- 1・アートの会計・税務に困ったらひらく本 〜芸術文化創造活動の担い手のための会計・税務講座 Q&A 63選
- 2・フリーランスアーティスト・スタッフのための契約ガイドブック
- 3・芸術家等の基礎知識(文化庁)
最近、文化庁や、公益財団法人東京都歴史文化財団(東京都政策連携団体、東京都のいわゆる外郭団体)が本気出してきて、良いガイドブックやリンク集が出たので紹介します。何か新しいものが出たら、随時追加していきます。
1・アートの会計・税務に困ったらひらく本 〜芸術文化創造活動の担い手のための会計・税務講座 Q&A 63選
www.artscouncil-tokyo.jp文字通り、我々のような仕事の会計・税務に困ったときに役立つ本です。
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京から出ています。
個人事業主のほか、NPO法人・一般社団法人・任意団体や、法人も株式会社と合同会社についてまで書いてあるのが親切と思います。
2022年11月時点の情報なので、インボイス制度・電子帳簿保存法についてはちょっと情報が古くて、
・適格請求書発行事業者の登録申請書の提出〆切が9月末にのびた(まだじっくり考えてOK)
www.mof.go.jp
・電子帳簿保存法、売上高5000万円以下は検索要件不要
(売上高5000万円以下の人は、ネット通販のPDF領収書は単純に保管しとくだけでOK)
www.itmedia.co.jp
の2点は書かれていませんが…無料でこれはすごいと思いました。
2・フリーランスアーティスト・スタッフのための契約ガイドブック
theatreforall.net契約する時にどういう点に気をつければいいのか、チェックポイントやありがちな事例集、Q&Aまで充実!
↓こちらがガイドブックのPDFです。
https://precog-jp.net/wp-content/uploads/2023/02/contractguidebook_precog.pdf
イラストレーターに特化した契約書(確認書)については、以前私も「イラストレーション」で記事を作ったので、よかったら下記記事も参考にしてください。
なんと研修動画も出た(2023/3/26)
上記のガイドブックを元にした研修動画です。「契約」とは?の部分がかなり詳しく解説されており、契約に慣れてない人にはこっちのほうがわかりやすいかも…
【注意喚起】契約書見本も出たが、修正必須。少なくとも作家側の立場の人は著作者人格権不行使特約部分は削ろう(2023/9/5)
上記ガイドブックのPDFダウンロードリンクの下に、
「いますぐ使える契約書ひな形」というのがあり、ダウンロードできるようになっています。
この「成果物制作に関する契約書のひな形」を確認したところ、かなり奇妙で…
「文化芸術分野の」「成果物を納入するタイプの契約」の契約書見本で、
利用範囲を定めた「利用許諾」の契約で、「氏名表示」が必須であるのに、なぜか「著作者人格権不行使」が入っています。
一般的には、利用許諾契約では「著作者人格権不行使」は入れないのが常識です。
私の20年近いイラストレーターとしての経験上もそうですし、著作権情報センターでもそのように説明されます。
著作権譲渡の場合には、入れる場合が多いと思います。
下記の記事の、デザインの仕事の例のように、本来的には著作者側でイメージ管理ができることがブランド管理上でのクオリティ担保に繋がるため、ブランディングの観点から、著作権譲渡でも著作者人格権不行使を入れない場合もあります。
sendai-c3.jp
しかしこれは、「利用許諾」で、かつ、「文化芸術分野」を対象にした契約書なので…
「芸術作品」の契約で、「著作者人格権が尊重されない」契約って、一体、どういう仕事の契約を想定しているのでしょうか?
この契約書見本を「自分から提示する契約書」としてこのまま使うと、先日の三井不動産の事件のように、相手先に作品をいじられる事態を、自ら誘発するように思います。
nlab.itmedia.co.jp上記の事件は著作者人格権不行使特約もしていないし、アート作品として納入したものなのに、こんなひどい目にあっているのです。
ですので、作家が「自分から提示する契約書」として使う場合には、下記の部分は削って使うようにしたほうがいいと思います。下記が「著作者人格権不行使特約」の部分です。
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第5条(権利)
〜前略〜
4.受注者は、本条第2項に定める利用に関し、本作品の著作者人格権を発注者又は発注者が指定する者に対して行使せず、かつ本作品の著作者人格権を第三者が有する場合、当該第三者をして、これを行使させない。ただし、発注者又は発注者が指定する者が、著作物の利用に際して、受注者の名誉又は声望を害した場合はこの限りでない。
〜後略〜
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「文化芸術分野の『作品制作』を前提とした契約書見本なのに、『著作者人格権不行使』が入っているのはなぜ?」「具体的にはどういう仕事の契約を想定した契約書なのか?」という疑問は、この事業の事務局にも伝えており、現在やり取りを続けていますが、もうひと月近く、返信がありません…(それもどうかと思います…)
取り急ぎ、被害が拡大しないよう、注意喚起をしておきます。
→【2023/9/18追記】返信がありましたが、ほぼ無回答に等しいものでした。とても残念です。事務局には私の考えを返信し、また、このようなことがあったという報告と、改善のための意見を、文化庁のほうにも送っておきました。
アート作品に関しては、個人的には「著作者人格権不行使」の条件を提示されただけでも、相当な屈辱を感じる作家が多いのではないかなと感じます。
他のパンフレットや動画は問題がなかったのに、肝心の契約書見本で、最重要な部分に問題があるなと感じました。他は特に気になるところはなく、注釈も入っており、大丈夫なのではないかなと感じました。(逆に何で著作者人格権の部分に関して何の注釈もないのか不思議…)
著作者人格権不行使特約については、こちらの本「職場の著作権対応100の法則」のP154-155「067 成果物がクライアントに改変されたら?」の項で、「イラストやコラム記事など、著作者の個性やこだわりが現れやすいタイプの著作物は、不行使同意は避けた方が良い」と明言されています。芸術作品は、個性・こだわりの塊のようなものですよね。
また、応じても問題が起こりにくい場合、応じる場合の交換条件の提示もされていますので、よかったら参考にしてください。
3・芸術家等の基礎知識(文化庁)
文化庁、急にどうしたのかわからないが、良いページが少しずつできております。
www.bunka.go.jp・個人で活動するということ
・社会保障制度
・契約について
・著作権について
・個人事業主の税金
・相談窓口等
※順次公開してまいります。
個人的には「相談窓口」に「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」が載ってないのが謎だったので、ここにリンクしときます。
【2024/4/2追記】最も重要な文化庁の事業なのに…)↓から相談できますよ
も載ってないのでは…(