TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【読書記録】圏外編集者

 

圏外編集者

圏外編集者

  • 作者:都築 響一
  • 発売日: 2015/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

初めの100ページくらいと、最後の第8章は、面白かったし勉強になった。私も今、自分で本を作って売っているので、私もやるぞオリャー!と思えた。

しかし、ぶっちゃけそれ以外の部分は、つまらなかった。「日本の地方に住んでる人は、東京に対するコンプレックスを感じて生きている、それをなんとかしたい」みたいな話がでてくるが、私の印象では全く真逆で、都築氏自身が、東京都心以外の「地方」に対して非常に強い差別意識があり、その一方で「東京の都心に実家があって、なんの苦労もなく生まれつき高評価額の不動産を持っており、東京の価値基準しか持たない」自分自身にこそ、強いコンプレックスがあるのではないか、と感じた。

私は日本の地方である熊本の出身だが、熊本の人ってみんな熊本大好きだし、そういう地元大好きな人は、九州の人には多いと思う。私は別に熊本(九州)が嫌いで東京に出てきたわけではなく、大学受験に失敗して東京に出てきたのだ。(本当は福岡にかつてあった九州芸工大に入って、九州松下電気に就職したかったんだけど、東京の武蔵美しか合格しなかった)

これは東京に近い、神奈川県、とくに横浜の人もそうだと思う。横浜の人は横浜大好きで地元離れたくないという人が多い気がするのですが…

あと、四国の人も地元が好きな人が多い印象があるし、私個人の経験としては地方出身で地元が嫌いな人は、あんまり会ったことがない。単に都築氏へのリップサービスで地元を卑下しただけの発言を、言葉の表面だけ受け取って、彼自身が安心しているだけのように感じた。

「〇〇レペゼン、アンチ東京」な人は、昔からいたと思う。単にわざわざ言わなかっただけで…

ちなみに私は熊本大好きだけど、アンチ東京ではありません。東京も好きである。東京も良いところである。今のところは熊本にも東京にも家があって、幸せハッピーである。

あと、地方のFMラジオがつまらないという話が書いてあったのだが、私の印象では、地方でもシティFM局はたくさんあるし、面白い番組はたくさんあると思う。私はトーク番組好きだし、ラジオイコール音楽番組、トーク番組は低俗、という発想も、視野が狭いなと思った。単に都築氏が日本のラジオ番組のターゲットになってないだけである。古い音楽が聞きたいなら、地方のラジオ局がつまらないとdisらず、自分が好きな曲かけてくれるアメリカの局をインターネットラジオでもなんでも、黙って聞けばいいじゃん…と思った。私は平日はほぼ毎日一日中何らかのラジオ(または、インターネットラジオ)を聞いているので、全体的に「この人は本当に今の日本のラジオを、一通りでもチェックしてから物を言っているのか?」と疑問に感じた。

あと、これは他の40代以降の、とくに男性と話しているときにも感じることが多い違和感だが、なんで「自分がよいと思ったものをメディアが取り上げない」ことに、「悔しさ」を感じるのか?そんなに「メディア」って権威かな?と、逆に既存メディアへの信頼感や権威意識が強く感じられ、他のページでの批判と矛盾を感じ、それも捻れたコンプレックスを強く感じる部分だった。

申し訳ないが、「ロードサイドジャパン」以降の都築氏の活動は、東京都心育ちのボンボンが、「負け組」ぶって、地方文化を「新たな消費対象」として捉えているだけなのでは?という印象を受けた。まあ、そういうのを面白がる人がいるのは理解できるし、やるなとは言わないけど、私個人としてはあまりよい印象を受けなかった。
こんなに長い時間かけて世界中回って取材活動していても、感覚が「視野が狭い東京ローカル人」のままでいられるって、逆にすごいなとすら感じた。他にも、私とは感性合わないなーと思う部分が大量にあった。

まあそういう、「変われない部分、偏見」こそが、「編集者としての個性」であり、本(読み物)を作る上で、実は一番重要な部分なのかもしれない。