設窓口」がない限り、受注者側が圧倒的に不利になってしまうように思います。

第4回(令和5年10月2日)*2023/11/9追記

www.jftc.go.jp

令和5年10月2日     

各団体からのヒアリング
(1)一般社団法人ITフリーランス支援機構
(2)特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会
(3)協同組合日本脚本家連盟

この日も、各団体からのヒアリングが行われたようです。

私としては、協同組合日本脚本家連盟の資料が興味深かったです。
脚本家の仕事は、私のようなイラストレーターの仕事と仕事の構造や流れが近いのかなと感じました。

https://www.jftc.go.jp/file/3_writersguild_siryou.pdf

Ⅲ. 政令・規則で定めるべき事項についてⅢ. 政令・規則で定めるべき事項について

・「業務委託の期間(政令で定める期間以上の期間)」については、作品によっては単発・短期間で業務が完了する場合があるので下請法同様、不要だと考える

→これは私もそう思います。下記の「適用法の明確性」にも関連しますが、下請法に準ずる形(下請法にあわせる形)が良いのではないかと考えます。

Ⅳ. その他

・下請法とフリーランス新法について、発注者が有利になるような選択ができないように適用法の明確性が必要

著作権法には、著作者人格権として同一性保持権(無断で著作物を改変されない権利)が規定されているが、無断で脚本を改変されたり、著作者人格権を行使しないことを約束させられたりするケースがある
・動画配信サービス事業者等が、脚本家に脚本執筆を委嘱する際、安価な脚本料と引き換えに著作権の買い取り(バイアウト)を迫る事例が頻発している

→これはイラストレーターでも起きている事例だと思います。

・事業者が日脚連入会希望者に対して圧力をかけて加入を阻止することが後を絶たない
・日脚連会員への脚本執筆の委嘱を避けることや、今後は日脚連会員に発注しないとの事業者の言動は日常茶飯である

→これはイラストの業界では聞いたことないので、逆に日脚連が業界において広く認知されているということの現れだと感じました。

議事要旨はまだUPされていないので、読み次第、また更新します。

議事要旨まで確認(2023/11/16)

https://www.jftc.go.jp/file/fl_gijiyoshi4.pdf

こちらも(3)協同組合日本脚本家連盟からのヒアリングが、イラストレーターの仕事実態と近しいものがあるかなと感じました。
つまり、そこまで最初はガチガチに書面で決めないし、下請法適用企業でも下請法に準ずるような契約の運用はされていないが、何か問題があった場合には話し合いが行われているため、意外と問題にならない(なんとなくの業界ルールが決まっている)ということです。
脚本家連盟でも問題になっているのは外資系企業からの買いたたきのようですが、イラストレーションの仕事でも、問題が起きるのは既存のメディア企業ではなく、近年になってイラストの発注をはじめた企業が主であるように、私個人としては感じています。

第5回(令和5年10月30日)*2023/12/27追記

www.jftc.go.jp

第5回の議事要旨まで確認しました。今回は

1・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間(法第5条第1項柱書)について
2・「契約の更新」(法第5条第1項柱書)について
3・業務委託した際に明示しなければならない事項(法第3条第1項)等について

を主に議論したようです。

私としては下記の部分が気になるポイントでした。

1・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間を1ヶ月にするのか、それ以上にするのか?
2・契約の「空白期間」と「契約の同一性」をどう考えるか
3・業務委託した際に明示しなければならない事項(法第3条第1項)等について、氏名や住所は必須にするのか否か?知的財産権の扱いは必須にするのか否か?

現在公開されている第6回の資料
特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会報告書(たたき台)

https://www.jftc.go.jp/file/01_fl_report_draft.pdf
を読む限りでは、

・禁止事項の規制対象となる業務委託の期間は1ヶ月となる方向
・イラストレーションの仕事のような著作物制作の業務の場合、知的財産権の扱いの明示は必須事項となる方向。氏名は「何らかの名称そのもの」は必須となる方向

なのかなと思いました。

第6回(令和5年11月14日)*2024/1/25追記

www.jftc.go.jp

第6回の議事要旨まで確認しました。まさに↑で気になっていた、

(1)「2 業務委託事業者及び特定受託事業者の名称」について
(2)「3 知的財産権の帰属」について

が議論されていました。

あとは
(3)「5 交通費、宿泊費、材料費等の諸経費」について
(4)「6 違約金・罰金」について

が個人的に気になるところでした。

第7回(令和5年12月12日)*2024/2/5追記

www.jftc.go.jp

第7回の議事要旨まで確認しました。
今回の議題は、検討会報告書(案)についてです。これで、この検討会は終了です。
全体に問題はないのではないかと思いました。
フリーランス新法の施行日は、2024年11月1日になりそうな感じでしょうか?

「第5 おわりに」には、何かあれば見直しすべき旨も記載すべきではないか。

というのも心強い。
電子帳簿保存法のように、実態に合わせて、アップデートされるべきでしょう。

「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」報告書が公表(令和6年1月19日)*2024/1/25追記

なんと第7回の議事要旨より前に、報告書が公表されていました。

www.jftc.go.jp

【気になった点】フリーランス協会の平田代表、フリーランスの個人情報への配慮」を謳いながら、請求時に本名が開示される「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」の問題点についてはなぜかスルー

この検討会の議事要旨は、発言者が特定されない形で公表される形となっています。
フリーランス協会のWEBサイトで、代表理事の平田氏が、この報告書と、検討会での自身の言及部分について説明していましたので、不審な点がないかチェックしてみました。やはり1点、気になることがありました。

blog.freelance-jp.org

各論点においてどんな話があったのか、フリーランス的に気になるポイントに絞って簡単にシェアします。

・「取引条件明示」でどんな事項を明示義務とするか?

法律の条文に明記されていたのは、「給付の内容(委託する業務の内容)、報酬の額、支払期日等」です。この「等」に何を含めるのか、を決める必要がありました。

特に議論が分かれたポイントは、①お互いの名称(本名)や住所、②諸経費の取扱い、③知的財産権の帰属、④違約金・罰金を明示義務の対象とするかどうか、でした。

私は、①は屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ、②は諸経費の扱いを取引に先立って決めておかないとトラブルの温床になるから明示義務とすべき、③も発注時に予め心づもりしておかないと揉めるから明示義務とすべき、④は違約金・罰金を課すこと自体がそもそも褒められた行為ではないのに明示義務とするのは微妙、という立場でした。

日頃から紛争解決に携わっている弁護士さんたちからすると、本名や住所というのは内容証明を送ったり訴訟提起するために必須であり、私たちを守るためにも明示義務とすべきというお考えの方も多いのは重々理解しているのですが、やはりそこは個人のリスク許容度に委ねて、匿名のハンドルネームで活動している人が取引しづらくならないように配慮する必要があるだろうと思います。

平田氏は、「屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ」と発言していますが、しかしこの点を問題とするのであれば、インボイス制度において、国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで「個人事業主の個人情報(本名)が公開される」こと(いわゆる「本名バレ問題」も問題視しなければならないのではないかと思います。

「本名バレ問題」が話題になっていた2022年9月には、フリーランス協会からは、私が知る限りでは、この問題については、何も言及も行動もなかったように思います。
この点については、私は昨年「法人登記の代表取締役の個人情報保護に関する提言書」がフリーランス協会他5団体と連名で出されたときに、下記記事で指摘しています。

petitmatch.hatenablog.com
現在も、この点についての言及はされていないように思います。(もしあれば教えてください)

インボイス制度に反対する人たちの中には、「個人事業主の個人情報が公開される」ことを理由としている人もいました。それにも関わらず、平田氏はその点には触れず、インボイス制度に反対するフリーランス当事者に対し、誹謗中傷や攻撃的な態度を、現在も繰り返しています。

petitmatch.hatenablog.com

これまで、大半のフリーランス個人事業主の個人情報の問題には何も言及せず、むしろ協会としてインボイス登録を積極的に推進し、反対派に対しては異常なまでに攻撃的な態度を取っていたにも関わらず、こちらの検討会では「明示はやり過ぎ」と発言しています。考えに変化があったのでしょうか?

フリーランス新法において、契約が匿名・ペンネームでできても、適格請求書発行事業者公表サイトが現状のままでは、請求書にある適格請求書発行事業者登録番号を検索した際には、本名しか出てこないということになります。
つまり、匿名で契約しても、本名がわからないと、請求時に本人であるかどうかの確認ができません。しかも、結局のところ適格請求書を出せば、本名は取引先に伝わるということになります。少なくとも経理担当者には確実に本名が伝わります

ですので、「屋号やハンドルネームで仕事をしているフリーランスの個人情報保護の観点から明示義務にするのはやり過ぎ」とまで言うのであれば、適格請求書発行事業者公表サイトも合わせて「本名が公開されるのはやり過ぎ」として、批判なり要望なりを出すというのが、論理的に考えれば自然かなあと思います。

フリーランス当事者」の立場で検討会に参加しているのに、この問題だけ放置、一切の言及がないというのは、どうにも不自然であるように思いました。
ちなみに他のフリーランス団体、JILLAは公取委ヒアリングの際に、インボイス制度についても言及し、要望を出しています。

jilla.or.jp

JILLAのアンケートには、この適格請求書発行事業者公表サイトで本名が公開される問題、適格請求書発行事業者公表サイトの掲載情報が商用利用される問題についての項目があります。JILLAの活動や組織としての発言は、極めて筋が通っているように思います。頼もしいです。

【2023/9/27追記】厚生労働省でも「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」が開催

厚生労働省でも「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」という検討会が行われているようです。

www.mhlw.go.jp

検討会のメンツは2名かぶっている

この検討会と、公取委の「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」のメンバーは、2名かぶっています。以下の二名です。


鹿野 菜穂子 慶應義塾大学大学院法務研究科 教授
平田 麻莉 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・
フリーランス協会 代表理事

フリーランス協会の代表理事、平田氏が入っているだけで、大丈夫かなあ…?という印象を受けますね…こちらも注視が必要でしょう。
フリーランス協会の過去の問題行為や、現状の問題点については、下記記事にまとめてあります。

petitmatch.hatenablog.com

こちらは主な議論は、10月上旬以降に、ヒアリングが終わったあとに行われるようです。

厚生労働省によるヒアリングが行われている団体一覧

この検討会は、「どの団体にヒアリングを行っているのか」が公開されています。
今までにヒアリングを受けた団体は以下です。

2023年9月29日 第2回 特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

www.mhlw.go.jp

(一社)日本フードデリバリーサービス協会
(一社)IT フリーランス支援機構
(一社)スポーツユニオン
全国建設労働組合総連合

2023年10月3日 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

www.mhlw.go.jp(一社)日本リラクゼーション業協会
(一社)緊急事態舞台芸術ネットワーク
全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会
(一社)日本アニメーター・演出協会

【嘘?情報流出?】フリーランス協会の平田代表、存在しないはずの「契約トラブル相談窓口」の相談内容を厚労省の検討会で発言(2023/11/21追記)

第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kintou_449523_00002.html

の議事録のp6に

https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

◯平田構成員 フリーランス協会の平田です。御説明ありがとうございました。  
私どもも、実は契約トラブルの相談窓口の中で圧倒的に一番多いのがリラクゼーション業界さんなのですね。その相談内容を見ていて、普段からちょっと分からないなと思っているところがあったのでお伺いさせてください。

2023-10-3 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会 議事録 https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

2023-10-3 第3回特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会 議事録 https://www.mhlw.go.jp/content/001163082.pdf

とありました。  

私はフリーランス協会の有料会員ですが、フリーランス協会には、「『契約トラブルの相談窓口』は存在しない」という認識でした。それは協会サイトにも書いてあります。

Q 法律相談に乗ってもらえますか?
A 法務的な相談については、大変恐れ入りますが、専門外となるため対応致しかねます。第二東京弁護士会が運営している「フリーランス・トラブル110番」をご利用ください。

https://www.freelance-jp.org/faq/detail/185

また、フリーランス協会が提供している弁護士費用保険「フリーガル」(損保ジャパン)には電話相談窓口があり、そこで一般的な法律相談はできるという認識で、私も実際に利用したことがあります。

www.freelance-jp.org

「コクリエ士業オンライン」というサービスも有料会員だと使えますが、これは相談窓口というより弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」のような、「会員制質問掲示板」に近い感じのものです。

www.bengo4.com

しかし、この平田代表の発言を読む限りでは、「フリーランス協会に」「契約トラブルの相談窓口が存在する」ように読めます。  
さらに、平田代表は、実際に相談された内容を把握することができているようです。


そこで、フリーランス協会に、2023/11/1に下記のように問い合わせてみましたが、今のところ回答はありません。

1・フリーランス協会には、契約トラブルの相談窓口があるのでしょうか?  

仮にある場合、相談内容は、平田代表に全て把握される状態となるということなのでしょうか?

2・この平田代表の発言の中の、「契約トラブルの相談窓口」がもし「フリーガル」を指す場合ですが、フリーガルの弁護士に相談した内容でも、平田代表に全て内容を把握されるということなのでしょうか?

念のため、損保ジャパンの加入者専用弁護士相談コンシェル(相談窓口)に確認したところ、

・個別の相談内容は共有されない。

・個人情報(会員の誰が相談をしたのか)も共有されない

・つまり、誰がどのような相談をしたのかというのは、フリーランス協会には共有されていない

ということでした。

ということは、平田代表の発言の中にある「契約トラブルの相談窓口」は、「フリーガル」ではないということになります。

また、フリーランス協会内には、「契約トラブルの相談窓口」は、私が知る限り存在しません。

平田氏が見ているという「契約トラブルの相談窓口の中で圧倒的に一番多いリラクゼーション業界さんの相談内容」とは、具体的には何なのか?という疑問を持ちました。

おそらく平田氏が嘘をついているか、本来的には平田氏に公開されるべきではない、何らかの相談窓口の情報が流出しているか


のどちらかであるように思われました。
いずれにしても、法律の運用を決めるための検討会において、問題であるように思います。

ちなみに、2023/11/9に、厚生労働省に、この点について質問したところ、

「大変恐れ入りますが、個別の団体様の内部の事情につきましては、弊省として承知していないところであり、 お答えすることはできません。」


という回答でした。

フリーランス・トラブル110番にも問い合わせたところ、下記の回答でした。

フリーランス・トラブル110番の相談内容が漏れることはない。
東京第二弁護士会と、厚生労働省には個人情報がわからない形で共有される。(2023/11/20)

平田氏は「相談窓口がないのに、あるかのように発言する」タイプの虚言を繰り返している

ちなみに平田代表は「相談窓口がないのに、あるかのように発言する」という行為を、繰り返し行っており、私が知る限りではこれで2回めです。
こちらの記事の【5】と類似の事例となります。

事例2:相談対応はしていないのに、活動内容に相談対応を含めた誇張報道を訂正せずに拡散

juninukai.theletter.jp


対策

おそらく、本件において今後、フリーランス協会も、損保ジャパンも、誰も本当の事は言わないだろうと思います。
フリーランス当事者としてできることは、何らかの相談窓口や、弁護士に相談する前には「相談内容がフリーランス協会(他、他の事業者や官庁など)に共有されるのかどうか」を確認する という対策をとるしかないように思いました。

意見の送り先

こちらの検討会への意見は、厚生労働省「国民の皆様の声」募集 送信フォームまで。

www.mhlw.go.jp

第4回議事録を確認(2023/12/18追記)

第4回の議事録を確認しましたが、今回は特に平田氏の発言に不審な点は見られず、問題はないようでした。

https://www.mhlw.go.jp/content/001173402.pdf

第5回議事録を確認(2023/12/18追記)

今回も、平田氏の不審な発言は見られませんでした。

https://www.mhlw.go.jp/content/001173403.pdf

大谷構成員(大谷武士 全国中小企業団体中央会 労働政策部長)いい質問しますね!
鎌田構成員(鎌田 耕一 東洋大学 名誉教授)の平田氏に対するツッコミも素晴らしい。

https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001144645.pdf

今後、注目していきたいと思います。

第6回議事録を確認(2024/3/25追記)

第6回の議事録を確認しました。今回も特に平田氏の発言に不審な点は見られず、問題はないようでした。今後も油断なく注視していきたいと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/001230253.pdf

フリーランス新法に対する問い合わせ先

フリーランス新法に関しては、下記に問い合わせ電話番号があります。

www.jftc.go.jp
下記フォームから意見を送ることもできます。

www.jftc.go.jp

厚生労働省フリーランス関係の問い合わせ担当部署は、下記のように分かれています。

●法律の内容について
雇用環境・均等局 総務課雇用環境政策室(内線7876)
ガイドラインフリーランス・トラブル110番について
雇用環境・均等局 在宅労働課フリーランス就業環境整備室 (内線4509、7850 )
●自営型テレワークについて
雇用環境・均等局 在宅労働課(内線7873)
職業安定法について
職業安定局 需給調整事業課(内線5312)

www.mhlw.go.jp

参考:フリーランスも労災に入れるようになる予定。しかし…(2023/11/22)

www.jiji.com

現行制度で労災保険に加入できるのは、食事宅配サービスの配達員など一部業種に限られるが、新制度では、企業に業務を委託されるフリーランスは業種を問わず対象とする方針。5月に公布されたフリーランス保護法の付帯決議で、幅広く加入できる制度とするよう求められ、部会で議論していた。

www.sankei.com

この部会というのは、厚生労働省労働政策審議会(労働条件分科会労災保険部会)のことで、「フリーランスに係る関係団体からのヒアリング」に呼ばれたのは、連合とフリーランス協会です。

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36470.html

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36470.html

www.mhlw.go.jpなんで連合とフリーランス協会なんだ?と思って資料を読んでみたところ、
現状、フリーランスが労災に入るには、「特別加入団体」の構成員であることが必要なのですが、今後「特別加入団体」になるための条件として、下記を検討しているようです。

1.特別加入団体の要件については、既存の特別加入団体の要件(※)に加えて、以下の要件を追加する。
① 特別加入団体になろうとする者(その母体となる団体を含む。)が、特定の業種に関わらないフリーランス全般の支援のための活動の実績を有していること。
② 全国を単位として特別加入事業を実施すること。その際には、都道府県ごとに加入希望者が訪問可能な事務所を設けること。
③ 加入者等に対し、加入、脱退、災害発生時の労災給付請求等の各種支援を行うこと。
④ 加入者に、適切に災害防止のための教育を行い、その結果を厚生労働省に報告すること。

www.mhlw.go.jp

 

第109回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料 資料2-2 御意見を踏まえた対応案 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001168990.pdf

第109回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料 資料2-2 御意見を踏まえた対応案 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001168990.pdf

この①は確かに連合とフリーランス協会、フリーナンス(一般社団法人フリーランスAWS協会)くらいしか現状ない気がします。私が知らないだけかな…
②は、連合とフリーランス協会を持ってしても、果たして可能なのだろうか…という懸念があります。今後ヒアリングが行われるようなので、こちらも注目していきたいと思います。

【2023/11/29追記】

よくよく考えたら、商工会議所・商工会なら全然余裕で特別加入団体になれるのではと気づきました。あまりに巨大組織すぎて忘れてました…

関連記事:私個人が懸念していること

petitmatch.hatenablog.com