TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【MEMO】インボイス制度と、フリーランス協会の炎上について思うところ(検証と考察・A)

【2023/3/5 最終更新】

この記事は、下の記事の続きです。

petitmatch.hatenablog.com

8・現状、2023/1/12に送付した質問に対しては回答なし。フリーランス協会からの今までの回答をファクトチェック

2023/1/12に送付した質問に対して、未だ返信はありません。おそらく、このまま無視されるものと思われます。

上記の記事に掲載した、フリーランス協会広報からの下記の回答について、再度、私の方でも調べ直し、よく考えてみました。気になった点を太字にしてみました。

・12月21日に開催したインボイス制度導入に備えた対策セミナーと前後して、
事実とは異なる内容や憶測を含む多数のリプライや引用ツイートが集中的に寄せられるようになったことを受け、運用担当者が感情的に反応してしまった。

「事実とは異なる内容や憶測を含む多数のリプライや引用ツイート」とは、下記のような内容である。
A・フリーランス協会がインボイス制度に賛成し推進しているため、インボイス制度が廃止にできない ←今回はこの話
B・インボイス制度は確定事項と嘘を付き、制度を肯定するセミナーを開催してフリーランスを騙している
C・フリーランスは「みんな」反対しているのに反対しないフリーランス協会は、政府関係者の天下り集団である、政府の補助金助成金をもらっている、インボイス推進を政府から受託している

当協会としてはフリーランス同士で言い争いをしたり、分断や対立を広げることは本意ではないため、そうした事実誤認に対しても反論せず、インボイス制度に関するリプライは一律的に静観する方針になった。
すると今度は「なぜフリーランス協会アカウントはリプライをしないのか」「無視されている」といったリプライやメッセージが相次ぐようになり、
そうした一連の投稿に対する反応であったようである。

いかなる理由があったにせよ、D・フリーランスの地位向上と公正中立を掲げるフリーランス協会の公式アカウントとして、あってはならない発言であった。
このことについては事務局内でもしっかり議論と反省を致しており、今後も同様のことがないよう、厳重に注意する。

A・フリーランス協会がインボイス制度に賛成し推進しているため、インボイス制度が廃止にできない
→ 「フリーランス協会がインボイス制度に賛成し推進している」の部分に関しては、「事実とは異なる」とは言えないのでは?

まず、このAの件から、検証していきたいと思います。
これは、下記の記事で既に書きました、主に「インボイス反対運動における、議員への陳情の場において、フリーランス協会が『インボイス賛成』であることが邪魔になっている」という件についての記載であると思われます。

petitmatch.hatenablog.com

フリーランス協会代表の平田氏は、完全に個人の「印象」だけで話をしている

2023年1月10日のフリーランス協会広報からの回答で、
2022年5月17日の税制調査会(第10回総会)
https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen10kaigiji.pdf
では、

「こちらのスライド資料を投影しながら話している」ということを教えてもらいました。

フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料 

https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen10kai3.pdf 

 

税制調査会(第10回総会)をよくよく読み返してみると、フリーランス協会の平田麻莉代表理事による、下記のような発言が出てきます。

26ページ目ですが、同じくよく話題に上るインボイスの対応についても聞いております。一部SNSなどで、インボイス絶対反対だとか、フリーランスいじめだという言説も見受けられますが、実際データを取ってみると自由回答の中身も含めて割と冷静に受け止めてらっしゃる方が多いという印象でした。既に登録事業者になっている方や、なる方向で検討している方も4割ぐらいいらっしゃいます 、逆になるつもりはないと決めている方も1割いらっしゃり、あとは分からないという方が4割ぐらいいらっしゃいます
もちろん収入によってインボイスとへの対応方法も異なっているわけで 、収入が高いほど既に登録事業者になろうと決めている方の割合が多いというのもデータが示す通りですだからといって収入が低い方で必ずしもなるつもりはないとか、
インボイスに反対する人が多いかというと自由回答を見てもそこまで顕著ではないとい印象でした


しかし、実際のスライド資料には、「インボイス制度に対して賛成か反対か」を問う設問は、そもそも存在しません。

フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料(フリーランス協会提供)より P

フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料(フリーランス協会提供)より

単に「あなたは現在どのように対応しようとお考えですか?」という設問で、選択肢として「登録事業者になると決めている(すでになった)・登録事業者になる方向で検討している・業種は該当している(B to B取引)が、なるつもりはない・業種が該当していない(B to C取引のみ)・わからない/答えたくない」があるだけです。

平田氏は、完全に個人の「印象」だけで話をしています。

【2023/3/2追記】本日、この件について平田氏からのコメントが出されました。しかし、やはり結論は変わりません。

私の「実際にデータを取ってみると自由回答の中身も含めて割と冷静に受け止めていらっしゃる方が多いという印象」「インボイスに反対する人が多いかというと自由回答を見てもそこまで顕著ではないという印象」との発言に対し、「フリーランス協会はインボイスの賛否を問う質問をしてないのに、インボイス制度の検討状況(課税事業者になる方向が4割、なるつもりがないが1割、分からないが4割)を根拠に、反対が少ないと言っている!詭弁だ!」ということらしいです。

でも、私が言及しているのは「自由回答」です。

その自由回答は一部抜粋して発表資料で指し示していただけでなく、全件公開し、政府関係者や委員にも送付しておりますので、その場を取り繕って印象操作をするような意図は毛頭ありません。

私が「意外と冷静に受け止めている人が多いんだな」と感じた自由回答一覧は、こちらのP.123以降でご確認いただけます。設問は2つあり、それぞれ744名、697名が回答してくださっています。本当に様々な受け止め方があります。

blog.freelance-jp.org

これが資料です。
https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2022/03/2022_0317_freeanswer-1.pdf

この「自由回答」は、下記の質問に対する回答です。

5 Q.令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます。あなたは現在どのように対応しようとお考えですか。
└Q.よろしければそう答えた理由を教えてください。

6 Q.インボイス制度について不安や疑問があれば教えてください。

ですので、やはり、「インボイス制度に対して賛成か反対か」を尋ねたものではありません。ですので結論は変わりません。
平田氏が、完全に個人の「印象」だけで話をしていたことが、改めて裏付けられました。

【2023/3/5追記】しかも、下記の日経クロステックの記事については、上記の声明でも否定されていません。

下記記事では、上記の自由回答の中から、会員の意見をかなり恣意的に紹介しています。「会員の関心事は〜」というのも、「代表の個人的な関心事」のように思われます。

10月には、5月に「印象」で話していた内容を、完全に「会員への調査から目立った反対意見はなく」と言い切り【2023/3/5:一部修正しました】

また、2022.10.13更新の日経クロステックのこちらの記事でも、やはり、

2023年10月のインボイス制度の開始まで1年を切ったものの、制度に対する民間の見方は分かれている。見直しを要望する業界団体も数多くある。 
相対的に、インボイス制度の導入を冷静に受け止めているのがフリーランス個人事業主らだ。フリーランスを代表するプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事は「会員への調査から目立った反対意見はなく、総体としては冷静に受け止めて対応方法を考えている」とする。
 平田代表理事は、会員の関心事は「免税事業者として恩恵を受けることにはない。課税義務を果たしても事業が成り立つよう報酬と取引条件を改善することにある」と指摘する。実際に、免税事業者が「益税」を得ているという偏見を払拭するために、課税事業者を選択するという意見もあるという。課税事業者を選択しやすいよう、フリーランスを取り巻く取引環境の整備を求めている。

xtech.nikkei.com


という記載があります。5月には「印象」で話していた内容を、完全に「会員への調査から目立った反対意見はなく」と言い切ってしまっています。
また、「課税事業者を選択しやすいよう、フリーランスを取り巻く取引環境の整備を求めている。」との言及もあり、これは明らかに「インボイス制度賛成・推進」の意志を感じる発言です。インボイス制度を肯定した上で、「課税事業者への転換を促すため、フリーランスを取り巻く取引環境の整備を(政府に?)求めている」と受け取れる発言をしています。
*ちなみにこの記事で平田氏についての説明は「『フリーランスを代表する』プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事」となっており、これも明確に間違いであると言えます。フリーランス協会は、フリーランスを代表する団体ではありません。
*日経クロステックにも、間違いを指摘するメールを送りました。

有料記事ですので引用しませんが、この時に参照されているグラフも、やはり上記の資料と同じものです。

フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料(フリーランス協会提供)より

フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料(フリーランス協会提供)より

【2023/3/5追記】日経クロステックで参照されているグラフも、フリーランスの実態について 2022.5.17 税制調査会資料 のグラフも、元は一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書 2022」が元資料のようです。自由回答も下記にありました。

blog.freelance-jp.org

私はフリーランス協会の有料会員で、このアンケートにも回答しています。
その際は、「登録事業者になる方向で検討している」に回答したと思います。しかし、インボイス制度自体には、基本的に反対しています。
↓反対の理由は、下記の記事に詳しく書きました。

petitmatch.hatenablog.com

そもそも、この調査では、「インボイス制度に賛成か反対か」を聞かれていないのですから、「反対」と回答することはしないのが、一般的な感覚のように思います。
その「調査結果」を見て、「インボイス制度に反対する人は少ない」と解釈することは、好意的に見れば「拡大解釈」、一般的に考えれば「正しくない」(間違い)といえます。
「登録事業者になる方向で検討している」ことは、インボイス制度に反対することと矛盾しません。

平田氏が、わざわざこんな嘘をついてまで、成し遂げたいこととは何?

軽く調べただけですが、平田氏はこのように、2度に渡り、同様の言動を行っています。ですので、もっとしっかり調べれば、さらに多くの機会で同様の発言を行っている可能性もあるかと思います。
好意的に見れば、一度であれば「思わず気が大きくなって、適当なことを言ってしまった」という可能性もあるように思えますが、同じ調査結果を使い、2度、違う場で同じことを言っているという点から、明確な意志を持って発言しているように思われます。

平田氏は、なぜ、このような「間違い」を、さも「根拠のある事実」のように語るのでしょうか?

しかも、内閣府の会議(税制調査会)・日経系媒体と、ある程度の社会的影響力がある場で「意図的に」このような発言をしているということから、「フリーランスインボイス制度に反対していない」という「強い印象付け」をしたいという、「確固たる意志」を持っての行動のように見えます。

平田氏が「フリーランスインボイス制度に反対していない」という「強い印象付け」をしたい、という理由として考えられるのは、「インボイス制度を滞りなく導入したい」(予定通り推進したい)という目的ではないかと思われます。

実際に、2022年5月17日の税制調査会でも、下記のような発言をしています。

なお、インボイスに反対する方の多くは、SNSや実際私たちに届いた意見を拝見すると、必ず課税事業者にならなければいけないとか課税事業者になったら売上の10%をそのまま納税しなければならないという誤解をされていたり、免税事業者のままでいたら仕事を切られるぞという言説を見て不安を煽られているようです。
制度をしっかり理解していただくと、必ずしも課税事業者になることを強要される制度ではないということや、簡易課税制度で自らも消費税額控除できること、お仕事に関してもどちらかというと需給バランスで決まるものであり、価格交渉していく前提でしっかり値上げをするチャンスにしたいと考えていらっしゃる方もいらっしゃるので、その辺りをしっかりと制度の説明も含めてしていくことで 、冷静に自分はどうしたら良いのか判断することができる方が増えるのではないかと思いますし、その情報提供のサポート、相談のサポートを当協会としてもしていきたいと思っております。

https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen10kaigiji.pdf

平田氏は、「インボイスに反対する人の多くはインボイス制度を誤解しており、理解できておらず、冷静に判断することができていない人」という認識のようです。

日経クロステックの記事でも、フリーランス協会は「このまま導入派」の代表として書かれています。「反対派」の団体としては日本商工会議所日本税理士会連合会日本漫画家協会全国商工団体連合会が紹介されています。

xtech.nikkei.comしかし、平田氏は、インボイス推進派(このまま導入派)であることはともかく、なぜそこまでして「フリーランスインボイス制度に反対していない」ことにしたいのでしょうか。
「反対派の『存在』自体を徹底的に否定したい」という強い意志を感じ、正直「不気味」に感じます。

結論:『フリーランス協会がインボイス制度に賛成し推進している』という印象を受ける方がいても、仕方がない

結論としては、こういった、フリーランス協会の代表である平田氏の、実際の発言や行動を見ると、「『フリーランス協会がインボイス制度に賛成し推進している』という印象を受ける方がいても、仕方がない」といえるのではないでしょうか。
代表自らが、日常的にそういった態度・言動を取っているために、陳情の場や、議員からもそのように見られるのではないかと推測します。

ここまでで5000字近くになってしまったので、続きはまた別記事で書きます。

↓続きを書きました。

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【2023/2/24】フリーランス協会の代わりになり得るサービスor団体を調べて書きました。

今後フリーランスになりたいと思っている方or今フリーランスで、賠償責任保険をお探しの方にも役に立つ記事かと思います。
具体的にはフリーランス協会・フリーナンス・JILLA(日本イラストレーション協会)の賠償責任保険を比較しています。国民健康保険組合の紹介も。

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