- 1・著作者人格権不行使の契約をすると、仕事実績として公開できなくなり、ポートフォリオに掲載することもできない?
- 2・解説:実は仕事実績としての公開・ポートフォリオへの掲載については、著作者人格権は関係しない
- 3・著作権法とは別の話だが、『独占禁止法・下請法』上では問題となる可能性がある。専門家や公的機関に相談・情報提供を!
1・著作者人格権不行使の契約をすると、仕事実績として公開できなくなり、ポートフォリオに掲載することもできない?
少し前に、こういうクイズ(アンケート)をしました。
【イラストレーター向け・著作権クイズ】
— オオスキトモコ (@cafe_petit) 2024年2月29日
著作者人格権不行使の契約をすると、仕事実績として公開できなくなり、ポートフォリオに掲載することもできない。◯か✗か?
正解の方が少なかったので、解説したいと思います。
著作権・著作者人格権についての基礎的な知識がない方は、下記記事を先にお読みください。
2・解説:実は仕事実績としての公開・ポートフォリオへの掲載については、著作者人格権は関係しない
【正解】✗
【解説】仕事実績としての公開・ポートフォリオへの掲載については、誤解しているイラストレーターが多い印象ですが、著作者人格権は、実は関係ありません。
著作者人格権の1つである「公表権」は、
「自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、
公表するとすれば、いつ、どのような方法で公表するか」ということを決める権利なので、
1回公表したら、公表権は消滅(消尽)します。
クライアントワークの場合、クライアントがそもそも制作物を公表できないのだったら、その人に制作物の制作を依頼しないでしょう。
このため、クライアントワークの場合は、公表権を行使して、「自分の意志で」相手のリリーススケジュールに合わせて公表する、
あるいは著作者人格権不行使特約が入っていなかったとしても、双方の意思として公表権の行使は予定しない前提(実質的に公表権のみ不行使)ということになります。
また、クライアントワークについては、「イラストだけ」で成立しているものは少なく、文章や写真なども同時に使われている場合が多いですよね。
その場合、編集者さん、デザイナーさんや、ライター・コピーライターさんなど、他の方の著作権、または他の権利が発生している場合があります。
ですので、実績公開については、自分の著作者人格権の行使不行使とは、別で確認する必要があります。
いずれの場合にせよ、一度公表したあと(仕事が世に出たあと)には、
著作者の公表権は消滅(消尽)しますので、
「仕事実績としての公開がOKか、ポートフォリオに掲載してもよいかどうか」は、
著作者人格権とは別の話 ということになります。
3・著作権法とは別の話だが、『独占禁止法・下請法』上では問題となる可能性がある。専門家や公的機関に相談・情報提供を!
ちなみに本件は著作権法、著作者人格権とは別の話ではありますが、
仕事としての実績公開不可を、クライアント側が一方的に決定することは、
『合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定』に該当し、
『独占禁止法・下請法』上では問題になる可能性があります。
・フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)[1.8MB]P11
https://www.mhlw.go.jp/content/000766340.pdf
厚生労働省:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ
ですので、そういった事があった場合には、フリーランストラブル110番・下請かけこみ寺等に相談、あるいは公取委に情報提供した方が良いと思います。
↓こちらへ
下請かけこみ寺
公正取引委員会:買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報提供
余談:申告とは
ちなみに独占禁止法・下請法違反の疑いが強い場合には、「申告」するという手もあります。 これをやると、公取委・中小企業庁が調査してくれて、実際に違法性が認められた場合、相手の企業に指導してくれますし、悪質な場合には立ち入り調査などもやってくれます。
私は今まで何回か、申告をした経験があります。
申告をしたらどうなるのかは、以下記事にて。
参考記事:イラストレーターの仕事に関する法律・契約まわりについて
イラストレーターの仕事に関する法律・契約まわりについては、下記リンク先にいろいろあるので、よかったら読んでみてください。