- 1・静岡県主催のフォトコンテストの応募規約がひどい
- 2・今どき、まだこんな規約のフォトコンがあるなんて…
- 3・写真コンテストをやりたい自治体職員・公務員はまず、写真著作権協会のガイドラインをチェックしましょう!
- 余談・何で私は写真著作権ジャンルの話題にも詳しいのか
1・静岡県主催のフォトコンテストの応募規約がひどい
本件について、ブログでまとめて欲しいというリクエストがあったので、書きます。
先日、下記のツイートが話題になっていると教えてもらいました。
このようなフォトコンテストには注意してください。
— 関一也@SEKI KAZUYA (@kazuyaseki86) 2023年3月17日
主催側も著作権とフォトコンのあり方というのを作者の為にも考えて下さい。
といっても締め切られてますが… https://t.co/1qWDGCkqVo pic.twitter.com/bHteB1RNJJ
あー、3852名分、3852枚の写真作品の著作権が略奪されたわけね。
— forestthree@ビオトープの中の人 (@forestthree) 2023年3月17日
応募時点で著作権の帰属、無償使用と提供の権利、そして画像の加工への同意、無期限の使用権…
このフォトコンの開催意図が透けるだけ透けて見えて恐怖に震えてる。 https://t.co/KIGVwK1TeV pic.twitter.com/OSSBMNYRxR
これはザックリ言うと、下記のような問題を指摘するツイートということになります。
・静岡県主催のフォトコンテスト(以下、フォトコン)の応募規約がひどい
shizuoka-shinzekkei.com*「新絶景!フォトコンテスト事務局」は「株式会社SBSプロモーション内」とあるので、運営は静岡新聞系の企業みたいですね
・「応募するだけ」で著作権を静岡県に取られ、著作者人格権も主張できず、無償で静岡県が使い放題にできるフリー素材として使われることを承諾する規約になっている
→おかしいのでは?
フォトコンはあくまで、写真を撮った人が「自分から」応募するものなので
著作権譲渡の「強要」ではありませんが、「著作権法を知らない一般の人が、意図せず権利を取られる」という点で、問題がある規約であると私は考えます。
著作権譲渡をしてしまうと、この場合、写真を撮った本人も、静岡県の許可がなければ自由に使うことができなくなります。
例えばですが、写真の撮影者が、インスタで応募した写真を自分のブログにUPしただけでも、静岡県が「著作権侵害」として撮影者を訴えることが可能となります。
また、ブログでも、場合によっては、撮影者が損害賠償請求される可能性すらあります。
この企画に応募した方は、果たして、そういったリスクを理解した上で応募しているのでしょうか?
※そもそも著作権、著作者人格権が何だかわからないという方は、下記の記事をご覧ください。
2・今どき、まだこんな規約のフォトコンがあるなんて…
この「フォトコンテストにおける著作権問題」は、私が知る限りでは、すごく昔(2000年代)から、何度も繰り返し、定期的に指摘されている問題です。
だいぶ前から、写真著作権協会がガイドラインを作っています。
日本写真家協会の会報誌(vol.131)の記事(平成17年だから2005年?)
https://www.jps.gr.jp/wp-content/uploads/2014/07/Workshop_131.pdf
フォトコンテスト主催者の皆様へ(2020年)写真著作権協会
下記は2018年の記事ですが、本件事例について書いているのかと思うほどの内容です。
つまり、それ以前から「あるある」だったということです。
こうしたインスタグラムでの写真公募の場合は、一般の写真コンテストとはちょっと感覚が違っている。つまり、写真コンテストが写真の技術やセンスを重視しているのに対し、インスタグラム利用の写真公募は写真を集めること、または写真を通して主催者がPRしたいものや場所の宣伝を重視している。そうなるとやはり効率のいい写真素材集めに消費者が利用されているといわざるを得ない。
もちろん「権利とかナントカァ、そんなことよくわからないしぃ、インスタで『いいね』をたくさん貰えれば楽しいじゃん」という人もいるだろう。ならば極端な例だが、もしもあなたが応募時点で著作権を取られてしまうコンテストに自信作を応募したとしよう。後日その自信作を自分のアカウントや自身のウエブサイトに載せたとする。すると今度は写真を応募した主催者から著作権の侵害であなたが訴えられる。そんなことも起こりうるのだ。
「インスタ映え」に隠されたやんわりとした権利の取り上げ。手軽すぎるくらいに誰でも写真が撮れて、そして発信者になれる。そんな時代だからこそ、それにまつわる権利についても少し意識を高めてほしい。
この問題については、古くからある問題なので、カメラマンの方もブログを書いていたりします。(フォトコン 著作権 とかで検索すると出てきます)
ですので、個人的な印象としては「今どき、まだこんな規約のフォトコンがあるなんて…」と思いました。
私が知る限りでは、民間のコンテストでは最近は滅多に著作権譲渡はないと思いますが、行政は対応が遅れているようです。
実際に、私は、以前、某自治体から「運営するクリエイター向けホームページに対して意見を言って欲しい」という依頼を受け、そのサイトを確認したところ、やはり著作権譲渡が前提となっている、他の地方自治体主催のフォトコンの作品募集が掲載されているのを発見し、問題点を指摘したことがあります。
「これじゃあ、『うちの自治体はクリエイターを奴隷として扱います』ってわざわざ宣伝してるようなものだから、これ以上、人口の流出を防ぎたければ、今すぐやめたほうがいい。クリエイターを移住させたいのに、奴隷扱いじゃあ、来るわけないですよ」と…
著作権譲渡のフォトコンでも、応募する人が全員、著作権法をしっかり理解した上で、ボランティア精神とか、自己顕示欲とかでやるというなら、それは止められないと思います。
しかし、著作権譲渡の必要性が全くない(利用許諾で十分対応できる)のに、「とりあえず譲渡させる」というのは、著作権法の目的(文化の発展)に反するように思います。
3・写真コンテストをやりたい自治体職員・公務員はまず、写真著作権協会のガイドラインをチェックしましょう!
以下に参考資料のリンクを貼っておきますので、ぜひこちらをお読みになってみてください。写真著作権協会のほうは繰り返しになりますが…
一般社団法人・日本写真著作権協会ホームページ「フォトコンテスト主催者の皆様へ」
jpca.gr.jp著作権法上、著作権は著作者に帰属するのが原則であり、写真の場合は、撮影者に帰属することが原則です。何らの対価もなく、一方的にこれを主催者に帰属させることは著作権法の精神に反しますし、近時は、「炎上」と呼ばれる事態に発展することも少なくありません。
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)「コンペティションのガイドライン」
www.jagda.or.jp応募作品の知的財産権
p.22
"応募作品の知的財産権の取り扱いに注意し、必要以上に権利を譲渡させたり、
制限をしないこと。また、不採用作品の権利を主催者に譲渡させてはいけません。"
"○本モデルフォーマットは、汎用性がないというシンボルマークの特殊性から、変形・翻案権以外の著作権を主催者 に帰属 させるものですが、グラフィックデザイン作品全般については、著作権は制作者(応募者)が原則として留保し、発注者(主催者)に著作権を移転することが必要かつ合理的か否かを、双方でその都度、慎重に協議すべきです。
○不採用作品の著作権などの権利は、主催者に譲渡されません。
余談・何で私は写真著作権ジャンルの話題にも詳しいのか
私は基本イラストレーターなのですが、写真作家としてもほそぼそ活動しており、自分で写真集を作って売っていたり、書籍装丁や商業媒体にたま〜に写真を提供しており、「日本カメラ」「アサヒカメラ」の二大写真雑誌に何らかの形で掲載の経験があるという、かなりレア人材で、実は写真著作権も割と詳しいです。著作権の話でメディアに出たのは、写真著作権の話のほうが実は早いです。
petitmatch.hatenablog.com↓写真のほうの活動について詳しくはこちら(下の方)
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