下請法が改正になるみたい
下請法が改正になるみたいです。
フリーランス保護へ下請法改正 一方的な契約変更を是正: 日本経済新聞
"法を改正し、下請けが個人事業主の場合は「資本金1000万円以下」の発注者も対象に加える方針だ。"
というのが、イラストレーターとその周辺の方々には、かなり影響がありますね。
これは特に、出版業界で仕事しているイラストレーター(だけでなく、フリーランスの方全般)には影響が大きいんじゃないかなと思います。出版社は、資本金が一千万以下の会社がけっこうあるからです。
編集プロダクション経由で仕事する場合もあると思いますが、編プロや個人の編集者さんで、資本金が一千万超える会社にしている形って、そんなにたくさんあるのだろうか…(あるのかもしれませんが)
イラストレーションの作成は、下請法上では「情報成果物作成委託」に該当する場合が多いです。
↓「コンテンツ取引と下請法」パンフレット
今まで、出版社や編集プロダクションで、資本金が1千万円以下の会社は、下請法の対象外でした。
しかし下請法が改正されると、資本金1千万円以下の企業も下請法の対象になります。
私自身は、今のところ、取引先の資本金額に関係なく、下請法に準ずる形で書面を作成したあとに仕事をスタートしています。
なので、下請法が変わっても、特に何も変わりません…
しかし、下請法対象外を理由に、支払いが遅い会社もあります。
*下請法適用企業の場合、受け取りから60日以内に支払いが必須です
ひどいところになると、書面を残さずに口約束のみで発注し、仕事をさせておきながら、後になってゴチャゴチャ言い出し、お金を払わずに逃げるスタートアップの会社があるというような話を、聞いたことがあります。
そういうダメな会社があるから、今回法改正がされるんだと思います。
また、この下請法改正は、インボイス制度の導入によって考えられる「インボイスを発行できない事業者に対する一方的な値下げ」に対する予防策ではないかという話も、Twitterで見かけました。
インボイスを発行できない事業者に対する一方的な値下げは下請法違反になる可能性がある。
— 米津良治/BASE(ベイス)総合会計事務所 (@zeiri4z) 2022年9月4日
ただし、発注者が資本金1,000万円以下なら下請法の規制対象外だった。
この発注者側の資本金要件を外す見通し。インボイス値下げをきっかけとした下請法違反が続出するかも。 pic.twitter.com/vZzuRMGmPk
下請法適用企業になると、発注者側は、親事業者の義務として下記の4つの義務が課されます。
書面の交付義務 発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。
支払期日を定める義務 下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。
書類の作成・保存義務 下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。
遅延利息の支払義務 支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。
私が使っている確認書は、下請法上で必要な書面(3条書面)の代わりに使えるものです。下記のリンク先の有料部分で、確認書フォーマットがダウンロードできるようになっています。
petitmatch.hatenablog.com
イラストレーター向けですが、googleドキュメントで作ってあるので、他のフリーランスの方向けに転用するのも、簡単にできると思います。
(私は文章の仕事や、他の仕事でもこの確認書を使っています。)
下請法に準じた書面を作るのはそんなに難しくないので、よかったら使ってみてください。
弁護士:河野先生による想定事例解説(漫画家とアシスタントの場合)
いいことではありますが、かなり影響が大きいように思います。フリーランスにとっては、先日のガイドラインも併せて、保護が拡充されることになるでしょう。ただ一方で、見逃してはならないのが、資本金要件が撤廃されることにより、個人の法人成りした会社でも、下請法が適用される可能性があること。 https://t.co/XQJjcaK6Q5
— 弁護士 河野冬樹 (@kawano_lawyer) 2022年9月6日
例えば漫画家とアシスタントとの関係で、ある程度売れると漫画家さんが法人化しつつアシスタントを入れることはよくある。そういう場合、これまでは資本金が1000万円以下なら適用対象とならなかったが、今後は、情報成果物の作成の一部の委託として、下請法の対象取引になる可能性がある。
— 弁護士 河野冬樹 (@kawano_lawyer) 2022年9月6日
下請法の対象になった場合、3条書面の交付等が必要になるが、実態として、漫画家さんなどは3条書面どころか契約書すら作ってないケースも多々あり、今後、対応を迫られることになると思われる。
— 弁護士 河野冬樹 (@kawano_lawyer) 2022年9月6日
ちなみに、下請法によるフリーランスの保護については、去年の三月に公表された、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が引き続き参考になると思われます。 https://t.co/QQg5apDYQc
— 弁護士 河野冬樹 (@kawano_lawyer) 2022年9月6日