- 各党のインボイス制度に関する姿勢
- 創作者団体からの声明まとめ
- 推進派の自民党にも反対している人もいる
- いわゆる「本名バレ問題」に対する抗議声明
- 個人的所感
- 関連記事(インボイス制度関連)
- 関連記事(選挙全体)
明日、7月10日は参院選の投票日です。
今週になって、急に、インボイス制度に対して、創作者団体が声明を出すなどの動きがありました。この記事では、投票の参考になるようなものをまとめていきたいと思います。ご参考になれば幸いです。
各党のインボイス制度に関する姿勢
下記の表がわかりやすいかと思います。
各党のインボイス制度に関する姿勢の表をアップデートしました。
— STOP!インボイス (@STOPINVOICE) 2022年6月26日
参院選の判断材料にして下さい❗️
「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト」と各党の政策集など党としての公式見解をもとに作成しています。https://t.co/O1ZA8mCxFx pic.twitter.com/Q40eXeQZmF
創作者団体からの声明まとめ
日本漫画家協会(2022/7/4)
*関係性明示:私は日本漫画家協会の会員です。
「現行のインボイス制度導入反対」ということで、問題点として
・漫画家の中には前々年度の課税売上高が1,000万円以下のいわゆる「免税事業者」に該当する者が多く存在
・発注元と漫画家との関係悪化リスク
・最悪、免税事業者であることを理由に取引が中止される等のリスク
・事務処理負担の増加による創作活動の阻害リスク
・「適格請求書発行事業者公表サイト」による本名バレのリスク
を挙げています。
現行のインボイス制度導入反対について|公益社団法人日本漫画家協会https://t.co/C0I0PAkXge #漫画家協会 pic.twitter.com/6pXGgGxc24
— 日本漫画家協会公式 (@mangaka_kyokai) 2022年7月4日
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)(2022/7/5)
日本漫画家協会と同様に、
・事務処理負担の問題
を指摘していますが、それに加えて
・税の公平に反する
・アニメ制作の現場環境を悪化させる
としています。
日本SF作家クラブ(2022/7/6)
日本漫画家協会と同様に、
・取引停止リスク
・事務処理負担の問題
・本名バレリスク
を挙げていますが、その理由について、かなり具体的な検討や事例を挙げて批判しています。日本SF作家クラブは、税理士含めた勉強会をやったらしい。えらい。
【取引停止リスク】
制度の導入に伴い、免税事業者取引も対象としていた仕入税額控除は2023年10月から6年間の経過措置を経て廃止されることが予定されています。
免税事業者のままでいる決断をした場合、作家や画家、演者たちは、仕入税額控除ができなくなる納品先の企業から、当人の納税者としての立場を理由とした、不当な取引中止を申し渡されるリスクに直面します。
しかしながら、制度を推進している財務省や国税庁は、このような取引停止が「独禁法上の問題となる可能性[1]」にあたることを指摘するにとどまり、消費税転嫁対策特別措置法[2]に相当する法律や制度を用意する気配はありません。
このような弱い指導の中で推進されるインボイス制度が、免税事業者を選択した作家や画家、演者の活動の場を奪うことを、当クラブは強く危惧します。
この危惧は仮想のものではありません。8割に及ぶ仕入税額控除の経過措置があるにもかかわらず、作家に対して適格請求書発行事業者申請を求める出版社が現れているほどなのです。
【事務処理負担の問題】
課税事業者となる場合には、簡易課税と本則課税から仕入税額控除額の算定方法を選ぶことになります。しかしながらこの制度は、小規模事業者である作家や画家、演者の実情に沿ったものとは言えません。
ある会員は、経費の合算が売上の九割を占める年度を経験したという実例を挙げて、簡易課税では経費の消費税額分を控除できないこともあると指摘しました。
多くの中小企業が設備投資を行う年度に本則課税に切り替えて節税を行なっていますが、税理士を雇えない規模の個人事業主にとって、課税制度を切り替える経理・事務手続きは事業の大きな負担となってのしかかりますし、売上の極端に低い年度を前もって予想することもできません。
免税事業者である売上1,000万円以下の文筆家や画家、演者の、売上と経費の構成比率は、その時々で関わる作品の質や制作の段階によって大きく変動します。不安定な経済状況の中でSF・ファンタジー活動に貢献してきた制作者たちが、規模の大きな事業者を想定している税制度に振り回されることは、SF・ファンタジー活動を大きく阻害することでしょう。
【本名バレリスク】
また、課税事業者を選んだときに登録するインボイス事業者公表サイト(適格請求書発行事業者公表サイト)では、ペンネームで活動している作家の氏名や、婚姻を機に姓が変わった作家の婚姻後の姓が公表されてしまう懸念があり、つきまといや個人攻撃の資料となりうるインボイス事業者登録をためらう会員の声も少なくありません。
すでに稼働しているインボイス事業者公表サイトは、一件ごとの検索やWeb APIだけでなく全データの配布を行なっていますが、廃業した作家や課税事業者ではなくなった作家の氏名が、データベースから削除された後も市中のコンピューターに残るような運用になっているなど、データ内容の正確性の確保を求める個人情報保護の観点からも疑念のある運用が行われています。
推進派の自民党にも反対している人もいる
赤松健
本日日本漫画家協会より「現行のインボイス制度導入反対について」と声明が発表されました。免税事業者のままの漫画家には取引中止のリスク、課税事業者になった漫画家には手取り収入の減少と事務処理負担の増加が待っています。ペンネームが本名から連想しやすい漫画家等は本名特定の懸念もあります→ https://t.co/8kV74kflBs
— 赤松 健 ⋈ 参議院議員(全国比例)候補者 (@KenAkamatsu) 2022年7月4日
納税は国民の義務ですので、日本漫画家協会としてもしっかりとその義務を果たいと考えております。しかし、税のルールは最大限簡素であるべきです。漫画家をはじめとしたクリエーターが可能な限り創作活動に専念できるよう、複雑で負担・懸念の大きい現行のインボイス制度には反対し、見直しを求めます
— 赤松 健 ⋈ 参議院議員(全国比例)候補者 (@KenAkamatsu) 2022年7月4日
*赤松先生は、日本漫画家協会の常務理事ですが、日本漫画家協会は赤松先生の支持団体ではありません。
山田太郎(今回、改選対象ではありません。投票できません。注意)
3.インボイス制度をめぐる論点
3-6 免税事業者の制度(事業者免税点制度)の問題
しかし、制度設計をする上では、①・②以外の選択肢もありうるはずです。それは、③適格請求書発行事業者であり、かつ、免税事業者でもあることを認める場合です。
インボイスを発行・保存することと、免税事業者でなくなることとの間には、論理的な必然性はありません。
4.フリーランス政策の重要性の高まり
このようにフリーランス政策が政府の主要政策になったのはここ3年間の話であり、インボイス制度の導入が決まった2016年の税制改正法案の成立時とは大きく事情が変わっています。ですから、今一度、実施前に、フリーランス保護の観点からしっかりとインボイス制度を見直すべきではないかと考えています。
いわゆる「本名バレ問題」に対する抗議声明
【インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文】
— インボイス制度の中止を求める税理士の会 (@taxlawyer2022) 2022年7月6日
インボイス発行事業者として登録した個人事業主の本名と登録番号が、商用利用可能な「コンテンツ」として国税庁HPから全件ダウンロードできる問題に対し、当事者団体の連名で抗議声明を発表します。#私の名前はコンテンツじゃない pic.twitter.com/X7mKabZn2D
一個人の名前は、経済活動のために消費される「コンテンツ」ではありません。
— インボイス制度の中止を求める税理士の会 (@taxlawyer2022) 2022年7月6日
徴税や経済利益のために、個人の尊厳・プライバシーがないがしろにされるインボイス制度に対し、改めて強く反対します。
連帯してくださる団体・個人事業主の皆さんは、以下ご記入お願いします。https://t.co/U7wko1g73a
声明を発表した俳優、アニメーター、ライター等のフリーランス・個人事業主は、「本名バレ」によって生活を脅かされかねず、強い危機感からこのアクションをとりました。
— インボイス制度の中止を求める税理士の会 (@taxlawyer2022) 2022年7月6日
インボイス制度による個人情報の公表・商用利用に関する問題についてはこちらにも詳しいです。https://t.co/IoshByHofH
個人的所感
私はこの制度の最大の問題点は、
「本来、適格請求書(インボイス)を発行すること自体に、課税事業者か免税事業者かというのは、関係ないのに、課税事業者にならないと発行できなくなるというのは、おかしい」(論理的整合性がなく、必然性もない)ということだと思っていて、それで反対しています。
山田太郎氏の言うように、せめて、適格請求書(インボイス)の発行と免税事業者であること(事業者免税点制度)は分けて考えて、再検討してもらえないだろうか…
と考えます。
petitmatch.hatenablog.com私は免税事業者ではありますが、請求書に関しては、消費税の軽減税率制度(複数税率制度)がある限りは、複数の税率の商品があった場合に分けて記載するのは当然と思うので、既に適格請求書(インボイス)と同等の請求書を発行しています。
*なので軽減税率制度(複数税率制度)がある限りは「インボイスはいらない」とまでは思わないです…
このように、免税事業者でも、既に発行できているものを、課税事業者にならないと発行できなくするというのは、論理的におかしいと考えます。
・取引停止リスク
・事務処理負担の問題
・本名バレリスク
については把握していましたが、日本SF作家クラブの声明による指摘があるまでは、簡易課税にすればいいのかなと、軽く考えていました。
本名バレリスクの元凶となる、「インボイス事業者公表サイト」については、昨年、私も個人で国税庁に意見を送りましたが、何も変化はないようです。
少なくとも、利用者登録&ログインが必要なようにしたほうが良いのではないでしょうか。
www.invoice-kohyo.nta.go.jp
国税庁は、あまりにも実際の事業者の現場を理解していないように思います。
制度の見直しを求めます。
関連記事(インボイス制度関連)
関連記事(選挙全体)
www.businessinsider.jp↑を全部見るのは、大変だと思います。
私のオススメはこのサイトです↓
いわゆる「表現の自由」系候補者に対するアンケートまとめ記事
フリーライターの渋井哲也さんが、6月22日公示、7月10日投開票の参議院選挙で立候補予定者のうち、「表現の自由」について主要政策で掲げたり、訴えの中で取り上げている方々に向けて行ったアンケートをまとめたnoteを書かれています。
個人的にはかなり参考になりました。