TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【読書記録】「クリエイター必携 ネットの権利トラブル解決の極意」はリーガルテックサービスを考えてる人にこそ読んで欲しい

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 ■岩崎さんとは情報交換仲間

「クリエイター必携 ネットの権利トラブル解決の極意」(秀和システム)が、先日発売になりました。
著作権とは?みたいな法律解説ではなくて、実際にどうすればいいのか?というのが、たくさん載っている本です。

 

この本の著者の一人である、写真家の岩崎拓哉さんとは、数年前から、画像無断使用対策に対する情報交換をさせていただいています。(私も岩崎さんもアサヒカメラムック「写真好きのための法律&マナー」 https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19907 に出ています)

 

 

■COPYTRACKは万能ではない 岩崎さんには発信者情報開示請求でお世話になりました

私もネットに画像をUPしてますので、悪いやつに画像を商用目的で勝手に使われることがあります。
そういった際には、私はCOPYTRACKというシステムを使って対策を取っています。

しかしCOPYTRACKも万能ではなく、基本的には犯人の連絡先がわからないと、どうしようもありません。

約2年前に、発信者情報開示請求(私の画像を無断で使ってる犯人の連絡先を、プロバイダに教えてもらう手続き)を自力でやったのですが、その際に岩崎さんの発信者情報開示請求について解説しているブログを発見しました。
岩崎さんのブログに書いてある通りにやって、その後、岩崎さんからご親切にツイッターで連絡をいただき、岩崎さんのアドバイス通りに行動したところ、無事料金回収まで成功しました。
(連絡先がわかってからはCOPYTRACK→弁護士さん経由で回収しました。)

■岩崎さんはメチャメチャ法律にお詳しい!めちゃんこ親切な本!

岩崎さんは、基本的には夜景をご専門・お得意とする写真家なのですが、法律が趣味らしくて、非常に法律にお詳しく、発信者情報開示請求どころか、本人訴訟もガンガンやっています。すごいね
共通の知人の弁護士さんが仰るには「岩崎さんは下手な弁護士より著作権にお詳しいですよ!」とのことでした。

そんな岩崎さんが書かれた本ですので、かなり実践的な本になっています。
ものすごい細かいところまで、メチャメチャ親切な本です。
特に、「判断フローチャート」があって、そこから細かい実務に移っていく構成や、弁護士・司法書士にお願いする場合の料金シミュレーションまで載ってるのが、ホント親切だなと思いました。
私がお世話になった発信者情報開示請求についてはもちろん、弁護士さんに、最初に問い合わせメールするときの、文面サンプルまで載っている!
しかも、内容証明書類や、裁判に必要な書類のダウンロードもできる。
全体に、岩崎さんらしい、細やかな気配りが感じられ、素晴らしいと思いました。

 

 

■私自身は本人訴訟はめんどくさいし、リーガルテックでどうにかならんの?と思っている

が、本を読んで改めて感じたのですが…
私は訴訟まで自分でやるのは、さすがにめんどくさいな〜と思いました。
あと、自分で犯人と連絡を取ると、犯人に個人情報が伝わるのが嫌だ。
裁判なんて本人訴訟したら、犯人に顔と個人情報が割れてしまいますし。
そのへん、リーガルテックでどうにかならんの??
と思っております。

ぶっちゃけ今、日本には、インターネット関連&著作権が専門の弁護士って、あんまちゃんとした人がいないのです。
警察もほぼ機能していないです。
警察署の著作権事件担当が、著作権法違反が刑事事件になることを知らなかったりするし…(私個人の実体験からの印象です)
また、弁護士に説明するにしても、この分野は、法律自体を理解しているだけではダメで、業界慣習とかを理解しないと、どうしようもないところがあります。なので弁護士さんに「何が問題なのか」を理解してもらうことが、すごく難しいと感じます。

しかも、損害賠償請求で回収できる金額が、労力に対して少なすぎると感じます。弁護士さん頼むと、だいたい赤字になります。
なので日本では、インターネット&著作権絡みの事件は、ほぼ野放しになっています。
また、そういった現状から、こういった『本人訴訟』の本のニーズがあるわけです。
逆に言えば、この分野のリーガルテックビジネスは、本気でやればブルーオーシャンだと思うんですよね…

■この本はクリエイター(著作権者)のほか、「個人向けのリーガルテックサービスを考えてる人」に、ぜひおすすめしたい

なので私としてはこの本は、クリエイター(著作権者)のほか、「個人向けのリーガルテックサービスを考えてる人」に、ぜひおすすめしたいです。
この本には、「個人で画像無断使用に対峙するときに何が困るのか、法的手続きにおいて何がハードルになるのか」が、ほぼ全て書かれているのではないでしょうか?

私個人としては、PIXIVとCOPYTRACKと弁護士ドットコムが業務提携して、日本でリーガルテックサービスやらないかな〜と数年前から勝手に思っているんですが…朝日新聞がBindedに投資してるのは、ホント先見の明があると思う。(Bindedは基本はブロックチェーン著作権管理をするサービスで、不正モニタリング機能もベータ版だけど一応あるというサービス)