TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【フリーランスと法律】「労働組合法」上の労働者性と、「労働基準法」上の労働者性は違うという話

【2023/7/24 最終更新】

世田谷区史編纂問題は、著作権の問題でもあるけど、労働問題でもある

東京都労働委員会に救済申し立て - 御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com

を読みました。この問題は、先日のシンポジウムでも明らかになったように、
著作権の問題でもあるけど、労働問題でもあります。

petitmatch.hatenablog.com

期待権」っていう権利を初めて知りました。

そして、「労働組合法」上の労働者性と、「労働基準法」上の労働者性って、違うんですね。知らなんだ。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf


P25〜
労働組合法における「労働者性」の判断要素の具体的な考え方
以下に示す判断要素により、「労働者」に該当すると判断された場合には、労働組合法のルールが適用されることとなる。

上記ガイドラインによれば、谷口先生の事例は、「労働組合法上の労働者」に該当する、下記の要素には該当しそうな気がします。

【2】契約内容の一方的、定型的決定
契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型
的に決定しているか。
(要素を肯定する事情)
・ 契約締結や更新時に、労務供給者が相手方と交渉して契約内容を変更する余地が実際にない。
・ 相手方が報酬の算出基準、算出方法を決定している。
・ 契約に定型的な契約書式が用いられている。 など

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン P27

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

→実際に、契約締結前の交渉を拒否され、一方的内容の契約書を送付されたのみである。

【4】業務の依頼に応ずべき関係
労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係に
あるか。
(要素を肯定する事情)
労務供給者が依頼された業務を断った場合、契約の解除や契約更新の拒否等、不利益な取り扱いや制裁の可能性がある。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン P28

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

→実際に、契約を解除されている。

出版ネッツは、委員委嘱の打ち切りが区の裁量権濫用であることを主張するための事実として、

2023年2月、区は編さん委員に対し、著作者人格権不行使を含む著作権譲渡契約を結ぶことを求め、谷口さんがそれを「承諾」しなかったことを委嘱打ち切りの理由としています。しかし、著作権法は第59条で著作者人格権を「一身専属的権利」として保障しています。また、「役務の成果物に係る権利(著作権等)の一方的な取り扱い」は、独占禁止法・下請法上問題となる「優越的地位の濫用」にあたると考えられます。

https://setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com/entry/2023/07/21/180428

としています。が、私の個人的な感覚では、
谷口先生は社会的地位が高い(青山学院大の准教授)し、世田谷区を治めていた吉良氏という武家を専門に研究している、日本で唯一の研究者であるため、本来なら世田谷区のほうが、頭を下げてお仕事をお願いする立場であるように思います。

なので、世田谷区は「異常なまでに失礼」ではあるが、下請法・独占禁止法における「優越的地位の濫用」は該当しないのでは?とも思うのですよね。

www.jftc.go.jp

そもそも世田谷区は地方自治体なので、下請法・独占禁止法の対象にならないように思いますし…(区史編纂が「事業活動」に該当するかどうか?が論点である気がします。)
しかし、東京都労働委員会は、これをどう判断するか?

今後も、注視していきたいと思います。

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