TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【私の経験談】書籍出版に関するトラブルについて(前編・被害の詳細) #出版metoo #おい箕輪

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こちらの、幻冬舎社員の箕輪氏によるセクハラ・原稿料未払いの件ですが

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箕輪氏からではないのですが、私も、今回のA子さんと似たような経験があります。他の人からも同様の、「本を一冊書き上げたけど本が出ず、原稿料がもらえない」という話を聞いたことがあるので、正直「またか」と思いました。

私も、「本を出しませんか」と出版社の編集者から言われて、内容もスケジュールも向こうで決められて作業を開始したのに、途中からいきなり態度が変わって、しかも本の企画も通ってないことがわかり、抗議したら「あなたみたいな無名の人の本が簡単に出るはずがない。出ると思う方がおかしい」と言われたことがあります。

「私から」企画を持ち込んだならまだしも、「本を出しませんか」と「依頼」され、テーマも向こうが提案したもので、スケジュール決めて作業させておいて、それはないんじゃないの??
と思い、周りの人と当時の所属団体の顧問弁護士に相談した上で、相手の上司に事実を報告し、謝罪してもらいました。

謝罪を受けたので、こちらには社名と実名は書きませんが、今後の被害を生まないために、私の経験の詳細を共有します。
他の人には、私と同じ思いは、絶対してほしくないです。私の経験談が、何かの役にたてば幸いです。
以下、ものすごく長くなりますし、かなり不快極まりない内容ですが、ご興味がある方はお読みください。あまりに長くなったので、前・後編に分けました。こちらの前編には、私が受けた被害の詳細を書きます。

【1・私が受けた被害の詳細】

とある出版社の編集者から、
ある年の9月中旬、「本を出すこと前提に、イラストルポの連載をしませんか」と提案を受けました。

10月半ばに打ち合わせということで呼び出され、その時に
「10人取材して、来年4月立ち上げのサイトで6回連載して、
残り4人ぶんは描き下ろしにしましょう。
11月末に取材者を決定、12月にアポ取り、
1月から取材開始して原稿を描き始めて、4月から掲載にしたいので
取材したい人を探してください。16ページで10人分、160ページの本にします」と言われました。

そして、ギャラの金額については、
400字3000円換算。16ページなので、9600字
一記事で72000円(最低保証)
・取材に関する取材費と、宿泊費は支給
・資料代も請求できる。
と言われました。私はそれをメモして記録しました。

また、私は、この1回目の打ち合わせで、企画が通っているかを確認するため、
「企画書を書いたほうがいいですか?それともそちらで作ってくれるのか?」ということを確認しました。
そうしたら、
「うちの会社は企画会議はないんですよ。編集長がいいといえばいいという感じです。なのでほぼ大丈夫です。既に編集長に話はしておきました」と言われました。

それまでのメールのやりとりの内容や、上記の打ち合わせで、
「企画会議はない、既に編集長に話はしてある」
と言われたことで、私は、その企画は決定しているのだという認識をしました。

そこで私は、国会図書館などに行き、企画内容および取材対象について
調査をしました。(1週間ぐらい)

そして11月下旬、取材対象候補のリストを持って打ち合わせに行き、
その前にメールで、取材リストと確認したい詳細などを送っておいたところ、
詳細は会って話しましょうと言われ、会ってみたら、
そもそも企画もなにも通っておらず、
相手としては、あくまでブレーンストーミング段階である
という認識だったことがわかりました。

実際に会ってみると、
こちらに調べさせておきながら、事前に送った資料は読んでこない、
打ち合わせに持っていった資料を全く見ない。また、私の説明も受けず、
「これじゃ企画が通らないんだよねえ〜。」
と言われました。

「企画は通っていなかったんですか?『企画会議はない』のではなかったのですか?」と確認したところ、
「なんにも決まってませんよ。何がいけないんですか?」
と言われました。

そこで私はビックリしてしまって、
じゃあなんで前回、まるで決まったことかのように
スケジュール切ったり、原稿料とか印税とか経費の精算方法
とかの話をしたんですか?
と聞いたら、嫌味たらしく、
「僕はいつもこうやって仕事してきたし、
うちは小さい出版社だから、そういうの察してくれると思っていた。
オオスキさんは文藝春秋とか、大きい会社の人と仕事しているから
そういうのが通じないんですね。だって普通に考えて、出るわけないじゃないですか。
あなたのような無名の人の本が、簡単に出るわけがないですよね。
これだから、大手としか仕事をしたことがない人は困りますね。」
と、いきなり、私を罵倒することで、自分の発言・行動を正当化してきました。

そこで私は、
「確定していないのに、細かいスケジュールを決められて
指示をされるのは、他の仕事もあるので困ります。
本を出すことを前提に連載をする、とおっしゃったから、
時間をとって調査をしたわけなので。
通っていない企画の、いわばブレーンストーミング段階なのに、
こんなに何度も呼び出されるというのも、正直違和感を感じています。」
と伝えました。

そうしたら、

「僕はこんなに、きっちり事前に決めるのは好きじゃないんです。
それで面白い本ができるとも思えないし…」
と返ってきました。

私は、以下のように説明しました。
「しかし、取材するのも文を書くのも絵を描くのも、私だし、
絵はそれこそ手仕事だから、テキストみたいにコピペで文字数調整するとか
そういうこともできないし、取材前にある程度調べて行って、
取材時に脳内で構成して、何を絵にして何を文にするのかを考えながら取材しないといけないから、
スケジュールやページ数や紙のサイズや、事前調査程度のことを
『キッチリ』と言われてしまうと、どうしようもない。
ライターさんと仕事するのとは、違うと思います。
絵を描くのには時間がかかるし、時間の確保が必要なので、タイムマネジメントがすごく重要なんです。
時間が貴重なんです。お会いするときには密度の高い話をしたいんです。
なので、打ち合わせの前には、事前に何について話すのかとか
ある程度決めておきたいと思うし、とにかく時間は貴重なんです。」

そうしたら、
「こんなダラダラした時間は無駄だってことですか?」とスネだしました。

実際、無駄な時間が多すぎると思いました。そこまでヒマじゃない…
ぐだぐだ話すのが楽しい人ならいいのですが、全く底が浅くて、全く楽しくありませんでした。

その後、向こうから提案などもあったのですが、あまりにも浅い思考で、すべて上っ面な感じがしたため、
「そんな上っ面な本でいいんですか?」と聞くと、「上っ面でいいんだよ!!」
と怒鳴りだしたり、
私が、編集者の発言に対しての矛盾点を指摘したり、不明点を質問すると、
「う〜ん…」と黙りこみ、震えて泣きそうになっていたりなど、
編集者として、「仕事」としての「打ち合わせ」とは、とても思えない態度を取られ続けました。

また、「もっと楽しい話をしませんか?他の著者の人は、みんな僕を楽しくさせてくれるようなことを話してくれるのに、
なぜあなたはそれができないんですか?」とも言われました。

その当時、この編集者からは、この本の話以前にも、仕事以外にメールが来ていました。
また、やたら休日に呼び出そうとしてくるのを、何度も断っていました。
私としては、既にその時点で、かなり気持ち悪いと思っており、
イラストの仕事も断っていたくらいです。しかし、その当時私は、本を出したかったので、「本を出しませんか」という誘いは、受けてしまいました。

そういった状況で、このように、「仕事」でもないのに呼び出され、「楽しい話をしろ」と言われ、無理やり会話の相手をさせられるということは、「接待の強要」であり、相手からのパワハラ・セクハラ行為だと、当時の私は受け取りました。
私が女性でなければ、相手はこういった極めて失礼な態度は取ってこなかったであろうことを考えれば、セクハラだと私は思うのですが、セクハラでなくても、特に親しくもない人間に、金銭の発生もないのに「仕事」を理由に呼び出されるというのは、不当な拘束であり、人権侵害だと思いました。
向こうは勝手に「気軽に呼び出せる親しい関係」と思いこんでいたのかもしれませんが、私は全くそうは思っておらず、仕事上の関係だけだと思っていました。何の権利があって、私の人生の貴重な時間を奪えると思っているのか?

なので、
「決まっていない企画で、ここまで時間を拘束されるのは困ります」
と重ねて伝えたところ、
「そっちが著書が欲しいっていうから、やってあげたのにさあ〜。
僕と話す時間が無駄だってことですか〜?」
と、バカにしたような口調で、かつ、自分がさも被害者であるような発言をはじめました。

改めて書きますが、私は彼に対して「本を作ってくれ」とお願いしたことは、一度もありませんし、頼んでもいません。
すべて「向こうから」言ってきたことです。

正直、このレベルの低さにムカつくというよりは、ビックリしてしまい、
「他の著者の方とも、こういう進め方をするんですか?」
と聞いたら、
「僕はいつもこんな感じで、ゆっくりお茶やお酒を飲みながら
楽しく話をして、そこから企画が生まれていますし、
こないだ作った本も、当初の企画とは全然別のものになってますが
面白いものができたと思います。
内容をなにも決めずに取材に行っても、いいものが出来上がってきているし
今までそうやって本を作ってきましたし、それでうまく行っています」
このやり方でうまく行かない場合があるのか…あなたはNHKとか文藝春秋とか、『頭がいい人の世界』の人だから…
出版業界って、僕が『普通』で、僕の周りの編集者やライター、新聞記者はみんな僕みたいな感じで仕事してるんですよ。僕が普通なんです。

これで今まで困ったこともないです。」
「僕は大手では出ないような、自分が面白いと思う本をゲリラ的に作っていきたいので」
と言われ、唖然としてしまいました。

それはゲリラではなくて、単に無計画、丸投げというのではないでしょうか?
そんなんで、ちゃんとした本ができるわけないし、本が売れるわけないと思いました。
取材に対する意識も、低すぎると感じました。

最終的に、「僕は完全に活字の人間で、イラストレーターの人とほとんど仕事したことがないので、僕がこの企画をやるには、荷が重いと思います。
たぶんオオスキさんはイラストエッセイとかをもっとやってて、慣れてる出版社に企画を持っていった方がいいと思います。」
と言われ、この話はなかったことに ということになりました。

なにかと唖然としていたら、
「フリーの人の時間をこんなに取ってしまって、申し訳ないですね」
とかまた嫌味たらしく言うので、またビックリしてしまいました。

「通っていない企画に対して、ここまで作業をし、
打ち合わせ等で時間を拘束されることには、正直違和感を感じています。」
と伝えたところ、「作業をさせたので、調査に関する経費は支払う」とは言われました。

しかし、「通っていない企画」の経費が、一体どこから出るのでしょうか?
この時点で、経費の支払いを確実にするためには、編集長にこの事態を報告する必要があるなと思いました。

ひとまず、その日は私からは、経費の支払いの手続きなど、その後の何かをハッキリさせるようなことは、あえて言わず、帰宅しました。

↓後編に続きます

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