TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【弁護士監修】イラストレーターがつくるべき「確認書」のススメ

1・はじめに

はじめまして。フリーランスイラストレーターをしているオオスキトモコと申します。

2002年に美大を卒業して、出版社や新聞社などでの勤務を経て、フリーランスとして主にイラストの仕事をしています。たまに写真や文章の仕事をすることもあります。基本的には出版のお仕事をすることが多いのですが、WEBの仕事や、企業の広報誌、広告などでも仕事をしています。 

具体的には、こういった仕事をしています。
www.tomokooosuki.com
様々な企業の担当者と仕事をするなかで痛感したのが、「企業の中にはイラストレーターへの発注の仕方がわからない人が少なくない」ということでした。 

とりわけ著作権法、下請法に対する十分な理解がある人は少数派です。 
私は自衛の手段として、著作権法を含む知的財産に関する法律の勉強をはじめ、先日、3級知的財産管理技能士の資格を取得しました。今後、2級まで取得する予定です。

petitmatch.hatenablog.com

今回この記事で取り上げる「確認書」は、仕事を受ける際に、トラブルを未然に防いだり、記録として残しておき、トラブルになった後の交渉時に、受注時に合意した諸条件の記録として使用するためのものです。

私は2014年頃から確認書の使用をはじめ、いまに至っています。 

イラストレーターとしての自分に沿った形で作っていますが、他のフリーランスの方にも流用可能な部分も多いと思います。

また、逆に発注者側の方にもぜひ読んでほしいと思います。そうすれば、あとから「流用についての確認をとっていなかった」というようなコミュニケーションミスを減らすことができると思います。

*【注(イラストレーター向け)】ゲーム・キャラクター関連のイラストの仕事は、私が普段請けているイラストの仕事とは、商習慣が違うようです。そちらの方面のイラストレーターさんには、この記事はあまり参考にならないかもしれません。

2・イラストレーターがつくるべき「確認書」とは? 

私は、仕事を引き受けるとき、作業に入る前に、確認書(CONTRACT SHEET コントラクトシート、契約書)を作るようにしています。

仕事内容、作品の用途、諸条件を明確にし、諸問題を未然に防ぐための書類です。
具体的には、下の画像のようなものです。

私が実際に使っている確認書のフォーマット 

私が実際に使っている確認書のフォーマット 

本来であれば、下請法の適用対象となる取引にあたる場合には、親事業者(依頼者側)が、発注に際して、必要な事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。

*【藤森弁護士のコメント】下請法の対象となる取引にあたるかどうかについては、下記を確認するようにしてください。

www.jftc.go.jp

しかしながら、実際のイラストレーションの仕事の実務上では、書面は作らず、メールで上記の内容をやり取りする場合も多いのではないでしょうか。

この確認書は、この3条書面の代わりに使えるものです。 1枚で諸条件を一覧・確認できますので、後日「あの仕事どういう条件だったかな?」と振り返るにも便利です。 
下請法適用外の企業様相手の仕事でも、私の基準として「下請法に準ずる形」ということで、この確認書を使わせていただいています。 

この記事は、ぜひイラストレーターに依頼する側の方にも目を通してもらいたいと思っています。発注者でも、こういうことをまったく知らずに仕事する方もいます。 そういう方には、まずこの記事を見せながら、発注できること、すべきことについてお互いに理解すると、信頼関係も生まれます。 

この確認書は、下記の「お仕事確認書」を、私の仕事の実態に合致した形に改造し、かつ、クラウドサインでの電子契約に最適化しています。googleドキュメントとクラウドサインで完結できる形にしています。 

note.com

help.cloudsign.jp

それをさらに、東京スプラウト法律事務所の藤森純弁護士にチェックして頂いたものになります。  

sprout4.com

3・免責事項 

この記事および確認書フォーマットは、あくまで「私が使っている確認書を紹介するもの」になります。この記事を読み、確認書を利用してトラブルが発生した場合、読者・利用者又は第三者に損害が生じた場合であっても、当方は責任は負いません。 

有料記事部分では、確認書がコピー可能&ダウンロードして利用できる形になっていますが、ご自分のお仕事に合わせた形で、自己責任で記入し、お使いください。 
必要に応じて、専門家によるリーガルチェックを受けることをおすすめいたします。 
 
【注(イラストレーター向け)】
私は、「イラストレーションを使用したデザイン制作物」の、「デザインにおける最終責任」は、「デザイナー又はアートディレクターが持つべき」と考えています。「イラストレーションはデザインの一要素・一素材でしかない」と考えています。 

その考えをもとに、デザイン上必要な範囲でのイラストレーションの色変え・加工・トリミング等は、全て認めています。 

私が契約上、そもそもイラストレーションの色変え・加工・トリミング等を利用許諾の範囲内として認めていることからしますと、私がその点においてが著作者人格権を主張することはあり得ません。このため、私との契約の中には、 いわゆる『著作者人格権不行使特約』を入れる必要はないのではないかという考えを持っています。

そのため、クライアント側が提示する契約書に、いわゆる「著作者人格権不行使特約」が入っている場合には、これを削除してもらっています。
著作者人格権不行使特約」を削除しても、確認書に

「◆イラストレーターは著作者人格権を行使できます。デザイン上で必要な範囲でのイラストの色変えや改変については、承諾します。」

とあるため、クライアント側では問題なくイラストの利用ができるためです。
なので、「自分の絵を、他の人にとにかくいじられたくない」「色についても自分で責任を持ちたい」という考えの方には、この確認書は合わないかもしれません。 
*「著作者人格権不行使特約」については、有料部分で詳しく説明しています。

4・各項目についての解説(無料部分)

こちらの確認書の上の項目から、順に解説していきます。

書類作成からサインまでの流れ

書類作成からサインまでの流れですが、私の場合は、下記のような流れをとっています。
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【私】googleドキュメントで確認書書面を作成 (各項目は私のほうで入力)
→PDF化
  ↓
【相手先担当者】PDFでチェックしてもらい、OKをもらう(修正項目があれば修正)
  ↓
【私】クラウドサインに確認書PDFをアップロード
  ↓
【相手先担当者】クラウドサインで最終確認し、問題なければ日付とサインを入力&チェックボックスにチェックを入れる。 

help.cloudsign.jp

  ↓
合意締結

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では、各項目に付いて解説していきます。

 

記入日

これは、相手先(クライアント側担当者)に記入してもらう項目です。お互いに全ての項目の確認が終わったあと、クラウドサインでサインしてもらうときに、その日の日付を入力してもらいます。

(例)2022/1/22

 

氏名(担当者名)

こちらも、相手先(クライアント側担当者)に記入してもらう項目です。お互いに全ての項目の確認が終わったあと、クラウドサインでサインしてもらうときに、お名前を入力してもらいます。

(例)編集 花子

会社名・部署名/会社住所/会社電話番号/メールアドレス

こちらは、相手先(クライアント側担当者)の連絡先を記入します。
(例) 会社名・部署名 -     〇〇出版    第3編集部 △△マガジン編集部                           会社住所  -     東京都千代田区神田神保町○- ○- ○
会社電話番号  -  00-0000-0000  
メールアドレス - 〇〇@〇〇.com 
のような感じです。

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クライアント名(及び発注者) 

この点線から下の「クライアント名(及び発注者) 」は、「大元のクライアントがどこの誰なのか」を記入します。
サインする担当者・企業と同じ場合は、繰り返しになりますが、同じ項目を記入します。 

(例)〇〇出版    第3編集部 △△マガジン編集部 編集 花子

*担当者の所属企業とクライアント名が異なる場合の例
・編プロ・個人編集者から出版物のイラストの仕事が来る場合。
・広告イラストの仕事が制作会社or広告代理店の制作部から来て、もともとのクライアントは企業or広告代理店の場合。
・イラストレーションエージェンシーからイラストの仕事が来る場合。
 →このような場合には、「大元のクライアント」の企業名・わかれば部署・担当者まで記入します。 

使用媒体(★現時点で判明している全ての使用用途をお伝えください。) 

イラストをどの媒体に使うのか、また使う予定があるのかを記入します。
これはギャランティ(原稿料)の算定に関わってくるので、必ず確認し記入します。 

これは広告だけでなく、たとえば紙の本のイラストの仕事だったとしても、販促でウェブ記事にするときに使用されたり、海外版に使われるときなどがあります。 その場合、WEBへの二次使用料・海外版使用料として別でお金がもらえるのか、それとも「本の関連販促物も全て込み」で金額を提示されているのか?というのを確認したほうが安全です。 
イラストの使用範囲を、あらかじめ確認しておく意味で、重要な項目といえます。 

媒体タイトル(または企画名や記事名)

イラストが使われる媒体のタイトル、または企画名や記事名を記入します。  使用期間  イラストの使用期間について記入します。出版物の場合は発行日を記入します。 

(例) 2020年2月1日(発行日)から○ヶ月/1年/3年 この項目が必要なのは、主に広告の仕事において、競合他社での仕事に影響してくるからです。

発行部数

イラストが使われる媒体の発行部数です。

(例)10万部

これもギャランティ(原稿料)の算定に関わってくる項目です。

媒体サイズ

イラストが使われる媒体の仕上がりサイズを書きます。

(例)A4ワイド

これは、最終仕上がりサイズに合わせてイラストの原稿を作るために、確認が必要な項目です。
複数媒体にイラストが使われる場合で、かつサイズに大きく違いがある場合には、それができるようなデータの作り方や元原稿の作り方を考える必要があります。

使用地域

イラストの使用地域です。

(例1)日本全国
(例2)東京都内
(例3)台湾・香港を除く中国

これは広告の仕事では、イラストレーションの露出範囲の管理のために記入します。
出版の場合は、どの国で出版・流通されるものなのか?という確認の為に記入します。

*書籍の海外版は各国版・各言語版ごとに別料金で、その都度二次使用料をいただく場合がほとんどです。あまりないですが、海外版の特定の国の分だけ、印税契約になったことがあります。

データ形式・点数 - ネガ・PSD・JPG・その他  点

納品データ形式と、点数について記入します。

ここに「ネガ」が入っているのは、私は写真作家としても活動しており、ネガフイルムの貸し出しを行う場合があるためです。たいていPSDですが…

*【注(発注者向け)】ちなみに私は、イラストを未だに手描きで描いているため、Illustrator形式(.ai形式)での納品ができません。
しかし、線の色変え、レイヤー分けなどはPhotoshop形式(.psd形式)のデータでもほぼ同じことができます。
もし「デザイナーさんのほうで色変えの可能性があるからIllustrator形式(.ai形式)で」と思われてる方がいらっしゃいましたら、ご相談ください。
私は、デザイン上で必要な範囲での、イラストの色変えや改変については、承諾しております。線画のみ納品し、デザイナーさんの方で色を塗ってもらうという形で納品する場合もあります。  

色(4C、2C、1C/RGB・CMYK

これは、イラストの色についての確認項目です。
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4C→フルカラーのことです。

2C→2色のことです。何と何の2色なのかを記入します。
(例)MK:マゼンタと黒の2色、CK:シアンと黒の2色、 K+特色の2色で特色はCでデータ作成 などいろいろなパターンがあります。

1C→グレースケール、モノクロ・白黒のことです。

【注(発注者向け)】近年、フルカラー印刷が安くなっていることで、2色の仕事は減っており、2色の印刷の経験がない編集者さんや担当者さんも結構います。
「何の2色にするか」は、印刷経費に関わってくることなので、イラストレーターが決定できるものではありません。
発注者側のほうで、デザイナーさんとよく相談して、ご指示ください。
私も印刷については、なるべく勉強するようにしておりますが、デザイナーさんのほうが、印刷には圧倒的に詳しいはずです。(意見を聞かれたら答えますが…)
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RGB→テレビ・WEB・デジタルサイネージなど、いわゆるスクリーンメディアの画像はRGBです。光の三原色、「R=レッド(Red)・G=グリーン(Green)・B=ブルー(Blue)」の3色で色を表現するデータです。

www.mdn.co.jp
CMYK→印刷用データ、紙やモノなどに「印刷」する画像のデータはCMYKです。 印刷の三原色、シアン (Cyan)、マゼンタ (Magenta)、イエロー (Yellow)に、キープレート(key plate)の黒を加えた4色で色を表現するデータです。

*Kは「Kuro」ではないんですよ、実は…私も長年KUROだと思っていたんですけど…

www.mdn.co.jp
*【注(発注者向け)】
なぜ最初の段階でRGBかCMYKかを確認する必要があるかというと…
一般にRGBデータのほうが色が鮮やかで、RGBデータをCMYKに変換すると色がくすみます。
なので、印刷に気合いが入っているデザイナーさんやご担当者様・クライアント様の場合、イラストレーターはRGBでデータを渡し、印刷所でCMYK化を行う場合があります。(原画入稿のこともある)
デザイナーさんのほうでRGBのデータをCMYK化したい、という方もいます。
その一方で「はじめからCMYKデータで欲しい」というデザイナーさんも多いです。 

また、別の理由としては、「WEBにも紙にも載せる」という場合、そもそもRGBデータがある必要があります。印刷だけで使うデータだったら、CMYKではじめから色を塗ったほうがきれい(印刷再現性が高い)ですが、「WEBにも紙にも載せる」場合はRGBデータがまずきれい(WEB上で見てきれい)である必要がありますし、またクライアント企業側での画像データ管理の問題もあるため、「何のカラーモードで、何のデータが欲しいのか」を、先に確認させていただきたいです。

私は数パターンのタッチ・色の塗り方があり、フルアナログ(線画から色塗りまで全部手描きで原画納品)のものから、アナログで描いてデータ化して納品するもの(これが一番多い)、線画はアナログで色塗りはデジタルなど、いろいろなやり方を仕事によって使い分けています。 
「メディアに掲載されたときに、最も美しく見えるような状態」かつ、「関わる人が最も楽に扱えるような形式」で、イラストレーションを作成するようにしていますので、どういう形で納品するのがいいのか、必要なデータ形式・色については、先に教えて頂ければ幸いです。 

5・各項目についての解説(有料部分)

申し訳ないですが、以下の確認書の解説部分と、解説部分の最後にある、確認書のダウンロードリンク部分については、有料とさせていただきます。
この記事は、私自身の調べ物・執筆時間のほか、編集者さんに意見を伺ったり、弁護士さんのチェックを受けていたり、それなりのコスト・経費がかかっているためです。
(経費参考・弁護士さんのタイムチャージ金額:1時間につき税抜2万1000円×数時間分)なので、ご購入頂けると、とても嬉しいです…

・各項目についての詳しい解説(上記のつづき)
著作権法についての基礎(2022/7/14に、↓に少しサンプルを出しました。)

petitmatch.hatenablog.com・【参考:イラストレーター向け】「著作権譲渡」「著作者人格権不行使特約」が入った契約書が来た場合の対処法 
が書かれています。

*私に仕事の依頼をご検討いただける方には、この記事の有料部分も無料で読めるように手配いたします。ご希望の方は、記事の送り先メールアドレスを、メールでご連絡ください。
連絡先:mail@tomokooosuki.com

↓以下、有料部分 

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↑有料部分終わり   

6・謝辞 

こちらの記事作成にあたっては、出版社勤務・K氏の協力をいただきました。
また、確認書作成にあたりお世話になりました、東京スプラウト法律事務所の藤森純弁護士に、この解説記事における法律面でのチェックもお願いいたしました。 ありがとうございました。  

7・参考文献 

・「【国家試験】知的財産管理技能検定公式テキスト3級 改訂12版」知的財産教育協会 編:アップロード
↓最新の13版はこちら

 

・「Q&Aでわかる!イラストレーターのビジネス知識」東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS) 編 アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら):玄光社


・「プロとして知りたいこと全部。イラストレーターの仕事がわかる本」グラフィック社編集部+竹永絵里 編:グラフィック社


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