岩永直子さんのニュースレター「独立日記4(契約書の戦い)」の感想
医療記者、岩永直子さんのニュースレター「独立日記4(契約書の戦い)」を読みました。
岩永さんが独立して、フリーランスの契約書の問題に言及してくださり、本当に嬉しいです。
他のライターさんにも、この記事をぜひ読んでほしいです。
私も自分が納得できない契約書は修正交渉しています。フリーランスとして20年近く仕事していますが、今まで修正交渉自体を拒否されたのは1社のみです。
マトモな法務がいる会社なら、大抵は修正できると思いますし、修正できない=マトモな法務がいないということなので、仕事しなくて正解だと思いました。
(そもそも10年くらい前まで契約書がない会社のほうが多かったですが…)
私は自分から先に、私が作成した確認書を提示し、これを契約書として仕事する場合が多いです。
petitmatch.hatenablog.com
私もライターとして仕事をする場合がありますが、その場合は
・著作権は自分持ち
・著作者人格権は行使できる
状態で契約できています。イラストの仕事でも100%そうです。
petitmatch.hatenablog.com
私は一番下の三級ではありますが、知的財産管理技能士の資格を持っており、今も日々勉強しています。
petitmatch.hatenablog.com
勉強を続けていて感じることですが、そもそも根本的原因として、契約書を作成する弁護士や法務担当者にも問題があるのではないかと感じています。
あくまで私の体感ですが、「知的財産権を専門とする弁護士」の8〜9割は、「自分が作った契約書で、『著作権者の』経済活動・職業活動にどういった影響が起こるか」という、具体的な想像ができません。
「知的財産権を専門とする弁護士」で、そのレベル感なので、専門外の弁護士や、一般企業の法務部員レベルでは、具体的検討は、更に難しいのではないかなと想像します。
著作権契約は著作権法だけでなく、下請法や独占禁止法など他の関連法や、業界慣習などを複合的に考えて行う必要がある契約です。
「企業側の利益」しか考えることができていない契約は、結果的に著作権者の職業選択の自由(基本的人権)を制限する可能性があるのに、法務従事者にあまりにもその自覚がないのではと感じています。
結果として、「著作権法では問題ないけど、独占禁止法(下請法)で考えると違法」みたいな契約書が蔓延しています。
↓「コンテンツ取引と下請法」(公正取引委員会)に詳しいです。
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/contentspamph.pdf
こういった現状ですので、岩永さんが書かれているように、まず著作権者が、「ライター側(著作権者側)に立って、一から勉強」し、そして勉強したことを「ライター側(著作権者側)の立場で」発信していく必要があると感じています。
私の現状の具体的発信活動としては、こちらのブログと「イラストレーション」誌での記事執筆、勉強会・シンポジウム登壇などです。今後も頑張りたいです。
petitmatch.hatenablog.com
ちなみに余談ではございますが、
著作権業界(?)でも「著作者人格権の不行使特約は可能か」
というのはホットトピックのようで、今年の国際著作権法学会 日本支部総会・研究大会2023のシンポジウムのテーマになっています。
ALAI JAPAN 総会・研究大会2023 のご案内○ 日 時:2023年12月9日(土)13時30分~
(13:30~総会、13:45頃~研究大会)
○ 場 所:一橋大学国立キャンパス西校舎本館
【プログラム】
〈国際大会報告〉ALAIパリ大会報告
内田剛(東海大学准教授)
《シンポジウム》 著作者人格権の不行使特約は可能か
(司会)長塚真琴(一橋大学教授)
中小路 大(弁護士)
中里 浩(東京経済大学教授)
石尾 智久(金沢大学専任講師)
著作者人格権尊重ムーブメントの予感
一方で、著作者人格権不行使特約については、最近ビジネス著作権検定テキストの記載が変更されたり、企業・行政の法務担当者などの間でも、安易な不行使特約を見直そうという動きが出てきているようです。詳しくは下記記事にて。
契約で悩んだ場合の無料相談先まとめ
私は契約書を読んでみて疑問が発生したら、同じ内容を、コピペで同時に送ってしまっています。メールで送れないところには、電話します。
(セカンドオピニオンを同時に取る)
文化庁の相談窓口
www.bunka.go.jp↓今年、実際に相談してみた感想
INPIT 知財総合支援窓口
chizai-portal.inpit.go.jpこれは一見、発明(特許とか)の知財の相談窓口なのかなあという印象も受けますが、
実は著作権契約の相談もできます。私は兵庫発明協会の窓口→弁護士相談でお世話になりましたが、かなり親切でした。
著作権情報センター「著作権テレホンガイド」
フリーランス・トラブル110番
*あまり良い話を聞かないですし、実際、何度か相談したことがありますが、あまり親身になってくれる感じがありません。積極的にはあまり勧めません。
フリーランス・トラブル110番は、あくまで「参考程度」、他の相談窓口の「予備」的に考えたほうがいいと思います。
中小企業庁・下請かけこみ寺(資本金が1000万円超の企業相手の契約書の場合)
公正取引委員会
「コンテンツ取引と下請法」パンフレットの最終ページに連絡先があります。
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/contentspamph.pdf
以上、何かのお役に立てば幸いです。
このブログは、知的財産権に関する情報を発信するグループ「Yuroocle」に加盟しています。