TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【読書記録】小島さなえ『外国語をつかって働きたい!』(左右社)

小島さなえ『外国語をつかって働きたい!』(左右社)

小島さなえ『外国語をつかって働きたい!』(左右社)

小島さなえ『外国語をつかって働きたい!』読んだ。
これは文字通り、「外国語を使って働きたい」人向けの本です。

著者の小島さなえさんは今はイラストレーターをしているんだけど、
イラストレーターとして仕事を始めたのは35歳のときで、それまでは外国語を使う仕事をやっていて、大学では中国語を専攻していたという方です。

最初に「言語はツール」問題というのが出てくるんだけど、これはまさに「絵を仕事にしたい」人と共通する問題であると思った。つまり、「絵もツール」でしかないということです。
美大だとあまりそういうことは言われない(少なくとも私は言われたことない)が、イラストのスクールに入ったときに「『自分の絵で何をしたいのか』ということをよく考えたほうがいい」みたいなことを誰かに言われた気がするのですが、
国語学部における「言語はツール」問題というのは、それに近いものがあるのではないかと思いました。

あと、これはあとがきで出てくるのですが、翻訳の仕事とイラストレーションの仕事は、かなり近いと私も思いました。
これは結構、世間一般では誤解されてると思うのですが、少なくとも何らかのメディアで使われるイラストレーションの仕事というのは、あくまでメディアビジネスの一部であり、「コミュニケーション」の仕事です。
イラストレーションはノンバーバル・コミュニケーション、外国語はバーバルコミュニケーションというだけで、イラストレーターは「翻訳者・通訳者」であると私は認識しています。
そして明らかに現代の社会におけるコミュニケーションは、世界的にどんどんノンバーバルコミュニケーションに寄っていっていると感じています。(LINEスタンプとか)

また、これも外国語を使う仕事と共通していると思うのですが、「絵が描ける」だけではダメで、絵以外の、何らかの得意分野なり専門性なりと、相手先の業務への理解がないと仕事にならない。でも基礎体力的なデッサン力・画力は必要という…基礎語学力というのがあるのか知らないけど、語学にも多分そういう筋肉部分みたいなのがあるのではないかなと読んでいて感じました。語学における筋肉とはなんだろうか。「わかり合いたい気持ち」とかだろうか。
絵における筋肉は「描く力」というよりは「見る力」で、「観察力」だと思います。
私はデッサン力ないですが…

翻訳のほうはかなりAIへの代替が進んでいるようですが(私もかなり使っている…)既にあるものから機械的に生成できる部分であればAIに代替できるけど、「コミュニケーション」「文化理解」「芸術(文芸・美術)」の部分はなかなか難しいのではないか。とか、結構いろんなことを考えさせられる本でした。
外国語を使う仕事といってもいろいろあるし、イラストの仕事といってもいろいろですが、就活のときはいまいちそれをよくわかっていなかったなというのも、小島さんと同じ気持ちです…