TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【ネットで話題】オタクなら絶対とって損がない資格「知的財産管理技能士3級」とは何か&受検体験記

イラストレーターと法律 弁護士のふくろう ホーホーちゃん

【2023/7/19更新】

1・「『知的財産管理技能士』3級はオタクなら絶対とって損がない資格」というツイートがバズっていた

先日、このようなツイートがバズっていました。

Togetterのまとめを読んだところ、私が見た時点で33316PVあり、話題になっているのだなと思いました。

togetter.com
実は私も先日、11月7日に、まさにこの「知的財産管理技能士3級」を受験したところでした。今、結果待ちの状態です。この資格に関心がある方に何かお役に立てればと思い、体験記を書いてみます。

*ちなみに、ねぎとろさんのツイートの「RT」が指すツイートは下記

著作権法第30条とは「私的使用のための複製」について書かれている条文

www.jasrac.or.jp著作権法第21条~27条とは著作権の中の「財産権」に付いて書かれている部分
ヘッダーとかアイコンに使用するのがNGなのは、23条の「公衆送信権」の侵害にあたるためです。こういうのも、「知的財産管理技能士3級」の勉強をすると、わかるようになります。

warp.da.ndl.go.jp著作権法原文

elaws.e-gov.go.jp

2・「知的財産管理技能士」とは何か

「知的財産管理技能士」は国家資格

「知的財産管理技能士」というのは、知的財産を管理する技能を公的に証明する国家資格です。知的財産というのは、主に発明・著作物・デザインなどの「人が知的創造活動によって生み出した財産」のことを指します。

www.jpo.go.jp
知的財産管理技能検定」(以下「知財検定」と略します)という国家試験に合格すると、「知的財産管理技能士」という国家資格が与えられます。

知的財産管理技能検定は、技能検定 (働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度)の中の「知的財産管理」という職種に関する国家試験です。
知的財産(知財)を管理(マネジメント)する技能(スキル)の習得レベルを測定・評価するものです。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/about.html


「知的財産管理技能士3級」は、正しくは「三級知的財産管理技能士(管理業務)」ということになります。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/faq/faq_ipg.html#1

試験範囲

試験範囲は、
特許法
・実用新案法
・意匠法
・商標法
著作権法
・条約
・その他の知的財産に関する法律(種苗法不正競争防止法独占禁止法民法弁理士法
です。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/range.html

よく出るとされているのは、TACのスピードテキストの「出題分析データ」によれば、特許法著作権法が約3割ずつです。後は、残りの法律・条約を合わせて約4割です。
私の場合は、もともと著作権法は仕事上、実務で使っていたのと、農業関連を取材する仕事をしていたことがあり、種苗法についても関心がありました。
また、仕事上のトラブル解決のため、不正競争防止法・独占禁止法も勉強したことがありました。(というか公取委の人とやり取りをする中で自然に覚えました…)
なので、全く初めての勉強となったのは、特許法・意匠法・商標法と条約でした。

3・私の受検の動機と受検資格について

(3-1)受検の動機

私はイラストレーターとして、本や雑誌、WEBなどにイラストを提供したり、コラムを書いたりする仕事をしています。イラストレーションや文章も、知的財産の1つです。
イラストレーションや文章は、著作物です。
なので私は「知的財産を自ら生み出し、管理する仕事をしている」ということになります。

最近、IT系の企業・新興WEBメディアを中心に、明らかに違法性が高い契約書を出してくる担当者・編集者や、明らかに違法性が高い「ふつう」を「あなたのために」と押し付けようとする人がいます。
また、同業者が、自らの権利を自ら安売りするような内容の契約書見本を「クリエイターのための!」みたいな感じで紹介した本を書き、売っていたりします。
さらに、作品作りに理解が浅い「著作権に詳しい」弁護士が、かなり無理がある自論をメディアで語っていたりするのを見かけました。
私は、この状況に危機感を覚え、自ら法律知識を身につける必要があると感じ、この資格を取ることにしました。

また、国家資格であったこと、著作権法以外の法律も試験範囲であることも、私としては魅力でした。

(3-2)受検資格について

Twitterを見ていたら、「自分には受検資格がない」と心配されてる方をチラホラ見かけましたが、少なくとも知財検定の三級は実質、誰でも受検できます。
なぜなら、三級は、受検条件が「知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている者」だからです。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_shikaku

受検資格に関するよくある質問 
Q:3級受検資格の「知的財産に関する業務に従事しようとしている者」とは、知的財産に関する業務に従事する具体的な予定がなければならないのですか?

A:知的財産に関する業務に従事したいという意思さえあれば、どなたでも受検いただけます。
現時点で、知的財産に関する業務に従事されていない方や、知的財産に関する業務に従事する具体的な予定がない方でも、差し支えありません。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/faq/faq_qua.html#2

そんなわけで、実質的には、誰でも受検できます。

ちなみに自分の仕事(メディア媒体にイラストを提供したり、コラムを描いたりする仕事)は下記リンク先の「実務経験」における(7) コンテンツの「コンテンツ開発業務」に該当すると認識しています。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_keiken 申込みの際、特に職務実績等の確認もありませんでした。
聞かれたときに、ちゃんと説明できれば大丈夫だと思います。

(3-3)試験内容について

学科試験と実技試験がありますが、両方とも筆記試験です。
学科は単純な知識問題で、実技は「あなたはゲーム会社の知財担当者です。こんなときどうしますか?」みたいな問題が出る感じです。
学科はマークシート、実技は「記述方式」と言いつつ、ほぼ選択式です。
過去問を見てみると良いと思います。(無料で見れます)

https://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kakomon

4・私の3級受験体験記&受験までに買ったもの

申し込み

WEBで申し込みました。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/application.html
ちなみに、年に3回あります。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/schedule.html


実施地区・試験会場は、毎回異なるようです。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/schedule/jukeninfo_place.html#46

買ったもの1・問題集

取ろうかなと思ったときに、どうやって勉強したらいいのかよくわからなかったので、Twitterでつぶやいてみました。そしたら、ご親切な方が教えてくれました。

そこで、公式テキストのほかに、ナリシゲさんおすすめのTACの問題集と、TACのスピードテキスト(試験範囲がコンパクトにまとまっている、文字通りすごいスピードで読める&理解できるテキスト)を買いました。

公式テキストは毎年7月発売、TACのスピードテキストは8月発売、TACの問題集は9月発売のようです。
法律は毎年変わるので、最新のを買いましょう!
下記のものが、現状の最新版です。テキストが届く前に、どんなもんかなと思って、過去問を解きました。
全くノー勉強状態でも、学科4割、実技8割は取れました。(合格ラインは7割)
これで「ちゃんと勉強すれば、受かるかも?」と思いました。

しかし私、買ったはよいのですが、買ったあとに仕事がモーレツに忙しくなってしまい、結局公式テキストは未だに通読できてません…

試験3日前から勉強をはじめました。結局勉強時間は、1日5時間×3日しかとれませんでした。勉強時間の配分は以下です。

1日目 スピードテキストを全部読み、学科の問題集を3分の1程度こなす。
2日目 学科の問題集の残りを全部終わらせ、実技の問題集を学科の問題集を3分の1程度こなす。
3日目 実技の問題集を終わらせる。わかんなかったところのスピードテキストを読み返す。

買ったもの2・腕時計、シャープペンシル、消しゴム

勉強風景

試験2日前に「試験の手引き」を読んで、試験では腕時計(計時機能のみのもの)と、シャープペンシルと消しゴムが必要であることを知りました。
私は腕時計持ってない(というか、腕に何かつけるのが嫌い…)なので、買いに行きました。
試験用なので、分がわかるアナログで、どシンプルで文字盤が見やすいやつ…ということで、三宮センター街の時計安売り店で、チープカシオを買いました。

↑これの07と同じものだと思います。

知財検定では、時計は「計時機能のみのもの」という指定があります。タイマー機能付き等のものはNGなので、注意です。あとシャーペンと消しゴムも、私は絵を描くとき使ってないので、買いに行きました。(ラフはフリクションで描く派)


試験当日

試験会場(神戸大学 深江キャンパス)

試験会場(神戸大学 深江キャンパス)

私は神戸に住んでいるので、試験会場は神戸大でした。

試験があまりにも久しぶりすぎて、一瞬マークシート塗り間違えました…
あと、国家資格というのを受けたのが生まれて初めてだったし、なんか頭が良さそうな人ばかりだし、部屋の中の重苦しい雰囲気に呑まれてしまい、凄い緊張してしまいました。
😨💦←まさにこんな感じで、サーッと血の気が引いたような感覚でした。

試験翌日に公式サイトに回答が出るので、自己採点

なんと試験翌日には、公式サイトに回答が出てしまいます。

https://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kakomon.html 

なので、自己採点しました。

学科 自己採点学科 22/30 正答率73%

実技 自己採点

実技 27/30 正答率90%

合格基準は学科・実技ともに「満点の70%以上」なので、おそらく合格しているのではないだろうか。
しかし、マークシートを塗り間違えてる可能性も無きにしもあらずなので、
合格発表日を震えて待つことにいたします。

5・結論:イラストレーターの人も3級くらいは取っていいのではないか?

まだ受かってるかどうかわからないので、勉強してみての感想を書きます。

私はイラストレーターなので、知的財産法のうち、著作権法については自分なりに日々勉強していました。また、仕事するときに契約書を必ず作るので、実務経験もある方だと思います。

今回、著作権法以外の、他の知財法を勉強してみて、以下のことがわかりました。

1・自分が知識としてのみ知っている法律の扱いは、どうしても教科書的になってしまう (自分が当事者じゃないし、実務経験もないから)
2・著作権法は、他の知財を専門にしてる人からすると、特殊すぎるし、著作者が優遇されすぎているのでは?という印象を受けるのではないか、という気がした。
実際に著作者の立場になってみると、それが普通だから、当然だと思ってしまいますが…
1とも関連しますが、なんか著作権法を専門としない弁護士のブログの著作権関連の記事とか読むと 「なんか失礼だな〜😡」と感じることも多々あったのですが、専門じゃなくて、自分が権利者じゃないと、そんなもんなのかも。と思うようになりました。

そんなわけで、今後もし取引先の法務部の人に、契約書の書き換えのお願いをする機会があったら、

・書き換えてほしい当該の条項の法的効果について、自分は現状どのように理解しているか&どのような意味合いを持って捉えているか

・この契約書で達成したい、御社としての目的は具体的に何か?


・自分はこの契約書を読んで、こういう印象を受けているので、自分としてはこうしたい


というのを、もっと具体的に確認&説明しようと思いました。

権利者として自分の権利を守りつつ、相手が使いやすいようにする。
そうやって信頼関係を築きつつ、お互いに利害を調整しながら、双方の利便性を保ちつつ、経済的利益を確保していきたいものだなあと思いました。

そういうふうに考えることができるようになっただけでも、勉強した意味があったと思いました。

また、一番上で紹介したツイートの、ねぎとろさんが書かれてる通りで、資格を取らなくても、公式テキストを読むだけでも、かなりのことは知ることができます。
「これはおかしいのでは?」というのを「感じる」ことができるようになると思います。感じることができれば、あとは専門家に質問したりすればいいことなので…
関心がある方は、まず公式テキストを読んでみては?

あとちなみに、「著作権法だけを勉強したい」のであれば「ビジネス著作権検定」というのもあります。これは民間資格でWEB試験(自宅で受検)なので、私としてはなんか「試験を受けた感」がないんじゃないかな〜と思ったのと、とにかく「国家資格」が欲しかったので、私は知財検定のほうを選びました。

www.sikaku.gr.jp
長くなりましたが、何かの参考になれば幸いです。

 

 

【2022/1/31 追記】無事に合格しました。

petitmatch.hatenablog.com


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