TOMOKO OOSUKI

イラストレーター オオスキトモコのブログです。

【漫画家・イラストレーター向けアンケート調査(5/8まで)】著作権・著作者人格権の契約について

「日本フリーランスリーグ」という新団体ができ、
漫画家・イラストレーターを対象に、著作権著作者人格権の契約についての調査を行っているようです。

漫画家・イラストレーターの権利と、出版社・TVなど メディアの対応についての緊急実態調査  < 締め切り5月8日(水)正午>

docs.google.com
タイトルが「漫画家・イラストレーターの権利と〜」ってなってますが、
実際には著作権著作者人格権の契約どうなってるの?というアンケートです。
この件に関しては、私は思うところがモリモリたくさんあるので、
「その他」に、超長文を送りつけてみました。


「日本フリーランスリーグ」というのは、連合(日本労働組合総連合会、主に大企業の労組を束ねる組織)がやっているフリーランス向け活動「Wor-Qサポートセンター」 https://jtuc-network-support.com/ の発展系団体のようです。

fl-jp.org

フリーランス協会(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)と違い、既にある各職業団体と連携して調査を…というのは、方向性としては賛同できるのですが、しかし代表者(発起人)が連合の人であることに一抹の不安が…

正直なところ私は、連合に対して、良い印象は持っていないのですが、
著作権著作者人格権の契約が現状どんな感じになっているのかは知りたく、純粋にこのアンケートの結果は見てみたいと思っています。

フリーランス協会の問題点まとめはこちら

petitmatch.hatenablog.com

petitmatch.hatenablog.com

いろんな団体があった方が良いとは思います。
しかし私としては、どこに対してもゲンナリしている というのが正直なところです…
でも、できることは、がんばる

【私の提出意見】フリーランス新法についてのパブリックコメント

フリーランス新法のパブコメ、他の方の意見も見てから… と思っていたのですが、
他にやることもあるので、先ほど出してしまいました。

public-comment.e-gov.go.jp
私はイラストレーターなので、イラストレーターとしての意見となってしまいますが…
少しでも、ご自身でパブコメを書かれる方のご参考になればと思います。
もし「賛成!」と思っていただけた部分があれば、その部分はどうぞご利用ください。

私の提出意見の内容について、ざっくり解説

少し前にXで下記のようなことを書いたところ、結構RP・いいねがつき、問い合わせもありました。

今回パブコメで書いたメインの内容とほぼ同じなので、こちらで解説します。

具体的に私が「罠」と感じた部分とは、

【別紙5】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案) の、
 肝心の「契約期間の始期・終期」の考え方が、そもそもダメなのではないか? 

という点です。

現状の「考え方」だと、契約締結(仕事を受託した日)から納品まで「1ヶ月以上」でないと、禁止事項(買いたたきとか、報酬の減額とか)が適用されません。
フリーランス新法=「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第5条=依頼者側の禁止事項を定めたもの の対象になりません)


たとえば、せっかくインボイス対策として「消費税を支払わないこと」も禁止事項に入ってるのに、そもそも対象になる取引の範囲がかなり狭まる ということになります。

他の職種のフリーランスの方の契約がどうなっているのかは知りませんが、
イラストの仕事は、〆切まで1ヶ月ない単発の仕事が結構あるので、
そういった取引が「禁止事項」が適用される対象にならないとなると、フリーランス新法ができる意味が、ほぼなくなると思うのです。
*私はそもそも以前から、全ての取引において確認書を作成しているので、
「取引条件の明示の義務化」は、私個人としては本法が施行されてもとくに影響がなく、本法施行の主な意義は、本法第5条の「禁止事項」ができること=下請法類似の規制がかかるようになること と認識しています。

petitmatch.hatenablog.com
また、規制逃れのためにスケジュールをカツカツにする(依頼から納品までを1ヶ月以内にする)発注者も出てきそうじゃないですか?


結果、私にとっては、フリーランス新法ができることによって、逆に労働環境が悪くなってしまうということになります。

これが私がXで「罠」と表現していた内容になります。

公取委に問い合わせたところによれば
実際の業務委託期間に関わらず、契約の有効期間を1ヶ月以上にすることで
本法第5条の適用を行うことができるということでしたが
(詳しくは下記記事の★疑問4★参照)

petitmatch.hatenablog.comそういう契約交渉ができる知識がある人(私みたいな人)は、
契約書をちゃんと読めて、契約条件も交渉できると思うので
第5条の禁止事項にあるような被害には、あう可能性が低いと思うんですよね…

なので、パブコメで懸念点を書いてみました。

私の提出意見(5979/6000字)

*私はe-Govから提出したので文字数制限があり、MAX6000字だったのでこの文字数で書きましたが、メール・郵送の場合は文字数制限はありません。

しかし、メール・郵送の場合は、
「1 意見募集対象」のうち、(1)、(2)、(5)及び(6)に対する意見の提出先は公正取引委員会
(3)及び(4)に対する意見の提出先は厚生労働省
と、分けて提出せねばならず、面倒くさい。なので私はe-Govから出しました。

public-comment.e-gov.go.jp

私は、フリーランスイラストレーターとして、20年の経験がある者です。
以下、実際の経験や、職業的知見を元に述べます。

 

★【別紙4】特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(案)について

 

〈以下意見〉
【別紙4】P20-21、第4・5の「(2)相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」について に、
「(2) 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。」
として、「『相談窓口』をあらかじめ定め、特定受託業務従事者に周知すること」
とありました。

 

【別紙5】の定義によれば
「『特定業務委託事業者』とは、(1)業務委託事業者であって、個人であって、従業員を使用するもの、(2)法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもののいずれかに該当するものをいう。」
とありました。
ということは、「特定業務委託事業者」は、「2人以上、働いている人がいる会社」
であり、個人事業主でも1人以上の従業員がいれば該当してしまいます。
デザイン事務所や制作会社などは、そういった「2~3人でやっている会社・事業所」が、実際にかなりの数で存在するように思います。

そういった環境の場合、「相談窓口の設置」自体が、現実的に考えて、かなり難しいように思われます。
「(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)」
として
「(3)相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。」
とありましたが、これは、何らかの「ハラスメント対応研修」を受けておけば問題ないというような意味合いなのでしょうか?明確にしたほうが良いと思います。

フリーランスの立場として考えると、例えば2人会社の1人からハラスメントを受けた場合、実際にもう一人が「相談窓口担当者」であった場合、相談できるかと言うと、しづらいと思います。
また、ハラスメント加害者が「相談窓口担当者」である可能性もおおいに考えられますが、その場合、被害者である特定受託事業者(フリーランス当事者)は、どこに相談すべきなのでしょうか?
そういった場合の、『現実的な』被害者の相談先を、ガイドラインに明記すべきと考えます。(「フリーランス・トラブル110番」や、東京都の場合、「ろうどう110番」など?)

また、「(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)」として、
「外部の機関に相談への対応を委託すること。」とあったが、具体的にどのような「外部の機関」を厚生労働省が想定しているのかを、明記すべきと考えます。
P22の「中立な第三者機関」についても同様で、「中立な第三者機関」とは具体的にどのようなものを指すのか というのを明記したほうが良いのではないでしょうか。

 

★【別紙5】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)について

 

〈以下意見〉
知的財産権の扱いについて

イラストレーターとして気になる部分、知的財産権の扱いに関して、しっかりと定義されており、たいへん良いと思いました。

第2部・第1・(3)明示すべき事項
P8 「ウ 特定受託事業者の給付の内容(本法規則第1条第1項第3号)
(前略)
また、委託に係る業務の遂行過程を通じて、給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合において、業務委託事業者は、目的物を給付させる(役務の提供委託については、役務を提供させる) とともに、業務委託の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを『給付の内容』とすることがある。この場合は、業務委託事業者は、3条通知の『給付の内容』の一部として、当該知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。」

第2部・第1・(3)明示すべき事項・キ 報酬の額及び支払期日
P10「(イ)知的財産権の譲渡・許諾がある場合
業務委託の目的物たる給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合において、業務委託事業者が目的物を給付させる(役務の提供委託については、役務を提供させる)とともに、当該知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを含めて業務委託を行う場合には、当該知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を報酬に加える必要がある。」


「業務委託において知的財産権が発生し、使用許諾or著作権譲渡を含めて業務委託を行う場合には、譲渡・許諾に対する対価を報酬に加えるように」と明文化されておりました。
これは、現在横行している、安易・安価な著作権譲渡を「買いたたき」として違法行為に問いやすくなるので、たいへん良いのではないかと思います。


インボイス制度関連について

P30、禁止事項である「報酬の減額の禁止」の説明で、「報酬の額を減ずること」に該当する具体例として、「消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと」とありました。
こちらも、インボイス制度に乗じた消費税分金額の減額への対抗になっているので、良いと思いました。


■本法第5条が適用される「政令で定める期間」について、ご提案

しかし、肝心の、「禁止行為」が発生するための契約期間である「政令で定める期間」、「1ヶ月以上」を定義するための「期間の始期と終期」の考え方、特に「終期」の考え方に問題があると感じました。本法第5条の適用となる期間の終期の基本は「報酬の支払期日」とすべきではないかと考えます。

P26
第2部・第2・2 特定委託事業者の遵守事項(本法第5条)の(1)期間の始期と終期
のア 単一の業務委託又は基本契約による場合
の(ア)始期 はこちらで良いかと思うのですが、
(イ) 終期が、単一の業務委託の場合に問題があります。

(イ) 終期
単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の終期は、業務委託に係る契約が終了する日又は基本契約が終了する日のいずれか遅い日であり、具体的には次の日のいずれか遅い日である。
なお、実際に給付を受領した日が、3 条通知により明示する期日等よりも前倒し又は後ろ倒しとなることがあるが、これによって終期は変動しない。
(1)3条通知により明示する「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日」(ただし、期間を定めるものにあっては、当該期間の最終日)
(2) 特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合には同日
(3)基本契約を締結する場合には、当該基本契約が終了する日

 

現状、単発のイラストレーションの仕事の場合、基本契約は締結しない場合がほとんどです。
現状の「考え方」のまま本法が施行されると、契約から締切(給付の受領・役務の提供)までのスケジュールを、ギリギリ1ヶ月以内にする、または実際の締切よりも書面上の納期を早めることや、意図的に契約書の締結を遅らせることで、本法第5条の適用を逃れようとする発注者が出てきそうな気がします。また、依頼側都合で実際の納品日が延期になり1ヶ月を超えた場合でも、本法第5条の適用がないということになります。

 

「実際に給付を受領した日が、3条通知により明示する期日等よりも前倒し又は後ろ倒しとなることがあるが、これによって終期は変動しない。」のであれば、仮に1ヶ月以上の業務委託期間がある場合でも、書面上の給付受領日を「実際に給付の受領が必要な日」より早め、契約締結日から1ヶ月以内にすることで、容易に本法第5条の適用を逃れることができます。
これでは、本法で「禁止行為」を定めている意味が、ほぼなくなってしまうように思います。
経験上、そのような「規制逃れの契約手法」を取ってくる依頼側の法務担当者や企業の顧問弁護士の存在が、容易に想像できます。
現状のままでは、イラストレーションの仕事の場合、本法の施行によって、逆に契約条件や労働環境が悪くなってしまう可能性が、極めて高いように思います。

 

そもそも、納期が短い・報酬条件が悪い企業・案件や、法務部や法務担当者が存在しない・法務担当者や顧問弁護士の質が低い企業ほど、取引上での問題も多い傾向にあります。
現状の「考え方」では、当初に決めたスケジュールを守らない、だらしない現場担当者、倫理観が欠如した法務担当者や顧問弁護士がいる企業ほど、本法第5条の適用を逃れやすく、あらゆる面で得をするということになります。
かつ、フリーランス側にとっては、本法ができる前よりも、フリーランス側に提示される条件や環境が悪化します。
それでは本法ができた意味がなく、本末転倒です。

 

そのため、期間の始期は「契約締結日」で問題ありませんが、
終期の(1)は「3条通知により明示する『特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日』ではなく、『報酬の支払期日』にすべきではないかと考えます。
「報酬の支払期日」にしておけば、急ぎの仕事で、本法第5条の適用がない仕事は、「1ヶ月以内に報酬の支払いがある仕事」ということになりますから、
本法第5条における禁止事項がない場合、本法の施行によって、フリーランス側には「報酬の支払いが早くなる」というメリットが発生します。


■「業務委託に係る契約」とは具体的にどういった契約を指すのか、明確に記載したほうが良いのでは?

イラストレーションの仕事で考えると、情報成果物の作成委託が発生すると同時に、一般的には情報成果物=著作物の使用許諾契約が発生します。
イラストレーションの給付(納品)が終わったあとに、使用許諾期間が開始される場合が多いかと思います。この使用許諾契約は、
「(2)特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合」の「当該業務委託に係る契約」に該当するのでしょうか?
この点について、公取委に確認したところ、「まだ決まっていない」ということでした。
「業務委託に係る契約」とは具体的にどういった契約を指すのか、明確に記載したほうが良いのではないでしょうか。

 

イラストレーションの作成委託に付随する著作物使用許諾契約は、
「(2)特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合」の「当該業務委託に係る契約」に該当する可能性もあるかと思います。
しかしながら、著作物使用許諾契約が「当該業務委託に係る契約」に該当する場合、
前述のように、本法第5条の適用、「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」とされることを避けるために、あえて納期を短く設定する&激安の料金でイラストを依頼し、著作権を無償譲渡させようとするという悪質な取引を誘発する可能性も考えられ、これまた禁止事項で知的財産権の許諾・譲渡に関する「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」を禁じている意味がなくなります。この場合も、本法ができることで、イラストレーターの取引環境を悪化させる結果となってしまう可能性が高いです。
その点から考えても、本法第5条の適用となる期間の終期の基本は「報酬の支払期日」とすべきではないかと考えます。

 

または、「【別紙1】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)について」にも関連しますが、

 

(1) 禁止行為の対象となる期間(第1条関係)
本法第5条第1項の政令で定める期間は、一月とする。

 

この部分の「政令で定める期間」を「一月」でなく、「一月とする。委託に係る業務の遂行過程を通じて、給付の内容に特定受託事業者の知的財産権の譲渡・許諾が含まれる場合においては、期間を問わない」とするなど、給付の内容に特定受託事業者の知的財産権の譲渡・許諾が含まれる場合においては、期間の制限をなくしてはいかがでしょうか。
または、「一月とする。情報成果物の作成委託においては、期間を問わないものとする」でも良いかと思います。「業務委託の期間(政令で定める期間以上の期間)は下請法同様、不要ではないか」という意見は、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」の当事者団体ヒアリングでも出ていたかと思います。

 

参考:【フリーランス新法】公取委「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」と、当事者団体ヒアリングまとめ https://petitmatch.hatenablog.com/entry/2023/08/25/182613

 

「考え方」の中で、知的財産権の譲渡・許諾が含まれる場合の取引についての言及が多い割に、肝心の「禁止行為の対象となる契約期間」が「契約から納品までが1ヶ月以上」では、実際にトラブルの温床となりやすい短納期・悪条件の取引が禁止行為の対象取引にならないように感じました。


★【別紙6】本法と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方(案)について
 

〈以下意見〉
フリーランス新法と独占禁止法・下請法が両方適用になる企業・案件の場合には、基本的にフリーランス新法が適用される。しかし、公取の判断で下請法を適用させたほうがいいと判断した場合には下請法が適用される、ということで、良いのではないかと思います。

 

ただ、これは本題とはそれますが、公正取引委員会に確認したところ、地方自治体とフリーランスの直接契約の場合は、『事業活動』に該当しない仕事の場合は、独占禁止法・下請法・フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)のいずれも適用がないと説明されました。
現状では、フリーランス地方自治体が直接契約をする際の法律が存在しません。
そのため、東京都世田谷区などで、実際にフリーランスとの仕事において、トラブルが続出しています。
将来的には、本法の適用範囲を、事業者だけでなく、地方自治体等との契約にも拡大してほしいと願っております。

 

問題の例:東京都世田谷区(2例)、その他1例
・世田谷区史編纂問題
山本さほさん(漫画家)と世田谷区とのトラブル
近藤ようこさん(漫画家)と地方自治体とのトラブル

参考:「世田谷区史編さん問題」から考える、地方自治体とフリーランス間の契約問題 https://petitmatch.hatenablog.com/entry/2024/04/01/000831

パブリックコメントを書くために

このパブリックコメント募集の最大の問題点は、
資料のPDFが、保護されてて、コピペできないということです。
そこで、Acrobatを使って文字認識しました。 これでだいぶ書くのが楽になると思いますよ!

www.adobe.com

e-govから意見を出すとき、機種依存文字で引っかかる場合があるため、このツールでチェックしましょう(このツールでないと「波ダッシュ」が引っかかりません)

mrxray.on.coocan.jp

↓資料のザックリ解説と私の感想は、以下の記事にありますので、よかったら

petitmatch.hatenablog.com

フリーランス新法についてのパブリックコメント 資料の概要・感想

フリーランス新法についてのパブリックコメントがはじまりました。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関する意見募集について

public-comment.e-gov.go.jp

資料を全部読み、資料の概要と、私の感想を、現時点のものをまとめました。
パブコメは、まだ提出してません。
実際に意見を出すのは、もう少し他の方の意見をネット等で見てみてからで良いかな
と思っています。
【2024/4/18追記】結局、もう出してしまいました。

petitmatch.hatenablog.com

資料の中で私が疑問に感じた点について、厚生労働省公正取引委員会に電話で質問をしたので、パブコメを書こうと思っている方の参考になれば幸いです。

これを読む前に、頭に入れておいた方が良い基礎知識・資料

特定受託事業者=フリーランス本人のこと

業務委託事業者=発注者(企業のほか、仕事を発注するフリーランスも含む)のこと

↓この資料がわかりやすい

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_03.pdf

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_03.pdf

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_03.pdf

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/download/freelance/law_03.pdf

パブコメ資料に関する問い合わせ先は以下

別紙⑴⑵⑸⑹
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引企画課フリーランス取引適正化室
電話 03-3581-5479

別紙⑶⑷
厚生労働省雇用環境・均等局総務課雇用環境政策
電話 03-3595-3275

資料を読んでわからない点があったら、電話したら教えてくれますよ。


【別紙1】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273052

【概要】フリーランス新法で、これまで決まっていなかった点をハッキリさせましたよ、具体的には以下のようにしました というお知らせ。
【感想】特に問題なし。
【提出意見(予定)】なし。

【別紙2】公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273053

【概要】フリーランス新法において、公取委が管轄になる部分についての法律文の案。
【感想】特に問題なし。
【提出意見(予定)】なし。

【別紙3】厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273054

【概要】フリーランス新法において、厚生労働省が管轄になる部分についての法律文の案。
【感想】特に問題なし。
【提出意見(予定)】なし。

【別紙4】特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273055

【概要】

フリーランス新法において、下記部分についての指針案(ガイドライン)。

・ランサーズ等のプラットフォームや自社ホームページで、広くフリーランスへの業務委託案件への応募者を募る場合の必須事項・望ましい事項。

・妊娠、出産もしくは育児又は介護に対する配慮

・セクハラ、パワハラ、マタハラ、いじめ・嫌がらせ等への措置・相談窓口の設置・対応

【感想】

私は今は完全に個人なので設置義務はないが、超零細企業とかは「相談窓口の設置」って、実質無理なのでは…?この点、発注側企業はどう対応するんだろう?
「特定業務委託事業者」って、「2人以上働いてる人がいる発注者(個人でも1人以上従業員がいれば該当してしまう)」なので、相当数の企業が該当してしまうと思うのだが…?何らかの「ハラスメント対応研修」を受けとけばOK くらいの感じなのだろうか?
また、フリーランスの立場としても、例えば2人企業の1人からハラスメントを受けた場合、実際相談できるかと言うと、しづらいと思う。

この点、厚労省に直接電話して聞いてみました。

厚労省からの回答)そういった事例は、想定してませんでした。
こちらの意図としては、既に存在する相談窓口の対象を、フリーランスの方向けにも広げて欲しいという意図でした。確かにそういった可能性もありえますね…
その点、ぜひパブコメに書いておいてください。
”何らかの「ハラスメント対応研修」を受けとけばOK くらいの感じなのだろうか?” については、その可能性は高いです。

【提出意見】

後日まとめます。
上記の件と、「実質、相手先企業がハラスメント相談窓口を用意するのが無理な場合に、具体的にどうすればいいのか」を、厚生労働省からフリーランス側に明示したほうが良いのでは?ということを、丁寧な言葉で書こうかなと思っております。

あと、さきほど下記のような意見を見かけました。

次項でも書いた「契約の始期と終期」の定義についても、書くかもしれないです。
つまり契約の終期を「役務の提供終了日」ではなく、「最終の報酬支払日」にしたほうが、実際にいま被害にあっているフリーランス当事者を保護するという意味では、現実的になるのではないか?ということを書こうかなと…


★最重要★【別紙5】特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273056

【概要】

フリーランス新法において、公正取引委員会が担当する部分についての考え方(案)。
要するに契約条件、報酬条件に関する部分についてのガイドライン、考え方である。
これが今回の最重要部分である。

フリーランス当事者で、他の資料を読むのが面倒くさいという方は、これだけ読めば良いのでは。(他は企業側・依頼側の人は読んだほうが良いと思うが、個人事業主には影響しない部分が多いので…)

【感想】

知的財産権の扱いについて

イラストレーターとして気になる部分、知的財産権の扱いに関して、
「業務委託において知的財産権著作権とか)が発生し、使用許諾or著作権譲渡を含めて業務委託を行う場合には、譲渡・許諾に対する対価を報酬に加えるように」と明文化されていた。
これは、安易&安価な著作権譲渡を「買いたたき」として違法行為に問いやすくなるので、良いのではないかと思う。
ただ、イラストレーター側が契約書をきちんと読めないと、「自分の意志で」「激安で(無償で)」著作権譲渡に合意してしまうという証拠を相手に与えることになってしまうので、
予測どおり、諸刃の剣であろうと思う。

petitmatch.hatenablog.com

インボイス関連について

あとP30、禁止事項である「報酬の減額の禁止」の説明で、「報酬の額を減ずること」に該当する具体例として、「消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと」がある。
これも、インボイス制度に乗じた消費税分金額の減額への対抗になっているので、良いと思う。

肝心かなめの「契約期間の考え方」がダメ

しかし、肝心の、上記のような、下請法に準ずる規制がかかる条件である契約期間、「1ヶ月以上」の始期と終期の考え方、
特に「終期」の考え方がダメだと思った。

現状のものだと、イラストレーションの仕事の場合、依頼から締切(納品・役務の提供)までのスケジュールを、ギリギリ1ヶ月以内にすることや、意図的に契約書の締結を遅らせることで、規制を逃れようとする発注者が出てきそうな気がする。
これでは、本法の存在意義が、ほぼなくなってしまう。
また、本質的には、仕事というのは、「納品(給付)」で終わりでなく「報酬の回収(料金の支払い)」まで行って終了であるのに、「納品」が「期間の終期」というのは、完全におかしい
と思う。

スケジュールが悪条件な企業や案件や、また契約書の提示や修正が遅い、法務部や法務担当者が存在しない・法務担当者や顧問弁護士の質が低い企業ほど、取引上での問題も多い傾向にある。
組織全体が低モラルで、遵法意識に欠けるためである。
要するに「行き当たりばったり」の「その場しのぎ」で仕事をやっている人や企業ほど、仕事上のトラブルは多いということです。

そのため、期間の始期は「契約締結日」で問題ないが、
終期は「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日」ではなく、「報酬の支払期日」にすべきではないかと考えます。

あと、以下のように、不明瞭な部分が複数ある。
ガイドラインなので、ハッキリさせたほうが良いと思った。
一応念のため、公取委に直接電話して、確認してみました。

★疑問1★特定業務委託事業者の遵守事項が発生する条件、
契約期間の「1ヶ月以上」というのは、

具体的には「何日以上」のことを指すのか?

公取委からの回答)例えば4/15が始期であれば5/15以上。翌月の同日以上。
「30日以上」ではない。

★疑問2★情報成果物製造委託で知的財産権の使用許諾契約が同時に発生する場合、契約の終期の考え方はどうなるのか?
使用許諾契約の終了日が「当該業務委託にかかる契約の終了する日」となる?

公取委からの回答)それについてはまだ決まっていない。

また、報酬については、「業務委託料と使用許諾・著作権譲渡に対する費用を明確に分けて記載しないといけない」という意図があるのか?

公取委からの回答)分けて記載する必要はない。
使用許諾・著作権譲渡に対する費用が、業務委託費用に加わっていれば良い。

★疑問3★「当該業務委託にかかる契約」には「報酬の支払い」も該当するか?
「当該業務委託にかかる契約の終了する日」は支払期日のことを指すか?

公取委からの回答)報酬の支払いについては「当該業務委託にかかる契約」には入らない。

【2024/4/18追記】

★疑問4★契約の有効期間を1ヶ月以上に設定することで、当法第5条の対象契約とすることは可能か?
たとえば、1日で終了する単発の役務の契約の場合でも、契約の有効期間を1ヶ月以上に設定することで、当法第5条の対象契約とすることは可能か?

公取委からの回答)可能。資料「別紙5」P26の

-----
(イ) 終期

単一の業務委託又は基本契約による場合における期間の終期は、業務委託に係る契約が終了する日又は基本契約が終了する日のいずれか遅い日であり、具体的には次の日のいずれか遅い日である。

なお、実際に給付を受領した日が、3 条通知により明示する期日等よりも前倒し又は後ろ倒しとなることがあるが、これによって終期は変動しない。

① 3 条通知により明示する「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日」(ただし、期間を定めるものにあっては、当該期間の最終日)

② 特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で、別途当該業務委託に係る契約の終了する日を定めた場合には同日

③ 基本契約を締結する場合には、当該基本契約が終了する日
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①は納期、②が契約の有効期間について定めているイメージ。
「当該業務委託に係る契約」には秘密保持契約などをイメージしているが、具体的にどういった契約が該当するかは、検討中である。

【提出意見】

後日まとめます。(資料の何Pのどこ、とか詳しくネチネチ書きます)

【別紙6】本法と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方(案)について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000273057

【概要】

フリーランス新法と独占禁止法・下請法が両方適用になる企業・案件の場合には
基本的にフリーランス新法が適用される。
しかし、公取の判断で下請法を適用させたほうがいいと判断した場合には下請法が適用される。
ということが書いてある。

【感想】特に問題なし。
【提出意見(予定)】なし。

★参考になった記事★

概説フリーランス新法 小山紘一 

www.kottolaw.com

フリーランス新法と下請法の比較

note.com

パブリックコメントの書き方 | あきくさ法律事務所

akikusalaw.com

実際に出したパブコメ

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関連記事

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【Adobeに聞いてみました】Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」は生成AI?

Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」は生成AI?

先日、このようなポストをXで見かけました。

私は今のところ、そういった契約書は提示されたことがないですが、確かに今後は入ってくることがあり得るな〜と思いました。

そこでハッと気づいたのですが、そもそも既存のPhotoshopの機能、「コンテンツに応じた塗りつぶし」は、最近でた機能「生成塗りつぶし」と、何が違うのでしょうか?
実は「コンテンツに応じた塗りつぶし」も生成AIです とか言われたら、今後困ることが想定されます(たまに使ってるから…)

そこで、Adobeにダイレクトに聞いてみました。
*ブログへの記載は、許可をいただいています。

Adobeに質問】

Q:業務委託契約書などで、「生成AIを使用しないこと」の条項がある場合があると聞きます。
そこで質問ですが、Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」は生成AIを使っているのですか?
「生成塗りつぶし」は生成AIだと思うのですが、「コンテンツに応じた塗りつぶし」は「生成AIを使用している」ことになるのでしょうか。

A:コンテンツに応じた塗りつぶしは生成AIではございません。AIを使用した機能ではございますが、生成AIとは別の機能でございます。

Q:ありがとうございます。「コンテンツに応じた塗りつぶし」は生成AIではないが、「生成塗りつぶし」は生成AIである という認識で正しいでしょうか?

A:はい、ご認識の通りでございます。
コンテンツに応じた塗りつぶしは、開いてるコンテンツに基づいて画像をつくるので、その画像以外からの情報抽出はございません。

結論:

契約書に「生成AIを使用しないこと」が入っていたら、
Photoshopの「コンテンツに応じた塗りつぶし」は使える。
しかし、「生成塗りつぶし」は使えない。

他のAdobe Creative Cloudのアプリに生成AI機能はある?

本日(2024/4/22)追加で質問してみました。
Q:Adobe Creative Cloudの中の生成AI機能は、下記ページにあるものが全て という理解で正しいでしょうか?

helpx.adobe.com

A:(Adobeからの回答まとめ)
Adobe Photoshop では
・生成塗りつぶし
・生成拡張

Adobe Illustrator では
・テキストからベクター生成
・生成再配色

を使用しなければ、生成AIを使用していない ということになります。

AdobeStockおよびAdobeExpressでは、お客様が生成する以外に、『クリエーターが制作したイラストや写真(イメージ画像やテンプレート)が生成Aiを使っている』場合があります。

stock素材検索の機能に「フィルター」がございます。
その中の項目に ≪生成Ai≫がございます。そこを
・ すべて ・ AI 生成画像のみ ・ AI 生成画像を除外
のいずれかから選ぶことで生成AIを除外して検索する事が可能となっておりますのでご安心ください。

なにかのご参考になれば幸いです。

「世田谷区史編さん問題」から考える、地方自治体とフリーランス間の契約問題

「世田谷区史編さん問題」とは?

通称「世田谷区史編さん問題」(世田谷区史編纂問題、せたがやくしへんさんもんだい)というものがあります。
私は2022年秋に、この問題を知り、まとめを作りました。

petitmatch.hatenablog.com
これは、かなりザックリ説明すると、以下のような事件です。


1・世田谷区が歴史研究者、谷口雄太氏(青山学院大学准教授)に、区史の編纂(調査〜執筆)までを依頼した。
最初の契約は2017年6月からで、当初は「(調査〜執筆)まで、全部で」の期間を前提とした契約だったが、2022年に1年単位の契約へと契約形態が変更された。

2・2022年秋、調査が終わった時点で、世田谷区が著作権譲渡&著作者人格権不行使の入った契約書を突然提示した。
谷口氏が拒否したところ、2023年3月末で契約が終了した。


現在、谷口氏は、出版ネッツフリーランス労働組合)に入っており、労働組合としての集団交渉と、東京都労働委員会に不当労働行為救済の申し立てを行い、現在東京都労働委員会による調査が行われているようです。

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com
また、「世田谷区史のあり方について考える区民の会」が結成され、こちらの会から区への働きかけも行われているようです。

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com

世田谷区×フリーランスのトラブルはこの件だけではない

ちなみに世田谷区が起こしたフリーランス絡みのトラブルは、世田谷区史編さん問題だけではありません。

2018年、世田谷区から仕事を請け負った漫画家の山本さほさんが、区の担当者に横暴な対応を受けたという事件がありました。下記のような事件です。

世田谷区と仕事をした際、区役所側のミスで会場のダブルブッキングがあったにもかかわらず、会場キャンセル料をなぜか「(山本さんへの)謝礼から差し引く」と言われた

nlab.itmedia.co.jp

togetter.com

www.itmedia.co.jp

www.j-cast.com

nlab.itmedia.co.jp

news.livedoor.com
これは山本さほさんがSNSで拡散し、当然炎上して、炎上によって区が問題を認識したことで解決したようです。
しかし、これが山本さほさんでなく、マンガが炎上しなければ、どうなっていたのでしょうか?

地方自治体×フリーランスのトラブルは世田谷区だけの話ではない

昨年、漫画家の近藤ようこさんが、仕事を依頼された自治体から突然、無償での著作権譲渡&無断改変を可能にする契約を求められたという事件がありました。
また、契約書には、氏名表示についても不可解な条件が記載されていたようです。

 

togetter.com

note.com

自分の身に起きたらどうする?調べてみました

これらの件を見ていて、実際に自分自身が、世田谷区に限らず、地方自治体の仕事をする際に、山本さほさんの被害のような突然の減額、谷口氏が受けたような著作権等の権利の一方的な取り扱いや、ハラスメント行為、近藤ようこさんがされたような、契約条件の後出しを受けた場合、どのように対応すれば良いのか?
と不安になりました。
どのような対処法があるのか、調べてみました。

【調査1】労働組合としての集団交渉、労働委員会に不当労働行為救済の申し立てをすることは有効なのか?

谷口氏は、「出版ネッツ」(ユニオン出版ネットワーク)という労働組合に所属しています。

union-nets.org
出版ネッツが世田谷区に請求している救済の内容は、以下のようになっています。

〇谷口さんへの委員委嘱解除をなかったものとして扱い、2023年度以降も委嘱を継続すること
〇委員の委嘱、著作権の取り扱いを議題とする団体交渉に応じること ほか

setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com

(私の疑問)谷口氏が労働組合上の「労働者」として認められた場合、谷口氏の著作権はどうなるのか?
フリーランスの場合、著作権を自分に持ったままでも、労働組合上の「労働者」となり、不当労働行為救済が認められる可能性があるのか。

(1-1)まず、フリーランス・トラブル110番に聞いてみた

freelance110.jp

フリーランス・トラブル110番の回答〉
著作権の取扱いを決めるのは、当事者間に契約がある場合はその契約内容と、著作権法によって決まります。
労組法は、著作権の帰属だったり、著作者人格権の不行使特約の有効性について判断する法律ではありません。

本件で労組法の労働者であると認められた場合は、本件でいえば、編纂委員の委嘱打切りをしたことについて、団体交渉によって話し合いをしなさいということが決まるまでです。

また、この場合であっても、労働組合の言う通りに、委嘱を打ち切ったことは不当であるということまで認定するものではありません。
あくまで、労働組合と団体交渉によって話し合いをしなさいという点が認められるまでです。

(1-2)なんだか納得いかなかったので、東京都労働委員会に直接聞いてみた

著作権の扱いについては理解したのですが、しかし、フリーランス・トラブル110番の回答が正しければ、出版ネッツが求める「谷口さんへの委員委嘱解除をなかったものとして扱い、2023年度以降も委嘱を継続すること」というのは、救済内容として認められない内容のように思いました。

そこで、東京都労働委員会に、「フリーランス・トラブル110番からこのような説明をされたが、これは本当か?」と、直接聞いてみました。

www.toroui.metro.tokyo.lg.jp

〈東京都労働委員会の回答〉フリーランス・トラブル110番の回答は、その通りです。
「組合員であること、組合活動を理由とした不利益取り扱い」として契約を打ち切ったということが立証されれば、契約の回復(オオスキ注:つまり、出版ネッツの主張通りの、契約打ち切りをなかったものとして扱うこと)までできる可能性もある。しかし、あくまで「立証されれば」です。

しかも、契約が回復できたとしても、契約条件、契約関係については任意のやり取りであるため、あくまで「労働組合と団体交渉によって話し合いをしなさいという点が認められるまで」というのは正しいです。

(結論)

私の個人的な印象ですが、世田谷区の今までの対応を見る限り、仮に契約が回復され、話し合いをしたとて、結局は一方的条件を押し付けられるだけなのでは?という気がして、あまり状況の改善が期待できる感じはしません。

また労働組合を通じて労働委員会での救済を目指すというのは、時間がかかりすぎるように思います。
東京都労働委員会の場合、「審査の期間の目標と達成状況の公表」を見るかぎり、審査の期間の目標が「原則として1年6か月とする。」とあり、トラブル解決の方法としては、あまりに時間がかかりすぎなのではないでしょうか。

www.toroui.metro.tokyo.lg.jp

下記が審査の流れが書いてあります。

www.toroui.metro.tokyo.lg.jp

ただ、「フリーランスにひどいことすると、労働委員会に不当労働行為救済の申し立てされて、面倒くさいし、悪事が広まるぞ!」という、今後の世田谷区による悪事の予防としては有効な印象はあります。

また、東京都労働委員会が交付した命令等(棄却・一部救済・全部救済)は、命令まで至った事件に関しては、必ずホームページで公開され、中央労働委員会のデータベースにも掲載されるそうです。
ただ、和解になったら載らないし、公開自体がないそうです。(当段落は2024/4/1に追記)

www.toroui.metro.tokyo.lg.jp

www.mhlw.go.jp

【調査2】地方自治体とフリーランス間の取引に関する法律はないのか?

民間企業相手の場合には、独占禁止法・下請法・フリーランス新法が適用になります。
下請法・フリーランス新法では、取引の際に義務規定や禁止規定があります。

www.kottolaw.com

www.jftc.go.jp
フリーランス新法は秋からですが、施行を待たずとも、現状の法律でも、
著作権等の権利の一方的な取り扱いは独占禁止法・下請法違反となる可能性があります。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要版)より

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要版)より

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(概要版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000766340.pdf


ですので民間相手の場合は、世田谷区や、近藤ようこさんに仕事を依頼した自治体のような契約をしようとすると、違法となる可能性が高いです。

しかし、以前、「相手が地方自治体の場合、独占禁止法・下請法・フリーランス新法は対象にならない」と、公取委の方に教えて頂いたことがあります。

地方自治体とフリーランス間の取引に関する法律は、存在しないのでしょうか?
一体誰に聞いたらいいのか、よくわからなかったので、ダメ元でフリーランス・トラブル110番に聞いてみました。

(2-1)まず、フリーランス・トラブル110番に聞いてみた

freelance110.jp

Q:「相手が地方自治体の場合、独占禁止法・下請法・フリーランス新法は対象にならない」と、公取委の方に教えて頂いたことがあります。
そうなると、地方自治体が、民間レベルでは下請法違反行為となりえる著作権の無償譲渡の強制など、受注者に不利益な条件を一方的に押し付けることや、地方自治体職員がハラスメントを行ってきても、違法性がないということになりますか?
地方自治体との仕事で、実際に何らかの被害にあった場合、どのように対処したら良いのでしょうか?

フリーランス・トラブル110番の回答〉「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」があるはずだけど、詳しくは改めて公正取引委員会に聞いてみてください。

(2-2)公正取引委員会に聞いてみた

www.jftc.go.jp
公取委に質問したところ、地方自治体と直接契約の場合は、「事業活動」に該当しない仕事の場合は、独占禁止法・下請法・フリーランス新法の適用がないと説明されました。

公取委の定義では、「反復継続して業として税金以外の収入があること=事業活動」ということです。逆に言えば「事業活動」であると公取委が認めれば、独占禁止法・下請法・フリーランス新法が適用になるということです。
*「最高裁の判決(芝浦の事件、玄田事件、お年玉付年賀はがき事件)に、事業とは何かを示している。」とのこと。

そこで、再度、下記のように質問しました。

Q:地方自治体から、事業活動に該当しない仕事を受注し、突然の減額や、十分な協議なく一方的に無償で著作権譲渡をさせるなど、下請法などで不当な経済上の利益の提供要請に該当するような行為を受けた場合は、どのように対応すれば良いのか?

公取委の回答〉「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」が適用される可能性がある。具体的には、財務省に問い合わせを。

elaws.e-gov.go.jp

(2-3)財務省に聞いてみた

www.mof.go.jp

財務省の回答〉「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」は、地方自治体にも適用される。しかし、この法律はあくまでお金周りの法律である。
その他の条件は、地方自治法になるので、総務省に聞いたほうが良い。

*電話に出た人は「一般的には下請法に準ずる形で契約するはずなので、そんな事はありえないと思うんですが…そんなことがあるんですか?」と言っていた。

(2-4)総務省に聞いてみた

www.soumu.go.jp

総務省の回答〉地方自治法には、該当するものがない。
個人と地方自治体が直接契約をする際の法律はない。地方自治体と直接話し合いをするしかない。
そういった際にどうすればいいかというのは回答しかねる。

たらい回しの結果、「個人と地方自治体が直接契約をする際の法律はない」ということがわかりました。そして救済策は「回答しかねる」ということでした。
「ここは苦情窓口じゃない」など、かなり冷たい印象を受ける回答でした。

(2-5)再び、公正取引委員会に聞いてみた

電話に出た財務省の方がポロリとつぶやいた、
「一般的には下請法に準ずる形で契約するはずなので、そんな事はありえないと思うんですが…そんなことがあるんですか?」
という言葉が気になり、この点について、念のため公正取引委員会に再度電話してみました。

www.jftc.go.jp

公取委・下請法相談窓口の回答〉
地方自治体は一般的に下請法に準ずる形で契約する」ということはない。
自治体ごとの条例・契約約款による。
下請法を「参考にしてる」可能性はある。

公取委の下請法相談窓口の方は、とても良い方でした。

財務省の方の発言はおかしい。そんなこと聞かれても困ってしまいますよね。公取委にお電話いただいたのは正解です。」
と褒めてくれた上に、私の最初の疑問

Q:地方自治体から、事業活動に該当しない仕事を受注し、突然の減額や、十分な協議なく一方的に無償で著作権譲渡をさせるなど、下請法などで不当な経済上の利益の提供要請に該当するような行為を受けた場合は、どのように対応すれば良いのか?

ということに対して、「これは個人的に考える一案であって、公正取引委員会としての回答とはしないでいただきたいのですが…」と前置きしたうえで、下記のことを教えてくださいました。

公正取引委員会の方が個人として考える、一案と意見★

問題がおきた場合には、自治体の会計や、契約窓口(会社で言うところの法務・会計の担当)に問い合わせてみては?
公務員は法律に従って仕事しているので、仮に事後の減額が行われた場合、会計担当が減額の理由を説明する必要があるはずです。税金を使う仕事だからです。
「何の法律や条例を根拠にして、その行為が行われたのか」の「説明を求める」と良いのでは。

たしかに総務省の方の言う通り、本来的には担当者と話し合うべきではあるが、揉めてしまって適切な対応がされない状態の場合、直接の担当者とは、やり取りしないほうがいいのでは?
特にお金関係の場合は、会計担当に聞くと良いのでは。

いずれにせよ、地方自治体の仕事は、法律で守られないので、仕事をするときには、民間の仕事以上に契約条件には気をつけたほうが良いでしょう。


世田谷区の場合は財務部 経理課 契約係 という部署があるようです。

www.city.setagaya.lg.jp

私が今住んでいる神戸市にも、行財政局  契約監理課 という部署がありました。

www.city.kobe.lg.jp

【総合的な結論】

地方自治体の仕事は、法律で守られないので、仕事をするときには、民間の仕事以上に契約条件には気をつける。

・依頼された時点で、契約条件は民間案件以上にしっかりと確認し、ヤバそうな場合には仕事を引き受けない。

・問題が起き、こじれた場合には、直接の担当者とはやり取りしない。「会計担当」に説明を求めてみる。

最近読んだ「クリエイター六法」にも記載がありましたが、フリーランスの契約においては、直接フリーランス新法や下請法が守ってくれるわけではないので、自衛が重要とありました。

petitmatch.hatenablog.com
法律があってもそうなので、ない場合は、余計気をつけなければならないでしょう。

イラストレーターの場合は、制作会社などから仕事が来ることがほとんどで、
自治体との直接契約というのはほぼないと思うので、心配する機会も少ないかもしれませんが…
山本さほさんのような直接契約で、ワークショップ講師のお仕事もある可能性もありますので、念には念を入れて、トラブル予防に努めたいと思いました。

国に意見を伝えるのも大事

おそらく今後、フリーランス新法に対するパブリックコメントが募集されると思います。
その際に、
地方自治体と直接契約の場合は、『事業活動』に該当しない仕事の場合は、独占禁止法・下請法・フリーランス新法の適用がない。そのため世田谷区などで実際にフリーランスとの仕事において、トラブルが続出している。(世田谷区史編纂問題など)フリーランス新法の適用範囲を、地方自治体等にも拡大してほしい。」
という意見を書こうと思っています。
上記の意見は公取委には直接伝えましたが、パブリックコメントでも書きたいと思います。

(2024/4/13)フリーランス新法のパブリックコメントが開始されました。

public-comment.e-gov.go.jp

 

【著作権契約】著作者人格権不行使の契約をすると、仕事実績として公開できなくなり、ポートフォリオに掲載することもできない?

1・著作者人格権不行使の契約をすると、仕事実績として公開できなくなり、ポートフォリオに掲載することもできない?

少し前に、こういうクイズ(アンケート)をしました。

正解の方が少なかったので、解説したいと思います。

著作権著作者人格権についての基礎的な知識がない方は、下記記事を先にお読みください。

petitmatch.hatenablog.com

2・解説:実は仕事実績としての公開・ポートフォリオへの掲載については、著作者人格権は関係しない

【正解】✗
【解説】仕事実績としての公開・ポートフォリオへの掲載については、誤解しているイラストレーターが多い印象ですが、著作者人格権は、実は関係ありません。

著作者人格権の1つである「公表権」は、
「自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、
公表するとすれば、いつ、どのような方法で公表するか」ということを決める権利なので、
1回公表したら、公表権は消滅(消尽)します。

www.cric.or.jp

クライアントワークの場合、クライアントがそもそも制作物を公表できないのだったら、その人に制作物の制作を依頼しないでしょう。
このため、クライアントワークの場合は、公表権を行使して、「自分の意志で」相手のリリーススケジュールに合わせて公表する、
あるいは著作者人格権不行使特約が入っていなかったとしても、双方の意思として公表権の行使は予定しない前提(実質的に公表権のみ不行使)ということになります。

また、クライアントワークについては、「イラストだけ」で成立しているものは少なく、文章や写真なども同時に使われている場合が多いですよね。
その場合、編集者さん、デザイナーさんや、ライター・コピーライターさんなど、他の方の著作権、または他の権利が発生している場合があります。

ですので、実績公開については、自分の著作者人格権の行使不行使とは、別で確認する必要があります。

いずれの場合にせよ、一度公表したあと(仕事が世に出たあと)には、
著作者の公表権は消滅(消尽)しますので、
「仕事実績としての公開がOKか、ポートフォリオに掲載してもよいかどうか」は、
著作者人格権とは別の話 ということになります。

3・著作権法とは別の話だが、『独占禁止法・下請法』上では問題となる可能性がある。専門家や公的機関に相談・情報提供を!

ちなみに本件は著作権法著作者人格権とは別の話ではありますが、
仕事としての実績公開不可を、クライアント側が一方的に決定することは、
『合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定』に該当し、
独占禁止法・下請法』上では問題になる可能性があります

厚生労働省 フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)[1.8MB]P11より

厚生労働省 フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)[1.8MB]P11より

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版(パンフレット)[1.8MB]P11

https://www.mhlw.go.jp/content/000766340.pdf


厚生労働省フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ 

www.mhlw.go.jp 

ですので、そういった事があった場合には、フリーランストラブル110番・下請かけこみ寺等に相談、あるいは公取委に情報提供した方が良いと思います。

↓こちらへ

フリーランス・トラブル110番

freelance110.jp

下請かけこみ寺

www.zenkyo.or.jp

公正取引委員会:買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報提供

www.jftc.go.jp

余談:申告とは

ちなみに独占禁止法・下請法違反の疑いが強い場合には、「申告」するという手もあります。 これをやると、公取委中小企業庁が調査してくれて、実際に違法性が認められた場合、相手の企業に指導してくれますし、悪質な場合には立ち入り調査などもやってくれます。

www.jftc.go.jp

私は今まで何回か、申告をした経験があります。
申告をしたらどうなるのかは、以下記事にて。

petitmatch.hatenablog.com

参考記事:イラストレーターの仕事に関する法律・契約まわりについて

イラストレーターの仕事に関する法律・契約まわりについては、下記リンク先にいろいろあるので、よかったら読んでみてください。

petitmatch.hatenablog.com

【資料公開】シンポジウム「歴史研究と著作権法」*著作権・著作者人格権についてのイラスト解説あり

「歴史研究と著作権法」7/15(土)@青山学院大学青山キャンパス

「歴史研究と著作権法」7/15(土)@青山学院大学青山キャンパス

昨年登壇したシンポジウム「歴史研究と著作権法」の、私の話の部分のスライド資料を公開しました。

↑こちらで見にくい方は、↓のリンクからお願いします。

docs.google.com

www.slideshare.net

↑ダウンロードもできます(2024/2/13 訂正版にファイルを差し替えました)

目次は以下です。ご興味持たれたら、ぜひ読んでみてください。

  • オオスキトモコ 自己紹介
  • 私がなぜ、今、この場にいるのか?
  • 「イラストレーション」の記事のなかで、「著作者人格権の不行使って本当に必要?」というコラムを書いていた!
  • 著作者人格権不行使契約の問題点】
  • ちなみに...【「著作権譲渡」の問題点】
  • オオスキが感じていること
  • 私が知るところの、イラストの仕事における著作権著作者人格権の扱いの現状(1)
  • 私が知るところの、イラストの仕事における著作権著作者人格権の扱いの現状(2)
  • オオスキは実際、どういう契約をしているのか?
  • 僭越ながら...オオスキからのご提案
  • 【イラスト解説】著作権の発生
  • 【イラスト解説】著作物利用許諾契約とは
  • 【イラスト解説】著作者人格権とは
  • 【イラスト解説】イラストレーション業界における著作権
  • 【イラスト解説】著作者人格権不行使特約とは
  • ★おまけ★お役立ちメモ

ちなみに、上記スライドでは「ビジネス著作権検定のテキストに『実務では著作者人格権不行使特約を入れることが多い』と書かれている」とありますが、その後、無事にその記載は削除されました。最新版には、その記載は入ってません。

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昨年夏に出た本、友利昴『職場の著作権対応100の法則』でも、著作者人格権不行使特約について、「イラストやコラム記事など、著作者の個性やこだわりが現れやすいタイプの著作物は、不行使同意は避けた方が良い」と明言されていました。
この本は、著作者人格権不行使に応じても問題が起こりにくい場合、応じる場合の交換条件の提示もされてて素晴らしい。ぜひ職場に1冊!!

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