TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【読書記録】『イラストレーターのためのお金の話』サタケシュンスケ(左右社)

『イラストレーターのためのお金の話』サタケシュンスケ(左右社)

イラストレーターのためのお金の話』サタケシュンスケ(左右社)

今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」

先日、左右社さんから、神戸在住イラストレーター、サタケシュンスケさんの新刊『イラストレーターのためのお金の話』が届きました!ありがとうございます。

私はこの本の中で、著作権の部分だけ、ちょぴっとだけ協力したので、ご恵投いただきました。本日12/20発売の本ですが、一足お先に読ませていただきました。

先日インスタ&FBで簡単な感想を書いたのですが、ブログでは詳しい感想を書こうと思います。

感想1・お金の話だけで、こんなに書けるもんなんですね…(272ページもある!!)

まず、想像以上の大ボリュームに驚きました。
「お金の話」と言っても、いろいろネタはあるもんだなと思いました…
この本に書いてあるのは、かなりザックリいうと、下記の内容です。

・そもそも「お金を稼ぐ」とはどういうことか

・そもそもなぜ、イラストでお金がもらえるのか

・「イラストの対価」とは具体的にどういう要素でできているのか

・イラスト料金の相場とは?

・こんなときどうする?
→私はこの部分、P120からの
「『著作権を譲渡してほしい』と言われたら」の項だけ事前に読ませていただき、私の意見を伝えました。

・売上を伸ばすには

イラストレーターとして、どこにお金を使うべきか

・節税

・他のイラストレーターさんはどうしてるの?

これらの項目に対するサタケさんの「考え方」が、かなり細やかに書かれています。

私はそもそも、サタケさんとは「友達の友達」として知り合いました。
人間関係としてそもそも近いところにいるためか、イラスト料金に対する考え方は、かなり近かったです。
考え方があまりに違いすぎる人とは、そもそも知り合わないし、そこまで仲良くなれないと思うので…

しかしながら、この本を読んで、
「私はこれまで、ここまで『イラストの仕事におけるお金』について考えたことはないな…」
と思いました。

といいますのは、私には、若い頃、イラストの仕事にまつわるお金について、気軽に相談できる人が、常に周りにいたからです。
今は自分なりの基準があるので、あまり聞きませんが、たまに聞いちゃいます…
(サタケさんにも聞いていた)←単に私がずーずーしい性格なのかもしれません…

具体的にいうと、編集者さん、学校の先輩(デザイナー、アートディレクターなど)、友達(出版社の雑誌の編集部でバイトしてたので、バイト仲間が編集者になったりしている)、同業の先輩や友達、飲み友達で近い業界にいる人たち(コピーライター、広告制作会社勤務の人たち)などです。

逆に、そういう人たちが周囲にいたことで、逆にクライアントに対しては、ハッキリとお金の話をすることはありませんでした。私も20年くらいイラストの仕事をしていますが、昔は「振り込まれるときに金額がわかる」ことも多かったと思います。
(*下請法は?)
「仲間内のなんとなくの感覚」と、私自身も出版社の雑誌編集部でアルバイトしていた経験があり、「なんとなくの金額感」を知っていたからこそ、
「こういうもんだ」「このくらいの仕事ではこれくらいの金額なんだ」「こういう仕事ではこうやって考えるんだ」と、人から聞いた話に対して、疑問に感じることがなく、そのまま受け入れてしまっていたように思います。
そして、サタケさんのように「お金の話をおおっぴらにすること」に対して、抵抗感があったと思います。お金の話は「内輪でするもの」だと思っていました。

この本のP27-28には、イラストレーターの仕事におけるお金の話について、

”ただし、こうしたことは絵を学ぶ学校では教えてくれませんし、クライアントが手取り足取り教えてくれるものでもありません。”

とありました。

しかし、私の場合、駆け出しの20代〜30歳前後の頃までは、「絵を学ぶ学校」で出会った人たちや、クライアントが、手取り足取り教えてくれていました。
私は、最初に請求書の書き方を習ったのは、売り込みに行って仕事をいただいた出版社の編集者さんからです。
*ちなみに著作権について、最初に教えてくれたのも仕事でご一緒した編集者さんですし、著作権についての記事をブログに書いたら?と提案してくれたのも編集者さんです。

昔の出版業界、編集者は、面倒見が良い方が多かった気がします。
(今も割とその傾向はあると思いますが)
私って人間関係に恵まれていたんだなあ…と、改めて感謝しました。

しかしながら、こういった「内輪の人間関係」がない方もいるでしょう。
今はSNS経由でいきなりイラストの仕事を始める方も多いと思いますし、そういった方には「内輪の人間関係」からの情報がないと思います。
また、「内輪の人間関係」があったとしても、話題としてとっかかりがなくて、お金の話をしない という方も多いような気もします。

それとともに、私はこれまでお金について、サタケさんほど自分の考え方を言語化できていなかったし、ぶっちゃけ、最終的には「気分」「好き嫌い」で仕事の金額を決めていたな…と思いました。(なのである意味、迷いもない…)

しかし、だからといって、それが悪いこととも思いません。フリーランスのいいところは、自分で自分の仕事の値段を決められるところだと考えるからです。
そんなわけで、イラストレーター以外のフリーランスの方にもおすすめです。

感想2・交渉時のメールの文面があるのが良い!フリーランス法や下請法への言及があるのも素晴らしい。

この本の良いところは、「交渉時のメールの文面がある」ところです。
これは以前読んだ『クリエイター六法』でも、同じことを思いました。

petitmatch.hatenablog.comまた、フリーランス法や下請法への言及があるのも素晴らしいと思いました。

ちなみに、私が少しだけ協力させていただいた著作権のページでも、
著作権譲渡をする場合に、イラストレーターの損を減らす契約テクニックについて書かれていますが(P123)、これはもともとは私のブログの下記リンクの記事の有料部分に書かれているものです。参考にしていただき、ありがたい。もっと広まれ!
サポートも圧倒的感謝!

petitmatch.hatenablog.com

また、この本には書かれていませんが、著作権譲渡の際の注意点として、
著作権譲渡費用の設定のない著作権譲渡」があります。
発注者が、著作権譲渡費用0円、または対価として安すぎる金額で著作権譲渡させようとすると、下請法またはフリーランス新法では「買いたたき」に該当するおそれがあります。発注者側が罰せられる可能性があります。
フリーランス新法5条1項4号)

www.kottolaw.com
あまりに安易に著作権譲渡を言ってくる会社とか、著作権譲渡の意味がわかってない会社は、公正取引委員会に情報提供すると良いと思います。
この窓口からチクると、調査の対象になる可能性が高まります。
匿名で情報提供できますよ。

買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報提供

https://www.jftc.go.jp/soudan/jyohoteikyo/kaitataki.html

www.jftc.go.jp

感想3・そして料金表!!

この本には、なんと「サタケさんが考える、クライアントワークにおける媒体別使用料の目安」が載っています。

だいたい同じくらいかも…と思いました。細かいところの考え方がちょっと違うところもあるけど…
私も依頼者さんの予算に合わせる形で、条件で調整しています。

この業界の料金表としては、宣伝会議から出てる「広告制作料金基準表(アド・メニュー)」がありますが、アドメニューはイラスト料金はあんまり書かれていないんですよね。参考にしていますけれど…

ちなみに、イラストレーターの知り合いでは、他には浦野周平さんが料金表を公開しています。

shu-thang.com

サタケさんの料金目安は私と同じくらい…ということは、結構お手頃だと思うんですよね…それでこの年収!!!ゴイス〜!!!!
*なんと、年収推移も赤裸々に書かれているのです!!!

マジで数をこなしているんだな…と驚きました。

感想4・みんな買おう!!

そんなわけで、『イラストレーターのためのお金の話』は、イラストレーター必携の一冊と言えるでしょう!!

1/6に東京の青山ブックセンター本店で白ふくろう舎さん(白さんも10年以上前からの知り合い)と出版記念イベントがあるみたいです。関西でもやってほしい〜

【1/6 (月)】『絵で食べていきたい!-センスと才能に頼らない、イラストレーターの生き残り術』&『イラストレーターのためのお金の話 』発売 – 青山ブックセンター本店

白さんも最近『絵で食べていきたい!』という本を出版されました。

『絵で食べていきたい!』も圧倒的名著です!みんな買おう!!
こちらの本についても、後日詳しい感想を書きます。